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2026年になっても「S&P500・オルカン一択」は危ない…「3年目の新NISA」に組み込むべき"資産を守る"投資先

  • 2025.12.31

新NISAは2026年に3年目を迎える。全世界株や全米株のインデックス投資が人気だが、今後どんなことに注意すべきか。ファイナンシャルプランナーの内田英子さんは「投資の基本は長く継続することだ。だが、なんとなくオルカンを買っている人は“リスクの見通し”が甘い可能性がある」という――。

見出しに踊る「新NISA」の文字
※写真はイメージです
相場環境が変化している

そろそろ年末年始。長期の休みに入って落ちついている今は、お金周りの見直しに絶好のタイミングです。

2025年をふりかえると、ものの値上がりを実感した方も多いのではないでしょうか。一方で、NISAを始めた方の中には、投資による資産の増加を実感している人もいらっしゃるでしょうか。

ここでお尋ねです。そのNISAの商品、「増えているのだからこのまま買い続ければいい」と思っていないでしょうか。

キホンのキで恐縮ですが、投資をする際に重要なことは“長く継続できること”です。長期投資なら、体制を整えればあとはほったらかしが基本です。ただ、もし今の状態がリスク許容度を超えてしまっていては、今後相場が荒れたときに“ほったらかしにできない事態”に陥ってしまう可能性があります。

足元は日経平均が急落や急騰を繰り返すなど大きな動きも目立ちます。また、日銀も利上げに踏み切りました。そして、アメリカ経済は依然としてしつこいインフレが続き、今後の動向に目が離せない状態です。株式相場の上昇気流に乗って、投資額を増やした方もそうでない方も。2026年・新NISA3年目の準備をいまのうちに始めておきましょう。

直近のオルカンは“できすぎ”だった

日本証券業協会の「新NISA開始後の利用動向に関する調査(2024年・令和6年)」によると、つみたて投資枠の利用者の約4割が全世界の株式に投資する投資信託、いわゆる”オルカン”を購入していることが読み取れます。ちなみに何に投資しているのか「わからない・不明」と答えた人は約22%と、割と多いことも驚きです。

年間購入額でみると、ほとんどの年代でボリュームゾーンは「年間20万~40万円未満」ですが、50代と60代では様子が変わります。50代・60代で最も多いのは年上限である120万円で、60代では2割を超えています。実際、筆者のもとに相談にこられたお客様の中でも、シニア層となると上限まで拠出されている方は珍しくなく、肌感覚と相違はありません。

一方で、直近の運用環境はできすぎの様相です。“オルカン”の平均リターン・リスクの水準(配当込み・円ベース)は過去10年では年間14%。これに対し、直近5年では20%を超えています。非常に高い水準で推移してきているのです(図表1参照・執筆時の12月18日時点で確認したデータ)。

【図表】オルカンの過去の平均リターン・リスクの水準・2025年11月末時点 配当込み、円ベース
MSCI ACWI Index FactSheet、Morningstar Global Markets FactSheet、各ファンドのリスク・リターンデータを参考に筆者作成
「リスク」に注目すべき理由

投資を行う際、目先のリターンにばかり目がいきがちになりますが、注目すべきはリスクです。なお、リスクとは、「1年間で価格が平均してどの程度上下にブレる可能性があるか」を数字で表したものです。例えば、リスク16%であれば、おおまかには「平均的には、1年でプラス・マイナス16%程度のリターンのブレを覚悟しておきましょう」というイメージです。ただし暴落時には、それ以上に下がることもあります。

リスクは小さいほど安定していると見ることができます。最近のリスク水準が低くなっていることがわかりますね。

ただ、今のリスクとリターンの水準が普通だと思っていると、黄色信号です。着実に将来のキャッシュを増やすことを狙っていく場合、想定されるリスクを自分の資金に落とし込んで確認し、下落相場に耐えられる体制整備が肝心です。

そして、投資を長く続けるうえで欠かせない視点は、「最悪のケース」をあらかじめ想定しておくことです。これまで個人の方の資産設計に伴走してきたファイナンシャルプランナーとしては、長く運用の力を借りるために重要なことは、金額の多さではなく、資金のリスク許容度に合った運用計画にあると考えます。

