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「主婦の悩み」が最強の専門分野になった…資格も人脈もなかった6児の母が仕事をつくれた理由

  • 2025.12.31

「子どもがいると働けない」「特別な資格や人脈がなければ仕事にならない」。そう思い込んでいた。だが、仕事ゼロ・実績ゼロ、赤ちゃん同伴からのスタートでも、キャリアはつくれた。鍵になったのは、長年「主婦の悩み」とされてきた家計管理や片づけだった。FPの橋本絵美さんが6児の母としての実体験を強みに、仕事を手にした軌跡を振り返る――。

主婦雑誌大好きな少女時代――好きがキャリアの源になる

「子どもがいても働きたい」「子どもとの時間を大事にしたい」「家族とキャリアの両立をあきらめたくない」こんな理想と現実の間で毎日奮闘しているパパママは少なくないと思います。私自身、長男を出産した20代は子育てと仕事の両立は不可能に見えました。今では講演依頼やTV、雑誌などの取材を受けることも増えましたが、もともと特別な才能を持っているわけでも、特別な人脈があったわけでもありません。むしろスタート地点は「仕事ゼロ・実績ゼロ・ベビー同伴」というゼロ、もしくはマイナスからのスタートでした。

今回はそんな私がどのようにファイナンシャルプランナー、お片づけプランナーのキャリアを築き、6児の子育てと仕事を両立させていったのかをありのままにお伝えします。

在宅で勤務する母親と同じテーブルでいい子にしている二人の子供
※写真はイメージです

私は子どもの頃から生活雑誌が好きで母が時々購読していた「すてきな奥さん」「おはよう奥さん」「サンキュ!」などを漫画のように読みふけっていました。節約、家計管理、収納、料理の段取り、掃除の効率化など、当時は子どもだったので実践できるものは少なかったのですが、ただただ面白く、何度も何度も読み返していました。子どものこの頃の“好き”が、今の仕事の核になっています。

大学では、起業もしくは政治の方面に進みたいと思い、東京に出ることを決め、商学部へ進学しました。周囲には公認会計士を目指す友人が多く、私も専門学校に行ってみましたが、どうしても気持ちが乗りませんでした。そんなときパンフレットの棚に「ファイナンシャルプランナー(FP)」という資格を見つけたのです。家計の知識が専門性になる仕事があるということを知り、会計士よりもこっちの方が興味があるな、と思いました。とはいえ当時は資格を取得しようというところまでは至りませんでした。

社会とつながりたかった

キャリアを積みたいという思いもありながらも、子どもの頃から「子どもは10人ほしい!」と本気で思っていたので、卒業後はすぐ結婚し、まもなく長男を授かることができました。でも、長男が生まれてからの日々は、まさに24時間育児。授乳・おむつ替え・寝かしつけを繰り返すうちに、気づくと夜になり、また朝が来ている。年子で第2子も授かり、外で働くことは想像もできませんでした。それでもやっぱり私も社会とつながりたい、誰かの役に立ちたい、と考えていました。

そんなとき思い出したのが大学時代に出会ったファイナンシャルプランナーです。そうだ! FPの資格を取ろう! 夫に相談し、休みの日は子どもを見ていてもらい、育児の合間を縫って勉強しました。そして3人の妊娠・出産を挟みながら、FP3級・2級と合格していきました。もちろん、ただ、資格を取っただけでははても、お金にはなりません。実務経験もゼロです。それでも、資格を取ったことで、未来につながる努力が実を結んだ実感を得ることができました。これは、当時の私にとって何より大きな救いになりました。

“5000円の原稿”が道を切り拓いた

3人目の出産前後、夫の転勤で東京へ戻ることになりました。そんなとき出会ったのがFP向けの養成講座です。修了すればFPの資格を仕事にできる力が身につくというもので、子どもを育てながらの受講に不安を抱えながらも、主人や義両親の協力もあり、受講することを決意しました。受講後に、講座を開催していたFP会社で一緒に仕事をしてみないか、と声をかけてもらうことができました。これが私のFP人生の第一歩となりました。

ソファに腰掛けた母親はタブレット端末を使用して仕事中、父親は赤ちゃんの面倒を見ている
※写真はイメージです

とはいえ、やはり経験もなく、赤ちゃんもいます。そこで、試しにコラムを書いてみないか、添削や指導もするからと、コラム執筆のお仕事をいただきました。それまでずっと自己流で試行錯誤しながら編み出した「通信費の見直し」についてのコラムを執筆してみることにしました。原稿料は1本5000円です。正直、書籍も買い、調査に何十時間もかけていたので、正直、時給にしたら完全に赤字。

