「有給中でも、電話に出ないのは社会人失格だ」という課長→課長の新婚旅行で鬼電した結果【短編小説】

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

私は都内のオフィスで働く事務員です。仕事は嫌いではありませんが、たった一つ、大きな悩みがありました。それは課長による「休暇中の電話」です。

先日、私は三日間の有給休暇をいただき、国内旅行に出かけました。しかし、観光中も、さらには深夜であっても、課長からの電話は止まりませんでした。

内容は「ホッチキスの芯はどこだ」「あの資料のフォントは何だ」といった、明日でもいいようなことばかり。せっかくの旅行は台無しでした。

休み明けに出社すると、課長は私を皆の前で叱り飛ばしたのです。

「有給中でも、電話に出ないのは社会人失格だ。一人前の社会人なら、休みの日だろうと常に仕事に対応できる態勢を整えておくのが常識だろう？」と。

私は悔しさをこらえ、「承知いたしました。課長のおっしゃる通り、社会人としての自覚を持ち、常に連絡が取れるようにいたします」と深く頭を下げました。

その一ヶ月後、今度は課長が新婚旅行で一週間の休みを取り、海外へ旅立ちました。私はこのチャンスを待っていたのです。

課長が現地に到着した頃を見計らい、私は「教え」を忠実に実行することにしました。

課長が眠りに寝ているであろう時間をあえて狙うことにしました。一度や二度ではありません。出るまでかけ続ける「鬼電」です。

ようやく出た課長は、ひどく疲れ切った声で「……今、何時だと思ってるんだ！こっちは新婚旅行中だぞ！」と怒鳴りました。

私は冷静に、そして最大限に丁寧な声で返しました。

「課長、申し訳ありません。ですが、以前ご指導いただいた通り『休みでも電話に出るのが一人前の社会人』ですよね？ところで共有スペースの加湿器の水の入れ方を聞いてもいいですか？」

課長は絶句していました。後ろからは奥様の「誰よこんな時間に！最低！」という怒鳴り声が聞こえます。私はその後も、数時間おきに「シュレッダーのゴミの捨て方」など、どうでもいい内容で電話をかけ続けました。

帰国後、課長は真っ青な顔で出社してきました。奥様とは旅行中ずっと険悪だったそうです。

それ以来、私たちの職場では「休みの人に電話をかけるのは禁止」という、当たり前で平和なルールが徹底されるようになりました。

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