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2025年で最も話題になった映画『国宝』、アカデミー賞ノミネート入りの可能性は?トム・クルーズの応援も追い風に!

  • 2025.12.31

このところ毎年のように、米アカデミー賞で日本映画の受賞やノミネートのニュースが話題になる。来年3月に控える第98回アカデミー賞に、またも日本の作品がノミネートされるのだろうか。その意味で多くの人が注目しているのが『国宝』(公開中)だ。実写日本映画の興収記録を作り、国内の映画賞でも受賞が続いている同作に、さらなる栄誉の期待がかかる。

【写真を見る】米アカデミー賞で国際長編部門だけでなく、メイクアップ&ヘアスタイリング部門でもショートリスト入りを果たした『国宝』

アカデミー賞国際長編映画賞のショートリストに入った『国宝』

『国宝』が、アカデミー賞の国際長編部門の“日本代表”に選ばれた。11月21日(現地時間、以下同様)に、まず選考資格を満たす86本に入り、12月16日には、次の段階であるショートリスト15本というハードルもクリアした。この15本のなかから、アカデミー会員の投票によって、来年1月22日(木)にノミネート5作が決定する。つまり、『国宝』は現時点で1/3の確率で、国際長編部門へのノミネート、つまり授賞式への出席の可能性を持つわけだ。

正反対の血筋を受け継ぎ、ライバルとして互いに高め合う喜久雄と俊介 吉田修一/朝日新聞出版 [c]2025映画「国宝」製作委員会
正反対の血筋を受け継ぎ、ライバルとして互いに高め合う喜久雄と俊介 吉田修一/朝日新聞出版 [c]2025映画「国宝」製作委員会

アカデミー賞国際長編映画賞(旧名:外国語映画賞)は、これまで日本映画では2021年度の『ドライブ・マイ・カー』、2008年度の『おくりびと』が受賞。かつて「名誉賞」扱いだった時期に受賞した『羅生門』(50)、『地獄門』(53)、『宮本武蔵』(54)を入れると計5本が栄誉に輝いた。ノミネートのみでも過去に11本あり、2023年度の『PERFECT DAYS』が記憶に新しい。日本国内でこれだけ話題となった『国宝』が、これらの作品に並び、ノミネートされることに期待が高まる。

トム・クルーズも『国宝』を応援!

アカデミー賞の選考は、単純に作品の「良し悪し」で決まるものではない。いかにして投票者に認知させ、作品を観てもらえるか。そのために各配給会社は数々のキャンペーンも展開していく。『国宝』の北米配給を手掛けるGKIDSは、今年2月に日本の東宝の子会社となった配給会社で、2年前には宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』(23)をアカデミー賞長編アニメーション賞受賞に導いた実績がある。GKIDSにとって実写作品の配給は初めてとはいえ、キャンペーンのノウハウは持っているのだ。

上方歌舞伎の名門の当主、花井半二郎 吉田修一/朝日新聞出版 [c]2025映画「国宝」製作委員会
上方歌舞伎の名門の当主、花井半二郎 吉田修一/朝日新聞出版 [c]2025映画「国宝」製作委員会

11月には、李相日監督や主演の吉沢亮がロサンゼルスやニューヨークでの上映に登壇。12月12日には、あのトム・クルーズが主催し、ロサンゼルスで『国宝』の上映会が行われたことは、日本のメディアにも大きく取り上げられた。日本だけでなく、アメリカの有力メディア、Deadlineなども「トムが『国宝』を観て、すぐに応援すると決めた」と上映会のニュースを伝えており、クルーズのハリウッドでの影響力を実感させる。その直後に、国際長編のショートリスト15本に『国宝』が選ばれたのである。

“激戦の年”と言われる第98回アカデミー賞国際長編映画賞

では、『国宝』がノミネート、オスカー獲得の可能性はどれくらいあるのだろう。ライバルとなるほかの作品も当然のことながら、賞レースのキャンペーンを行なっているわけだが、今年度は特に強力作品が並ぶ“激戦の年”。『国宝』が超えるハードルは高そうだ。

