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好きでもない男に色を売り続ける女郎に救いはあるのか? そして、吉原大門の外へ出た花魁の将来は【NHK大河『べらぼう』ベスト振り返りセレクション】

  • 2026.1.5

*TOP画像/瀬川(小芝風花) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」10話(3月9日放送)より(C)NHK

オトナサローネでは、2025年もさまざまな記事を掲載してきました。その中から今回は特別に、「大反響だった記事」をピックアップ! 本シリーズでは大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」について解説。ドラマパートに加え、当時の文化についての記事も大人気でした。
(集計期間は2025年1月~12月まで。本記事の初公開は2025年3月11日です)

若造の夢とそれを肯定する年長者

蔦重(横浜流星)は市中の本屋から締め出され、吉原でも西村屋側につく人が出るという問題を抱えています。八方塞がりの蔦重の相談にのったのが源内(安田顕)と書物問屋の市兵衛(里見浩太郎)でした。

 

蔦重(横浜流星) 源内(安田顕) 市兵衛(里見浩太郎) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」10話(3月9日放送)より(C)NHK

 

市兵衛は蔦重が思うほど事は悪くないと伝えた上で、「ものはな 引いて見るっていうことは大事なんだよ」と助言をしていました。

 

また、源内は「もう やりてえことやったら?」と一言。“我が心のままに生きるきつさ”を蔦重に第5話では教え説いていましたが、彼の底力を信じているからこそ背中を押したのでしょう。

 

さらに、源内は「お前さんのやりたいことって何よ?」と、蔦重に問いかけます。蔦重はこの問いに目を輝かせながら、次のように答えていました。

 

「俺は 吉原を 昔のように江戸っ子が憧れるとこにしてえです[中略]そこにいる花魁なんてなぁ 男にとっちゃ 高嶺の花で だから すっげえ大事にされて そこにいる女郎たちにとっちゃあいい出会いに恵まれて つれえことよりも 楽しいことの方が多い 俺は 吉原を そんな場所にしてえです。で…… あいつを喜ばせてえ」

 

女郎は吉原に望んで来たわけではなく、店で“商品”として扱われ、好きでもない男に色を売り続ける日々…。とはいえ、この仕組みがあるからこそ、救われる家族や生きていける人がいるのも事実。また、いね(水野美紀)が話していたように、女郎にとって吉原は人生をガラリと変えられる可能性を秘めた場所でもあります。だからこそ、蔦重は女郎のために吉原を活性化しようと決意したのです。

 

そして、蔦重は同じ夢を抱いている“あいつ”、つまり瀬川(小芝風香)を喜ばせることを何よりも願っています。

 

江戸時代は身分がほぼ固定されていましたが、現代の日本は自分の生き方を自ら決められます。それでも、大きな夢を抱いている人、目をキラキラと輝かせてビジョンを語る人は多くないと見えます。

 

夢を抱ける若者が少ないのは源内や市兵衛のように、若造の“べらぼうな夢”を「いいじゃねえか」と肯定する年長者が少ないからかもしれません。

 

また、吉原の女郎屋の主人たちは蔦重に吉原を任せています(“仕事を丸投げしている”ともいえそうだが)。損を嫌う彼らが蔦重に吉原の運命を左右する重要なことを委ねるのは、蔦重を信頼しているから。

 

蔦重(横浜流星) 女郎屋の主人たち 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」10話(3月9日放送)より(C)NHK

 

不安が強ければ寝付けないものですし、”馬鹿みてえな夢”を見ることもできないでしょう。蔦重は家なし、親なしではあるものの、「馬鹿みてえな昼寝の夢」を見られる世界で生きてはいたといえるのかもしれません。

蔦重と瀬川をつなぐもの

蔦重と瀬川をつなぐものも“夢”でした。蔦重は「青楼美人合姿鏡」を瀬川に渡した後、彼女に夢を語っていました。

 

「俺は 吉原を 楽しいことばかりのとこにしようと 思ってんだよ。女郎が いい思い出 いっぺえ持って 大門 出てけるとこにしたくてよ」

 

この夢は蔦重一人の夢ではなく、瀬川にとっての夢でもあります。二人にとっての夢であり、二人をつなぐものです。

 

瀬川(小芝風花) 蔦重(横浜流星) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」10話(3月9日放送)より(C)NHK

 

蔦重にとって吉原は大切な場所ですが、瀬川にとっても吉原はホームグラウンドです。瀬川は「青楼美人合姿鏡」のページをめくりながら、悲喜こもごもの日々を思い出していました。瀬川はこの場所で蔦重に出会い、二人で喜怒哀楽を共にしてきました。

 

また、瀬川の最後の花魁道中を松葉屋の主人たちは娘を見るような目で見守っていましたが、瀬川も彼らにあたたかな思いを少なからず抱いているはずです。瀬川は女郎の苦しみも、周囲の人たちの自分に対するあたたかな思いも知っているからこそ、吉原のために自らの使命を果たすことを決めました。

 

蔦重は瀬川の身請け後も“馬鹿みてえな昼寝の夢”を見続けることを誓いました。この夢を見続けていれば、瀬川の存在を感じられるから……。

 

瀬川の最後の花魁道中は彼女の覚悟が感じられ、自らの決断に悔いはなさそうでした。また、未来に立ち向かっているようにも見えました。その姿を見守る蔦重は寂しそうではあったものの、瀬川を見守り、彼女の明るい未来を願っているようでした。

蔦重(横浜流星) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」10話(3月9日放送)より(C)NHK

 

同じ夢を抱き、手を取り合いつつも、それぞれの道を歩む二人…。他人はこうした二人を不憫に思うかもしれません。しかし、人間には各々に与えられた使命があり、それを果たすのも1つの生き方。また、愛のかたちもさまざまです。

 

 

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