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「どうしても人を集めたい事情があるんだよ」…バイト先の先輩に誘われた鍋パーティで体験したおぞましい一夜

  • 2026.1.2
写真はイメージです。提供:アフロ

2016年から生配信サービス「TwitCasting」で始まった怪談語りチャンネル「禍話(まがばなし)」。まるで友人と語り合っているような軽妙な語り口で語られるエピソードの数々は、耳の肥えた怪談ファンすらも恐怖させるハイクオリティな傑作ばかりです。

今回はそんな禍話から、普段は廃墟探訪を趣味にしている女性Kさんが体験した不気味すぎる出来事をご紹介します――。


バイト先で誘われた“訳あり”鍋パーティ

写真はイメージです。写真:rai/イメージマート

「禍話」には語り手のかぁなっきさんの知り合いであり、廃墟を探訪してそこに泊まるのを趣味にしている、Kさんという女性の体験談が度々登場します。

クールでドライな性格とは裏腹な甘い物好きゆえに、放送では“甘味さん”というニックネームまで付けられている彼女ですが、趣味の廃墟探訪の中では数々の恐ろしい出来事に遭遇してきました。

今回ご紹介するのは、そんなKさんが何気ない日常生活の中で遭遇した、不可解で背筋のゾッとするお話です。

◆◆◆

Kさんが大学生2年生だった平成の冬。冬休みに入る直前の2週間ほどの期間で、とある企業の事務作業のバイトをしたことがありました。

若いのに物怖じせずスパッとした物言いをするKさんは、今でこそ肩身が狭くなった喫煙休憩を利用して、すぐに会社の先輩たちと打ち解けていったそうです。

「Kちゃんもうすぐバイト期間終わっちゃうんだって? 今週の金曜日さ、みんなで早めに上がって俺のマンションで鍋パーティするんだけど、よかったら最後に来てよ」

バイト期間も終わりに差し掛かっていたある日の喫煙所で、男性社員のAさんからそんなお誘いを受けました。バイトが終わることに寂しさを感じていたこともあって「全然行きますよ~」と二つ返事で承諾したそうです。

「ふぅ~……人が多いと安心できるからよかったよ」

寒風が吹き荒ぶ外階段。踊り場の手すりに寄りかかったAさんはホッとした表情で煙を吐きました。

「……訳ありですか?」

「人を呼ぶのは鍋パーティだけが目的じゃないんだよ」

Kさんの問いにしばらく答えなかったAさんですが、ふいに吸い殻を灰皿に押し付けると、新しくタバコに火を点けながら言いました。

「Kちゃんはもう辞めちゃうし本当のこと話しちゃおうかな……実はさ、人を呼ぶのは鍋パーティだけが目的じゃないんだよ」

「狙っている女子社員でもいるんですか?」

「いや、違う、違う。どうしても人を集めたい事情があるんだよ」

写真はイメージです。写真:Tomoharu_photography/イメージマート

Aさんがそのマンションへ引っ越してきたのは、Kさんがバイトを始める少し前のことでした。

「左隣の部屋は空き家だったんだけど、右隣の部屋には住人がいたんだ」

引っ越しもひと段落ついた頃、こうした風習も薄れているしなぁ……と一瞬躊躇したそうですが、流石にお隣さんくらいには挨拶をしようとAさんは決めたのだそうです。

ピーンポーン!

秋口の肌寒い廊下に響くインターホンの音。

「はぁい」

か細い声と共にドアが開くと、ヘアバンドしたマスク姿の女性がおずおずと顔を出しました。

「急にすみません。あの、隣に今日から越してきた○○です。よろしかったらこれ、つまらない物ですが」

「あぁ、ありがとうございます。よろしくお願いします」

愛想はあまり感じませんでしたが、女性は会釈を返してお菓子を受け取ってくれました。過度な付き合いもせず、お互いストレスのないバランスで接する。Aさん曰く“この程度で十分だな”と思ったそうです。

数日後にエレベーターで……

数日後。

仕事から帰ってきたAさんがマンションのエレベーターに乗り込み、自宅の5階のボタンを押して顔を上げた時、閉まり始めていたドアの向こうからお隣さんが乗り込もうとしたのが目に入りました。

