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クラスのいじめ問題が最悪の事態へ→読者の予想を裏切る「予測不能」なラスト【作者に聞く】

  • 2025.12.31
「リリベルちゃん」01 作:誰でもない(@daredemonaidare)
「リリベルちゃん」01 作:誰でもない(@daredemonaidare)

学校の休み時間、友人同士でこっそりと試した「おまじない」。片思いの成就や成績アップを願う可愛らしいものから、嫌いな相手を懲らしめる危険な儀式まで、その種類は多岐にわたる。もしも、子ども特有の軽い好奇心で行った儀式が、取り返しのつかない事態を招いたら……。

X(旧Twitter)などのSNS上で、予想を裏切る展開のショートホラーを数多く発表している漫画家・誰でもない(@daredemonaidare)さん。2024年4月に公開されたオリジナル作品『リリベルちゃん』は、小学校を舞台にした“ある復讐”の物語だ。妖精に罰を与えてもらうというささやかな仕返しが、やがて想像を絶する恐怖へと変貌していく。今回は作者である誰でもないさんに、本作に込めた意図や、ホラー表現のこだわりについて話を聞いた。

「リリベルちゃん」02 作:誰でもない(@daredemonaidare)
「リリベルちゃん」02 作:誰でもない(@daredemonaidare)
「リリベルちゃん」03 作:誰でもない(@daredemonaidare)
「リリベルちゃん」03 作:誰でもない(@daredemonaidare)
「リリベルちゃん」04 作:誰でもない(@daredemonaidare)
「リリベルちゃん」04 作:誰でもない(@daredemonaidare)

エスカレートしていく「報復」の儀式

物語の語り手である小学生の春香は、クラスメイトの相沢さんから陰湿ないじめを受けていた。追いつめられた彼女は、友人の彩とともに、学校で噂される妖精のおまじない「リリベルちゃん」に救いを求める。相手に罰を与えるというその儀式を、春香たちは何度も何度も執拗に繰り返した。

ところが、肝心の相沢さんには一向に不幸が訪れない。無傷でピンピンしている彼女に対し、おまじないをかけた側の春香たちが、あろうことか相沢さんの乗った車にはねられてしまう。「罰せられているのは、もしかして私たちの方なのか?」。因果応報の理不尽さに絶望しかけたその時、車から降りてきた相沢さんが突如として土下座し、事故の一部始終を語り始めるのだった。

被害者と加害者が入れ替わる瞬間

本作の着想について、誰でもないさんは「子どもたちの間で流行するような、ごく軽いノリのおまじないから、とんでもなく恐ろしい事態に発展する物語を描きたかった」と語る。

作中で特に注目してほしいポイントとして、作者が挙げたのが事故直後のシーンだ。車から降りてきた相沢さんの表情には、単なる事故への動揺とは異なる感情が張り付いている。「あの表情は、彼女が『死』そのものに怯えていたからこそ生まれたものです」と、誰でもないさんは演出の意図を明かす。この場面を境に、いじめられっ子といじめっ子の関係性、そして被害者と加害者の立場が複雑に反転していく。

怪異とは「死」と人間を繋ぐもの

単なる復讐劇では終わらないのが、誰でもない作品の真骨頂だ。本作でも、いじめに対する報復や立場の逆転、さらには信仰の入れ替わりといった要素が巧みに盛り込まれている。

ホラーを描くうえでの意識について尋ねると、誰でもないさんは自身の怪異観をこう語ってくれた。「突き詰めていくと、恐怖という感情はすべて『死』へと繋がっています。死と人間を繋ぐ流れを具現化した姿こそが、怪異なのだと考えています」

子どもじみたおまじないが、本物の「呪い」へと変質する過程。そして、人間と怪異それぞれの恐ろしさが交錯する『リリベルちゃん』。まだ未読の方は、ぜひその結末を見届けてほしい。

取材協力:誰でもない(@daredemonaidare)

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