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「別れるくらいなら子どもを作るよ」妊活を拒み続けた夫が放った“究極の妥協”に賛否両論【作者に聞く】

  • 2026.1.1
うちの夫は子どもがほしくない01 画像提供:(C)グラハム子/竹書房
うちの夫は子どもがほしくない01 画像提供:(C)グラハム子/竹書房

結婚して5年が経ち、夫婦仲は良好。しかし、妻のミカにはどうしても譲れない願いがあった。「そろそろ子どもがほしい」。現在36歳。自然妊娠の可能性を考えれば、残された時間は決して多くない。焦るミカに対し、同い年の夫は「まだいいじゃん」とのらりくらりと話題を逸らし続ける。

漫画家のグラハム子さん(@gura_hamuco)が描く『うちの夫は子どもがほしくない』(竹書房)は、そんな埋まらない溝に苦悩する夫婦の姿をリアルに描いた作品だ。妊活を巡るすれ違いの果てに、2人が出した答えとは何だったのか。制作の裏側にある綿密な取材と、作品に込めた意図をグラハム子さんに聞いた。

うちの夫は子どもがほしくない02 画像提供:(C)グラハム子/竹書房
うちの夫は子どもがほしくない02 画像提供:(C)グラハム子/竹書房
うちの夫は子どもがほしくない03 画像提供:(C)グラハム子/竹書房
うちの夫は子どもがほしくない03 画像提供:(C)グラハム子/竹書房
うちの夫は子どもがほしくない04 画像提供:(C)グラハム子/竹書房
うちの夫は子どもがほしくない04 画像提供:(C)グラハム子/竹書房

「子どもを大切に思うからこそ産まない」という選択

本作を執筆するにあたり、グラハム子さんは「子どもがほしい女性」と「ほしくない男性」の計4名に取材を行い、そのリアルな声を物語へと落とし込んだという。自身は子どもがほしいタイプだったため、当初は「ほしくない派」の心理がいまいち掴めなかったそうだ。しかし取材を進めるうち、その解像度は一気に上がった。特に印象的だったのは、「子どもを持つことが一人前の証や幸せの象徴だとは限らない」という意見だった。今の時代、世間体に縛られて子どもを作る必要はない。むしろ、子どもという存在を大切に考えているからこそ、安易に誕生させるべきではないという「欲しくない派」なりの誠実な倫理観に触れ、深く納得したという。

経済格差もEDもない。だからこそ言い訳ができない

登場する夫婦の設定にも、取材の成果が活かされている。ミカと夫は同い年であり、あえて経済的な格差やED(勃起不全)といった身体的な問題は排除されている。これは「対等な立場の夫婦」を描くための意図的な構成だ。余計なノイズを取り払ったことで、純粋な「価値観の違い」だけが浮き彫りになる。愛情があるからこそ相手を尊重したいが、尊重すればするほど自分の願いを抑圧することになり、苦しくなる。そんなジレンマの中で、主人公がどのように自分の生き方を模索していくのか。そこが本作の最大のテーマとなっている。

「別れるよりはマシ」という残酷な妥協

物語の後半、のらりくらりと逃げ続ける夫に対し、ミカはついに「別れも視野に入れなければならない」と切り出す。その言葉を聞いた夫の反応は、衝撃的なものだった。「わかった。作ろう、子ども」。彼は妻を愛しているからこそ、「別れるくらいなら子どもがいるほうがマシだ」という究極の妥協案を提示したのである。

一見すると解決したかのように思えるが、そこに夫の主体的な意思はない。この展開に対し、読者からは「奥さんだけの選択にするな」「リアルな覚悟がないなら結婚するべきではない」といった厳しい声も寄せられた。しかし、夫には夫なりの「欲しくない理由」が存在するのだ。

単なる妊活漫画ではなく、夫婦の在り方を問うヒューマンドラマ。グラハム子さんは他にも『オカルト異世界ばなし』(竹書房)や『娘がパパ活をしていました』(オーバーラップ)など、現代社会の闇や人間関係の機微を描いた作品を多数手がけている。「自分はどちらに近いか」と考えながら読むことで、パートナーとの関係を見つめ直すきっかけになるかもしれない。

取材協力:グラハム子(@gura_hamuco)

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