慌てて“開く”ボタンを押したそうですが、間に合わずにドアは閉まりました。

「その時さ、すごいショック受けたような目でこっちを見ていたんだよ」

仕方なかったとはいえ、女性の眼差しに罪悪感を覚えたAさんは、また顔を合わせた時にでも一言謝っておこう、そう心に留めました。

写真はイメージです。写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

しかし、事態はその日の夜に急変したのです。

カチャ、ガチャン。

ペタッ、ペタッ、ペタッ。

23時を過ぎた頃。リビングでウトウトしながらテレビを見ていたAさんは、外廊下の物音で目を覚ましました。

お隣さんだろうけど、こんな時間に外出なんて珍しいな――そう思った時でした。

ペタッ、ペタッ、ペタッ…コン

コン。

Aさんの部屋のドアがノックされたのです。

「インターホンがあるのに、指の骨でそっと叩くような音色でノックされたんだ」

ペタッ、ペタッ、ペタッ。

カチャ、ガチャン。

しばらくすると、隣の部屋のドアが閉まる音がしました。

「あの女、俺のドア叩きに裸足で外に出ていたってことだよな」

その日以来、Aさんが外出する時に隣の部屋に目をやると、ドアが少しだけ開いていることが増えたそうです。

写真はイメージです。提供:アフロ

「俺の目線に気がつくとすぐに閉まるんだ」

カチャ、ガチャン。

ペタッ、ペタッ、ペタッ。

コン。

ペタッ、ペタッ、ペタッ。

カチャ、ガチャン。

昼夜問わず不定期に訪れる隣人の訪問。慌ててドアに駆け寄ってもその姿はいつも見えません。

聞こえてきた子どもたちの歌声

なんなんだ、あの女……もしかして、あの日のエレベーターのことが原因で嫌がらせでもしているのか? ――次第にAさんの中に怒りがこみ上げてきました。

ある日の夜、Aさんが仕事から帰って廊下を歩いていると、隣の部屋のドアがまた半開きになっているのが目に入りました。

一瞬身構えたそうですが、ゆっくりと近づくにつれてAさんの警戒心は恐怖に変わったそうです。

「子どもの歌声……合唱コンクールで歌うみたいな声がさ、結構デカイ音でその部屋から聞こえてきたんだ」

写真はイメージです。提供:アフロ

その音は部屋の奥から近づいてくるようでした。

あの女がラジカセでも持ってドアから出てこようとしているのではないか――おぞましい想像が頭をよぎり、Aさんは全速力で自室に入って鍵を閉めると、着の身着のままベッドに潜り込んだそうです。

隣の部屋からはぼんやりと合唱の声が聞こえ続け、気がつくと朝になっていました。

恐る恐る廊下に出て隣を見ると、ドアは閉まっていたそうです。

「だからさ、今度はこっちが騒いで圧かけてやろうかなって」

「……正気ですか? 刺されちゃうんじゃないっすか、そんなことしたら」

フッと鼻息を鳴らして笑ったAさんは、今思い返すと気を病み始めていたのかもしれません。

「……こんな話されたら行かざるを得ませんよ」

「来てくれるんでしょ?」

「……こんな話されたら行かざるを得ませんよ」

Kさんは火の点いたタバコを灰皿に押し付けました。

写真はイメージです。提供:アフロ

数日後、Kさんを含む会社のメンバーたちは、ビニール袋を各々ぶら下げながらAさんのマンションを訪れていました。

「おー、入って、入って!」

明るい声で出迎えたAさんに誘われるように部屋に入っていく一同。そうして始まった鍋パーティは終始和やかに進んだそうです。

一通りお酒が回った頃、買ってきたポン酢の小瓶を使い切ってしまったということで、Kさんが率先して近くのコンビニまで追加の買い出しを申し出ました。

肺に滑り込むような外の冷たさ。

手早く買い物を済ませて帰路に着いていた時、ふとパーティの楽しさで忘れていた例の隣人の話が頭をよぎったそうです。

Kさんはマンションが見えてきたところで立ち止まると、ふいに反対側に回ってAさんの部屋のベランダ側を覗いてみることにしました。

そこで目にしたのは、Aさんの隣の部屋のベランダにぼんやりと立つ人影でした。

文=むくろ幽介

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