でも、その1本を全力で書くことにしました。書き上げたコラムは予想以上に評価され、その後も毎月節約コラムを執筆することになりました。そもそも私は作文など文章を書くのは大の苦手でした。自分が書くことを仕事にするなんて思ってもみませんでしたが、人生は本当に面白いものです。今では執筆の依頼が来たらほぼふたつ返事でOKしています。

その後、この通信費見直しコラムを指導してくださったFPの先輩が、セミナー講師をやってみないか、と声をかけてくれました。もちろんセミナー講師も未経験。自分より詳しい人が来たらどうしよう、質問に答えられなかったらどうしよう、最初は恐怖と緊張のスタートでした。

でも、必死で準備し臨んだセミナーは大好評。セミナーを受講していた方が気に入ってくださり、次はその方が主催する大規模セミナーに呼ばれることになりました。更にその告知記事を見たWEBライターさんからWEB記事の取材を受けました。その後、それを見た新聞記者さんから全国紙の取材を受け、それを見たTVから出演依頼……と一気につながり始めたのです。超赤字の5000円の原稿が、私のキャリアの扉を開いてくれました。

「主婦の悩み」を仕事に変える

子どもが小さい頃は仕事をするなんて無理だと思っていましたが、それでも人の役に立つことはできないか? と考えたときに、ふと、私が好きな生活雑誌では私が子どもの頃から何十年もずっと家計管理や節約、片づけ、料理、美容やダイエットが特集されているということに気づきました。つまり、主婦はみんな何十年もこのことで悩んでいるということです。でも、私はみんなの悩みの種である家計管理と片づけが得意……。ということは家計管理と片づけをみんなに教えることができれば、世の中の主婦たちの力になれる! と考えました。このことに気づけたこと、そして、それを仕事にできるチャンスとご縁に巡り合えたことは本当にありがたいことでした。

家計から人生を立て直す仕事

実は私は二宮金次郎を尊敬しています。急になんだ⁉ と思われたかもしれませんが、私は二宮金次郎は超敏腕FPだと思っています。薪を背負いながら本を読む姿が有名ですが、真のすごさはそこではありません。

没落した二宮家を再建し、さらに藩全体の財政まで立て直したすごい人なのです。家計を見直し、支出を整え、生活習慣を変え、仕組み化する。大人になってから初めて二宮金次郎の伝記を読んだとき、これはファイナンシャルプランナーの仕事そのものだ‼ と感銘を受けました。私も、現代の二宮尊徳になりたい! 家計と生活を整えて、家族を幸せにできるサポートがしたい! この思いが、私の仕事の根っこにあります。

経験が“信頼”に変わる

私が6人の子どもを育てながら仕事ができているのは、母であることがキャリアの足かせではなく、むしろ“強み”になっているからです。子育て、家事、段取り、時短家事、家計管理、これらがすべて実体験として私の血肉になり、相談者の方にとっては大きな信頼の根拠になっています。「6人育てている橋本さんだから相談したい」「生活に根ざした話だから、すっと入ってくる」そう言っていただけることが増え、日々の暮らしの工夫とみんなの役に立ちたいという熱意がキャリアを育てるということを実感しています。


まとめ
かつての私は資格も実績もなく、時間もなく、赤ちゃん同伴の0からのスタートでした。でも、小さな仕事にも全力を注ぎ、学び続け、少しずつ人との縁をつなげてきたことで、気づけば実現不可能、両立不可能だと思っていた、子どもを沢山産みながら仕事をするということが実現していました。ライフステージの変化が多い女性こそ、仕事を“つくる力”“組み立てる力”が必要なのだと思います。子育ても、家事も、暮らしも、すべてがキャリアの土台になる。私はこれからも、6人の子を育てながら、社会の役に立つ仕事をつくり続けます。そして、同じように迷いながら働き方を模索する女性へ、大丈夫、志を持って、努力を続けていれば必ず道は開かれる。そう伝えたいと思っています。

橋本 絵美(はしもと・えみ)
はしもとFPコンサルティングオフィス 代表
6人の子どもを持つママFP&お片づけプランナー。福岡県出身。小さな頃から「大家族のママになりたい!」という夢を持ち、慶應義塾大学商学部卒業後、学生時代から交際していた夫と結婚。現在、中学2年生から3歳まで2男4女の子育て中。

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