数年単位の“元本割れ”に耐えられるか

資金のリスク許容度を超えた運用を行うと、相場が下落したとき、結果的に現金化してしまい、元本割れの可能性が高まります。NISAで投資を行う以上、損切りしては税金面でのメリットは全くありません。NISAのメリットを活かすためにも、できる限り避けたい状況です。

以下はオルカンを想定して行った運用シミュレーション結果をまとめたものです。月10万円のつみたてを想定しています。

【図表】想定するリスク・リターン別、ケース別での元本割れ期間の目安
出所=FIWAつみたてインディくんで試算

ここ10年の状態を想定したものは、一段目の結果です。つまり、最悪のケースでは元本割れが2年10カ月つづきます。悪いケースでも、1年3カ月元本割れの状態に耐えなければいけないという結果になりました(図表2参照)。

一方、ここ数年のようないい相場が続くと楽観的に想定した結果は、図表の2段目の結果です。悪いケースで4カ月・最悪のケースでも元本割れ期間は9カ月と、1年を待たずして終わる結果となりました。想定するリスクのたった2%の差が、最悪のケースでは2年もの差につながっています。

また、参考として、過去20年を振り返った状態を想定したシミュレーションも実施しました。結果は一番下です。悪いケースでも3年11カ月、最悪のケースでは8年以上、元本割れに耐えなければいけないという結果となりました。なお、今回のシミュレーションでは積立額を月10万円としましたが、月積立額が変わっても全体的な傾向に大きな違いはありません。

「利益を得る」には時間がかかる

もちろん長く続けることができれば、資産は増える可能性があります。例えば前述のオルカンで過去20年を振り返った状態を想定した試算では、最悪のケースでも20年後には資金が1.3倍という試算結果となりました。

問題となるのは、そこまで続けられるかどうかです。

例えば5年後に必要な「リタイア後の生活資金」や「進学資金」を想定して、“オルカン”で運用をしていると考えてみましょう。相場の風向きが変われば、時間の余裕がない分だけ先行きに不安が募りやすくなります。結果的に下落が短い期間で終わったとしても、早々に損切りへと舵を切ってしまうかもしれない。そういう人が続出しても不思議ではありません。

利益を得るためには時間がかかります。続けるためには、拠出する資金の「納得感」と「自分のお金にとって現実的なリスク水準」に調整しておくことが欠かせません。

せっかくリスクを取って投資をするのなら、将来のキャッシュを増やすことにつなげたいものですよね。そのためには、事前に想定されるリスクの確認が必須です。資金のリスク許容度に合わせて、リスクを下げるアプローチを検討すべきでしょう。

計算機を使用している男性の手元
※写真はイメージです
「バランスファンド」は一つの選択肢

そこで選択肢となるのが「バランスファンド」です。バランスファンドは、株式や債券、不動産など、複数の資産に分散投資する投資信託です。リスク分散効果のある資産の組み合わせなら、リスクを減らしつつ、一定のリターンを期待できます。

バランスファンドというと、よくコストが高いといわれますが、最近ではコストが安いものも増えてきました。手数料が高いからと最初から敬遠してしまっているのは、もったいない話です。

バランスファンドでリスクを抑えることができれば、下落時・暴落時のショックを和らげる効果が期待できます。また、安易に手放して損切りすることもなく、運用を続けようという後押しにもなるかもしれません。

市場から撤退してしまう代償はとても大きいのです。最悪の場合、資産形成のチャンスを失ってしまう可能性があるからです。

今運用に充てている資金はいつ現金化して、何のために使う予定でしょうか。筆者のこれまでのご相談経験を振り返ると、すでに投資を始めている方では、本来は投資に充てるべきではないお金まで投資に充ててしまっていたり、目的と中身が合っていない方が多いという体感です。

例えば20年先の老後資金ならオルカン一択など、株式のみのファンドでもいいでしょう。でも、もし現金化するタイミングが10年以内の資金(例えばリタイア後の資金や進学資金など)を目的とするなら、家計の状況とよく照らし合わせたうえで、適切なリスクの取り方を見極めるべきです。下落相場を想定し、長期運用を可能とする土台づくりが不可欠です。

