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「父はインスタを楽しんでいます」母・山口百恵の名曲を歌い継ぐ息子・三浦祐太朗の歌とライブに見た“泣き虫で情緒不安定なヒロイン”像【ベスト記事2025】

  • 2026.1.3

2025年1年間で特に人気を集めたCREA WEBの記事を発表! あの映画やドラマのヒットの理由から、気の利いた手土産、そして、じっくり読みたい注目の人のインタビューまで。たっぷりお楽しみください。(初公開日 2025年11月25日 ※記事内の情報は当時のものです)


同じ歌でも、歌う人が変われば、違う世界が広がる――。そんな、パラレルワールドに迷い込んだような興奮を覚えるカバーソングが好きだ。なかでも、山口百恵さんの歌を歌い継いでいる三浦祐太朗さんの歌はいい! 親子なので声は似ている。胸に熱いものを秘めた、凛とした声である。ところがなぜか祐太朗氏の歌から見えてくるのは、泣き虫で情緒不安定なヒロインなのだ。面倒な男に引っ掛かりそう! まぎれもなく我が軍。聴くたびに共感して暴れそうになる。

オリジナルの失恋ソングもすごく寂しげで、いつかライブに行きたいとは思っていた。が、CD音源ですら「胸が痛い胸が痛い!」と叫びながら聴いているのに、生で聴いたらどうなるのだろう。ライブ会場を転げまわってしまうのではなかろうか。

そうして延ばし延ばしにしていたが、ついにチケットを購入。10月25日、待ちに待ったその日がやってきた。レッツゴー、いかりライクスホール!


「すがりビブラート」のファンに

ナイスジャケ写! いやもう、こんなに草原が似合う人おる?? 2019年10月2日発売の「Blooming Hearts」(発売元/ユニバーサル ミュージック合同会社)

当日は雨。私は会場の最寄り駅、阪急塚口駅で折り畳み傘を片手に「おーほほほ、想定内よ!」と高らかに笑った。なぜなら私は雨女。楽しみにしているイベントの7割が雨。さらに三浦祐太朗さんには雨が似合ーうッ! 百恵さんのカバーでの未練たらたら乙女の歌声(褒めています)、オリジナル曲での湿気を含んだ等身大のやさしい歌声。どちらもレイニーデイが似合ーうッ!

早く着きすぎて、駅前のマクドにてポテトを頬張りながらどの楽曲を歌うか予想する。オリジナル「ハタラクワタシヘ」と百恵さんのカバー「絶体絶命」「謝肉祭」は必ずやってほしい。

よくチェック柄のシャツを着ておられるので、ご本人の画像を見るときはついつい「チェック柄が来るぞ来るぞ」と気持ちの準備をしている自分がいる。この画像はチェック柄ではなかった。チェック柄以外も似合う! 撮影/文藝春秋

思い起こせば2017年、三浦祐太朗さんが百恵さん楽曲をカバーするというニュースを聞いた時「およしなさい!」と叫び、聴いたとたん「もっとおやりなさい!」と意見がコロッと変わったっけ(遠い目)。彼のしゃくりあげるようなビブラートは、恋人に、もしくは思い出にさえ追いすがり泣くヒロインを思わせる。今やこの「すがりビブラート」が聴きたくて、三浦祐太朗さんに歌ってほしい歌を探しに、山口百恵さんを聴き直すという逆ルートをたどっているほどだ。

また「好きなアニメの女性キャラを“嫁”と呼び、シリーズごとにお嫁さんを変えている」というオタクっぷりを、インタビュー記事で披露されており、なんと正直な人なのかと感動したものだ。

衝撃のグッズ

心をロックオンされた、いぬねこ巾着。正しい名称は「Gahaku Miura」オリジナル巾着 ねこ&いぬセットである。

さて、開演時間が近づいたのでホールに入場。10月なのに、早くも会場はクリスマスの飾り付けがされているではないか! 先取りに驚きつつも、グッズ販売のテーブルにいそいそと向かう。あらかじめ購入を決めていたブルーのタオルに手を伸ばそうとしたが、横に並ぶ巾着のインパクトに時が止まった。「いぬ」「ねこ」と書かれてはいるが、本当にそうなのか? とツッコミたくなる謎の物体と、やたら視線が合う。彼らはタオルを買おうとする私に訴えてくる。ワシらを買え、ネタになる、と!