消息不明となった俊介に代わり、花井家一門を守ることになった喜久雄 吉田修一/朝日新聞出版 [c]2025映画「国宝」製作委員会
消息不明となった俊介に代わり、花井家一門を守ることになった喜久雄 吉田修一/朝日新聞出版 [c]2025映画「国宝」製作委員会

有力作品は、カンヌ国際映画祭のパルム・ドール受賞作『IT WAS JUST AN ACCIDENT(英題)』(26年日本公開予定/フランス代表/監督はイランのジャファル・パナヒ)、やはりカンヌで監督賞&男優賞2冠の『The Secret Agent(英題)』(25/ブラジル代表)、カンヌのグランプリ受賞作『センチメンタル・バリュー』(26年2月20日日本公開/ノルウェー代表)、同じくカンヌで審査員賞などに輝いた『Sirat(原題)』(25/スペイン代表)、さらにトロント国際映画祭の国際観客賞に選ばれた『しあわせな選択』(26年3月6日日本公開/韓国代表)と、映画祭での実績を積んだ作品が、予想でも上位を独占。これらの作品は、国際長編以外の部門でも複数のノミネートの可能性が高く、アカデミー賞に“欠かせない存在”になりつつある。ほかにもいくつか有力作があり、『国宝』はアンラッキーな年に当たってしまったと言える。

実際、すでにノミネートが発表された、クリティクス・チョイス・アワード、ゴールデン・グローブといったアカデミー賞の前哨戦では同カテゴリーに『国宝』の名前は入らなかった。

徐々に『国宝』への追い風が!

ただ、“希望”の要素もある。トム・クルーズの件に加え、メイクアップ&ヘアスタイリング部門のショートリストに『国宝』が入ったこと。こちらは10本のなかに残ったので、ノミネート5本への可能性は国際長編より高い。このように複数部門で評価される動きは追い風であり、賞レースの初期段階、国際長編部門で『国宝』をスルーしていた予想メディアも、このところ上位にアップさせている。

【写真を見る】米アカデミー賞で国際長編部門だけでなく、メイクアップ&ヘアスタイリング部門でもショートリスト入りを果たした『国宝』 吉田修一/朝日新聞出版 [c]2025映画「国宝」製作委員会
【写真を見る】米アカデミー賞で国際長編部門だけでなく、メイクアップ&ヘアスタイリング部門でもショートリスト入りを果たした『国宝』 吉田修一/朝日新聞出版 [c]2025映画「国宝」製作委員会

また、3年前の同部門で、それまで予想上位ではなかったアイルランドの『コット、はじまりの夏』(22)がノミネートされるなど、アカデミー賞では時折サプライスが起こる。なにより、これから投票のために『国宝』を観るアカデミー会員が多いわけで、そうなれば「新鮮な記憶」として投票には有利になる。

北米での『国宝』の一般公開は2026年初頭なので観客の反応はまだわからないが、映画批評サイトの「ロッテン・トマト」では、現時点(※12/30)で批評家の支持が100%と満点。つまり観た人すべてが高評価しているのも“追い風”か。

表舞台を追われることになった喜久雄 吉田修一/朝日新聞出版 [c]2025映画「国宝」製作委員会
表舞台を追われることになった喜久雄 吉田修一/朝日新聞出版 [c]2025映画「国宝」製作委員会

様々な条件を考えると、『国宝』のオスカー受賞は現実的には厳しそうだが、ノミネートへの期待はキープしてもよさそう。長編アニメーション部門での『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』(公開中)も含め、来年1月22日(木)のノミネート発表を楽しみにしてほしい。

文/斉藤博昭

※宮崎駿の「崎」は「たつさき」が正式表記

※Siratのaはマクロン付きが正式表記

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