「バランスファンド」はリスクで3つに分けられる

とはいえ、バランスファンドの種類は多く、想定されるリスクもさまざまです。バランスファンドは一見するとどれも同じに見えますが、リスクの大きさで種類わけすることができます。今回は「QUICK投信分類」を参考に、以下3つの分類をご紹介します。

・低リスク
・中リスク
・高リスク

低リスクに分類されるものは株式や不動産の割合が少なく、国内外の債券が中心になっています。筆者が調べたところ、過去10年のリスクとリターンの目安は、ともに年5%程度と言えそうです。

中リスクのものは、株式もしくは不動産、債券が半々くらいに組み合わされているイメージです。同じくリスクとリターンはそれぞれ、年8%と年6%程度が目安です。

高リスクのものは、株式や不動産の割合が高く、債券の組み入れが少ないファンドです。同様にリスクとリターンの目安は、年10%と年8%です。

メディアや証券会社によっては、商品紹介ページに「低リスク」などと“リスクわけ”していることもありますが、基本的には、各投資信託の運用レポートなどを使って、ご自身で調べながら確認してください。

「元本割れ」は最悪の場合で約4年続く

それぞれの目安となるリスクとリターンを前提に試算すると、最悪のケース・悪いケースで想定される元本割れ期間は以下のようになります。

【図表】バランスファンドのリスク帯別 元本割れ期間の目安
出所=FIWAつみたてインディくんで試算

元本割れ期間が最も長いのは、中リスク・最悪のケースで「4年3カ月」となりました。同様に、低リスクの場合は「2年3カ月」、高リスクの場合は「3年9カ月」です。“オルカン”よりもリスク水準は低いですが、必ずしも元本割れの可能性がゼロなるわけではない点に注意してください。またリスクを下げれば期待されるリターンも低くなります。

リスクの水準だけではなく、信託報酬(コスト)やその他の条件も必ずチェックしてください。バランスファンドはコスト(信託報酬)が高いとよく言われます。確かに中には年1%前後のものもありますが、近年は年0.1%台のもの、年0.1~0.2%程度の低コスト商品も増えています。

コストの差による影響は時間の経過とともに大きくなり、リターンに直結しますので特に注意してください。

「続けられる仕組み」を整えることが重要

将来の相場がどう動くかは、誰にもわかりません。だからこそ今できるのは、「最悪のケースを事前に想定し、その備えを見直すこと」ではないでしょうか。

最悪の事態が実際に起こる確率は低いかもしれませんし、仮に起こったとしても、冷静に対応できればその後のパフォーマンスを改善する余地はあります。ですが、市場がどういう動きをするのかなど、誰も断言はできません。

いざ暴落に直面すると、現実には対応できること・できないことがあります。ある程度の準備がなければ「頭ではわかっていても、続けられない」場面が出てきてしまう可能性があります。

だからこそ、投資を続けていくにあたっては、最悪の状況を想定し、リスクと資金管理をすり合わせた上でスタートラインに立つことが重要です。

市場に居続けることができれば、時間は資産設計の最大の味方になります。

新NISA3年目という節目を迎えるいま、「なんとなく」は卒業して、「続けられる力」もあわせて点検してみてはいかがでしょうか。

内田 英子(うちだ・えいこ)
FPオフィスツクル代表、ファイナンシャルアドバイザー、CFP
愛媛県在住。証券会社・保険ショップ勤務などを経て、現在、FPオフィスツクル代表。完全フィーベースの独立系FPとして、全国からオンライン相談に応じる。教育費・住宅・老後の資金計画まで、人生の節目に寄り添うサポートを行う。税制や公的医療保険、公的年金、企業年金などの制度を活かし、コストを抑えながら「資産を長持ちさせる家計づくり」を提案。住宅ローンや保険、投資など“生活に関わる金融制度やサービス”を使いこなし、仕組みと制度を味方につける“家計整理の知恵”を発信している。

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