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【ゾッとする怖い話】このアパート、何かおかしい。住人が洗濯機を置かない理由【ホラー小説】

  • 2025.12.29
古いアパートの廊下
出典:stock.adobe.com

古いアパートに引っ越してすぐ、共有廊下に洗濯機を置ける造りに驚いた。 しかしなぜか隣人たちは誰も置いていない。 皆がわざわざコインランドリーに通っているのを見て、不思議に思いながらも気にせず使い始めた。 しかし、ある日を境に「なぜ誰も洗濯機を置かないのか」を嫌でも思い知らされることになった。

廊下に置かれた洗濯機

古いアパートに引っ越してきて驚いたのは、各部屋の前にある共有廊下に洗濯機を置く造りだったことだ。

便利そうだと思ったのに、隣人たちは誰も洗濯機を置いていない。
皆、徒歩数分のコインランドリーに通っているようだった。

「不便じゃないのか?」と不思議に思ったが、とくに気にせず洗濯機を設置した。

最初のうちは問題なかった。夜に洗濯機を回しても静かで、廊下に出れば夜風が涼しく、快適なものだった。
だが数日後、洗濯を終えて蓋を開けたとき、違和感を覚える。

洗濯物に、長く黒い髪が数本まとわりついていたのだ。
自分の髪ではない。気味悪さを覚えつつも、気にしないようにして部屋に戻った。

増えていく髪の毛

それからだ。洗濯するたび、髪の毛の量が増えていった。
最初は数本だったのが、十数本、やがて洗濯物一面に絡みつくほどに。

「誰かのいたずらか?」と思った。
廊下に置かれているため、誰かが髪を入れているのかもしれない。洗濯機の回る音がうるさいと、住人の無言のクレームかもしれない。

そう考えて、夜ではなく昼間に洗濯するように変えた。

しかし、昼間でも状況は変わらなかった。
むしろ髪の量はさらに増え続け、取り出すたびに不快感が募る。

ある日、真昼間に洗濯が終わり、恐る恐る蓋を開けたときだ。
洗濯物の隙間から、白いものが覗いた。次の瞬間、女性の頭がどさりと顔を出した。

びっしりと長い黒髪に覆われ、ギョロリと白目を剥いた瞳がこちらを睨みつけている。血走った目が、確かに自分を見ていた。

洗濯機の中の女性

喉から勝手に叫び声が漏れ、蓋を乱暴に閉めると、逃げるように廊下を駆け出した。
息を切らして近くのコンビニに逃げ込み、しばらく戻ることができなかった。

意を決して夕方に帰宅し、洗濯機の蓋を恐る恐る開けると、そこに顔はなかった。
だが、洗濯物よりも多いほどの長い黒髪が、ぐっしょりと水を含んで絡みついていた。

濡れた髪の塊から、水滴が「ぴちょん」と音を立てて廊下に落ちる。

その瞬間悟った。
だから、このアパートの住人は誰も洗濯機を置かないのだ。

私はすぐに洗濯機を処分した。
以来、私は住人たちと同じようにコインランドリーに通っている。

二度とあの廊下に洗濯機を置く気にはなれない。

※この物語はフィクションです。
※記事に使用している画像はイメージです。

◆斎 透(さい とおる) noteにて短編小説を執筆中の、犬と暮らすアラサー女子です。 やるせない夜にそっと寄り添うような文章をお届けしています。 幼い頃から、オカルト好きな母と叔母の影響で、不思議な話に夢中に。 「誰でも一つは、背中がひんやりする話を持っている」をモットーに、 ゾッとするけど、どこか温度のある物語を綴っています。 美容やキラキラした話題に疲れた夜、よければ一編、覗いてみてくださいね。 ●note:https://note.com/sai_to_ru

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