愛嬌はある。が、いかんぞ私。役に立つのは絶対タオルだから! タオルタオルタオルタオル。何度も心で復唱したのに、スルッと口から出てしまった。

「いぬねこ巾着ください」

使い出したら意外に便利で(大きさが◎)、今ではシリーズが出たら買ってしまいそうな自分がいる。

カーッ(泣)。私は天を仰ぎ、ネタ大好き大阪人の我が血を呪った。オモロイものを買ってしまった。グッズが予想外になってしまったぶん、セトリには絶対「ハタラクワタシへ」と「謝肉祭」と「絶体絶命」が入っていてほしい。お願い!

デンジャラスな「謝肉祭」に「ブラボー!」

いかりライクスホールの看板。私は本当に撮影のセンスがない……。こういう看板をかっこよく撮るにはどうしたらいいのーッ!

結果から言おう。「絶体絶命」は残念ながらセトリに入っていなかったが、「謝肉祭」は聴けた。しかも、とびきり情熱的でデンジャラスに! 客席からブラボー! という歓声が響いたほどだ。

いやもう圧巻の約2時間。すべての曲、穏やかなれど激しいエネルギーが染み出して、不思議な色と温度を持つやさしさと感謝と情熱に満ちていた。客席は女性が9割くらいかと思いきや、男性も多いしご夫婦連れも多かった。ふんわりと光るペンライトの光は花のようでロマンチック!

「サンタが街にやってくる」でスタートし、「世の中はハロウィンですが、そんなものすっとばしてやりましょう!」というMCにはビックリしたが、「Powder Snow」などの冬の美しい歌を聴いているうちに、彼は冬という季節が大好きなのだと納得した。なるほど。ならば秋の終わりに敢えて聴こう、三浦祐太朗のウインター・ロマンスを!!

そう腹をくくったが、セトリはどんどんクリスマスから離れていき、「JOY」「ハタラクワタシへ」などのオリジナル楽曲、山口百恵さんのカバー「ありがとう あなた」「曼珠沙華」「走れ風と共に」など縦横無尽、自由自在な内容となっていった。これは楽しい! なんとも感情が忙しい! 彼の中に棲むやさしい好青年と、情念溢れる女性の二人が代わる代わるに顔を出し、届け、届け、と右手を振りまわしながら感情を響かせているようだった。

彼のオリジナル楽曲で、初めて聴いた刹那なる恋の歌があり、それがとてもよかった。タイトルを忘れてつらい。メモしておけばよかった。んもー!

百恵カバー曲の重さはどこからくるのか

これがブロッコリーシャンデリアだ! 三浦祐太朗さんの穏やかな「いかりについての豆知識」トークにより、いかりスーパーまで好きになり、いかりのアプリをダウンロードしてしまった。

MCは終始和やかで、気づかいの人であることがにじみ出ていた。父君・三浦友和さんがインスタを楽しんでいること。いかりライクスホールのシャンデリアがブロッコリーシャンデリアと言われていること。いかりの食事はとてもおいしいということ。百恵さんの歌を大切に歌い継ぎたいということを語っていた。

このライブから数日後、「徹子の部屋」に出演し、こちらでも百恵さんの歌をカバーすることについて「プレッシャーより感謝が多い」と話しておられたが、生で聴いた感想はもっと複雑な感情があるのだろう、と思った。聴いているこちらが想像する何百倍ものプレッシャーと感謝に加え、覚悟とか罪悪感とか思い出とかがまぜこぜになり、上からギューッとすさまじい圧をかけているような、ヘビーな聴きごたえがある。なのに解放的なのである。プレスされ、ブシュッと濃厚なジュースが染み出てくるイメージだ。エネルギーの放出!

だからこそ彼の歌う百恵さんのカバーは、面倒くさくて愛しいのだろう。

筆者私物。名盤! 2024年2月21日発売の「歌い継がれてゆく歌のように」(発売元/ユニバーサル ミュージック合同会社)

ライブが終わり、雨はまだ降っていたけれど、私は大満足で傘を差した。彼の歌声はやっぱり雨と合う。涙に近い湿気とハレーションをふくみ、心に虹がかかる。

行きと同じ駅までの風景に、新たな彩りを感じた。

また絶対観に行きたい。その時はタオルを買うぞ!

田中 稲(たなか いね)

大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。個人では昭和歌謡・ドラマ、都市伝説、世代研究、紅白歌合戦を中心に執筆する日々。著書に『昭和歌謡出る単1008語』(誠文堂新光社)など。
●オフィステイクオー http://www.take-o.net/

文・写真=田中 稲

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