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全裸で倒れた父→ICUの医療費は「3日で11万円」…請求書を見て青ざめた、親の医療費という現実【作者に聞く】

  • 2025.12.29
 「父が全裸で倒れてた。」 作=キクチ
「父が全裸で倒れてた。」 作=キクチ

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右耳難聴や子宮内膜症など、自身の身に起きたトラブルをコミカルかつ率直につづってきた漫画家のキクチさん(kkc_ayn)。特に、母親の自宅介護と看取りを描いた『20代、親を看取る。』は、若くして親の死と向き合う葛藤が同世代の共感を呼び、2023年に書籍化されるほどの反響を得た。そんなキクチさんが新たに描くのは、母との別れからわずか2年後、今度は父が病に倒れてしまった実体験『父が全裸で倒れてた。』だ。一人っ子として頼れるきょうだいもいない中、次々と決断を迫られる日々。今回は、父の容態への不安と同時に襲いかかってきた、切実な「お金の問題」について話を聞いた。

「父が全裸で倒れてた。」カバー 作=キクチ
「父が全裸で倒れてた。」カバー 作=キクチ
第1話1-1 作=キクチ
第1話1-1 作=キクチ
第1話1-2 作=キクチ
第1話1-2 作=キクチ
 第1話2-1 作=キクチ
第1話2-1 作=キクチ

「お金はいくらでも払う」と誓った直後に見た請求書の現実

予断を許さない父の病状を前に、キクチさんは「新薬だろうが何だろうが、お金はいくらでも払うから助けてほしい」と願っていた。しかし、病院から渡された請求書を見た瞬間、その決意は冷ややかな現実に打ち砕かれることになる。記載されていた金額は、わずか3日間で11万円。ICU(集中治療室)での高度な治療費がかさんだ結果だった。

「11万円という数字を見たときは、さすがにショックが大きかったです」とキクチさんは振り返る。さらに恐ろしいのは、たとえ実の親子であっても、本人以外の人間が親の銀行口座やクレジットカードを勝手に使うことはできないという点だ。つまり、この高額な医療費はキクチさん自身の財布から立て替える必要がある。自身の貯金があるとはいえ、たった数日でこの出費だ。完治のめどが立たない中、支払いがいつまで続くのかわからない恐怖に、キクチさんは戦慄した。どうにか負担を減らせないかと、すぐに国の制度などを必死に調べ回ったという。

マメな父が残した「ファイリング」に救われる

金銭的な不安に押しつぶされそうになる中で、唯一の救いとなったのが父の性格だった。マメな父は、各種重要書類をきれいにファイリングして保管していたのだ。おかげで預金残高や加入保険、企業年金の受給額や期間といった情報を即座に把握でき、将来のシミュレーションを行うことができた。「父が何歳まで生きた場合、どのような生活が送れるかを試算することで、ある程度不安を取り除くことができました」もし書類の場所がわからなければ、家族の負担は何倍にも膨れ上がっていただろう。良好な関係であれば、元気なうちに通帳や印鑑、証券のありかを確認し合っておくべきだと、キクチさんは痛感したそうだ。

クリスマスイブに自転車で爆走、保険代理店へ

書類を確認する中で、父が契約している保険が「がん保険」であることが判明する。現段階ではがんの可能性も示唆されていたが、もし別の病気であれば保障が受けられないリスクも浮上した。居ても立ってもいられなくなったキクチさんが保険代理店に向かったのは、なんとクリスマスイブ。世間が浮かれる中、商店街を自転車で爆走し、一刻も早く不安を解消しようと必死だった。自身は民間保険に未加入で知識も乏しかったが、対応した担当者は非常に親切だったという。「がんではないことが一番ですが、もしそうだと仮定してシミュレーションしてみましょう」と、寄り添った提案をしてくれたそうだ。

病気そのものの恐怖に加え、容赦なく降りかかる費用の問題。きれいごとだけでは済まない介護の現実を、キクチさんは時にシリアスに、時に笑いを交えて描き続けている。

取材協力:キクチ(kkc_ayn)

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