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「ドログバは団結の象徴」パビリオン館長が明かす、コートジボワールのサッカー界を取り巻く特別な事情【プレイバック大阪・関西万博】

  • 2025.12.30

2025年も残りわずかとなりましたが、10月13日に幕を下ろした大阪・関西万博の大盛況ぶりは、各所で話題となり、会期中がスポーツや健康に関するさまざま展示が会場を盛り上げました。ここでは元サッカー選手のディディエ・ドログバ氏に関する展示が一際目を引いた、コートジボワールパビリオンの展示を振り返ります。

画像1: (C)Getty Images
(C)Getty Images

ドログバ氏は「コートジボワールの復興と文化の象徴です」

画像: コートジボワールパビリオンに展示されたドログバ選手のパネル。時に来場者を呼び込むスタッフが、ドログバ選手の名前を伝えたり、田中マルクス闘莉王氏とのエピソードを交えながら、国を紹介する姿も見られた。
コートジボワールパビリオンに展示されたドログバ選手のパネル。時に来場者を呼び込むスタッフが、ドログバ選手の名前を伝えたり、田中マルクス闘莉王氏とのエピソードを交えながら、国を紹介する姿も見られた。

コートジボワール共和国は、アフリカの北大西洋に面し、カカオ豆やカシューナッツの生産が盛んな農業国です。

「私たちは、世界で生産されるカカオ豆の全体の約40%を担っており、『チョコレートの国』として広く知られていますが、多様で魅力的な文化を持ち、スポーツも盛んです」

パビリオン館長のアシータ・コネ(Assita Kone)さんがそのように話すコートジボアールパビリオンで、とりわけ存在感を示したのが、かつてサッカー・コートジボワール代表でプレーし、2014年には日本代表と対戦したディディエ・ドログバ選手にまつわる展示でした。

ドイツW杯に出場を決めた2005年10月の試合後、ドログバ選手は「長引く内戦をやめるように」と国民に訴え、1週間ほどで停戦に至ったエピソードを持ち、「コートジボワールの英雄」として、同国で敬愛されています。

画像: コートジボワールの英雄、ドログバ選手について語るアシータ・コネ氏
コートジボワールの英雄、ドログバ選手について語るアシータ・コネ氏

ドログバ氏を「我が国の素晴らしい文化的な価値観の表現者でもあり、復興の象徴でもあります」と話すアシータ・コネ氏は、こう続けました。

「団結を促す彼の強いメッセージにより、少なくとも60以上の異なる民族から成るコートジボワールという国の団結を促し、国内の平和と協力をもたらしましたし、ドログバさんの影響力の強さを世界に示すものとなりました。私たちの国にとって、ディディエ・ドログバ氏は本当に重要な存在ですし、元トップスポーツとしての姿だけではなく、平和大使、文化大使としての側面もお持ちで、多岐にわたるジャンルでご活躍されています」

画像: (C)Getty Images ブラジルW杯では、対日本代表戦に途中出場し、2得点に絡む活躍。日本代表は世界の壁の高さを思い知らされることに。
(C)Getty Images ブラジルW杯では、対日本代表戦に途中出場し、2得点に絡む活躍。日本代表は世界の壁の高さを思い知らされることに。

アシータ・コネ氏が熱弁するドログバ選手は、日本とも深い縁がある選手で、南アフリカW杯(2010年)の直前に行われた強化試合、そしてブラジルW杯(2014年)には、本戦で顔を合わせましたが…。2010年は、この試合で日本代表・田中マルクス闘莉王選手と接触し、右肘を骨折。本戦では負傷を抱えながらのプレーを強いられることになりました。

「ドログバ選手のようなキープレーヤーが満足のいくパフォーマンスができない状況は、チームにとっても非常に痛手で、辛い戦いを強いられることになりましたが、(1勝1分1敗の3位で予選敗退に終わる)2014年6月のブラジル大会で彼は復活し、改めてその実力を示してくれました。特に初戦の対日本戦では、ドログバ選手の2得点に絡む活躍を見せ、予選突破に貢献してくれました。さまざまな偉業を残し、今は現役を退いていますが、ピッチを離れても、変わらずにスポーツの振興に尽力し続けているんです」

北中米W杯で「我が国の素晴らしいサッカーを見てほしい」

画像: サッカーの話になるととりわけ饒舌で、思いの強さを感じさせた。
サッカーの話になるととりわけ饒舌で、思いの強さを感じさせた。

2023年の「ネーションズカップ」、2024年1月に自国で開催された「アフリカンカップ」でそれぞれ優勝を手にしたコートジボワール代表は、2026年に行われる北中米W杯への出場権を獲得。先日の抽選会では予選E組に入り、ドイツ、キュラソー、エクアドルとの対戦することが決まりました。

「私たちの国の男子サッカーの代表チームは、国のシンボルでもある『像』に準えて、『Les Éléphants(象)』の愛称で親しまれていますが、我が国の素晴らしいサッカーの実力を発信する本当に素晴らしい時間になればなと思っています。私たちはアフリカ大陸のタイトルを獲得していますから、やっぱり(上位進出を)期待しちゃいますよね。ぜひ日本の皆さんにも「エレファンツ」のことを応援していただけたら嬉しいです」

と期待を寄せるアシータさんは「コートジボワールでサッカーをすることは、ある意味で特別なことです」と語った上で、コートジボワールにおけるサッカーの役割についてこう続けました。

「私たちの国は、スポーツが担う役割を理解しているので、スポーツインフラにも多額の投資を行っています。コートジボワールに限った話ではありませんが、アフリカ大陸はサッカー、バスケットボール、ランニングなど、世界中で多くのキープレーヤーを輩出してきました。幼少期の貧しい生活から這い上がり、世界的な成功を掴んだドログバ氏の活躍を見ると、夢を抱き、地道な努力を続けることができるでしょう。そしてスポーツの勝敗に一喜一憂し、みんなでその瞬間を分かち合えることも、私たちにとっては本当に重要です」

コートジボワールの文化を知り、多くの人に訪れてほしい

画像2: (C)Getty Images
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アシータさんは、インタビューの最後に約半年間滞在した日本の思い出や収穫について、次のように語りました。

「私たちは、大阪・関西万博を通じて、多くのことを学びました。私にとっては自国の観光や特産品のPRを通して、国のさらなる発展に向けて新たな関係構築を模索する場です。多くの経験、文化、情報、感情を手にして私たちは帰国することになりますが、チョコレートをはじめとするコートジボワール共和国の文化を、日本の皆さんに知っていただけていたら嬉しいですし、そうであることを願っています。そして一人でも多くの日本の皆さんに、ホスピタリティに溢れる私たちの国を訪れてみてほしいと思っています」

執筆:JUN.S

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