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元教師が400万円詐欺被害…「詐欺師」が賢い人を狙う理由とは?新NISA時代に潜む“落とし穴”

  • 2025.12.28
賢い人ほど詐欺事件に巻き込まれやすい理由とは?(画像はイメージ)
賢い人ほど詐欺事件に巻き込まれやすい理由とは?(画像はイメージ)

正直に言うと、私は金融犯罪の記事を書くたびに、どこか人ごとでした。映画で見るような、スーツ姿の男たちが札束を数えている世界。あるいは、ニュースで流れる「振り込め詐欺で○○万円被害」のテロップ。気の毒だとは思いますが、でも自分は大丈夫だろう、と。この「自分は大丈夫」が、実は一番危ないのです。

今回は、金融犯罪対策の専門家として活動する千葉祥子さんの著書「奪われない!お金を守る7つの習慣 金融犯罪対策のプロが教える[これからのマネーライフ]」(きずな出版)を紹介します。

ブームの陰で動く詐欺師たち

2024年1月、新NISA(少額投資非課税制度)が始まりました。その後、証券口座の開設数は過去最高を更新し、「オルカン」「S&P500」といった単語が居酒屋でも聞こえるようになりました。投資が「お金持ちの趣味」から「普通の人の習慣」に変わりつつあります。

「物価は上がるが給料は上がらない」「投資でもしなければやっていられない」という気持ちは分かります。しかし最近、妙な話をよく聞くようになったと、千葉さんは言います。

「『ネットで見つけた証券会社で口座を開いたら変だった』『友達に紹介されたFXの会社、出金できなくなった』『SNSで知り合った人に勧められて100万円入れたら、連絡取れなくなった』。全部、詐欺です。投資を始めたいけど、何からやればいいか分からない!という人を狙い撃ちにします」(千葉さん)

「先日、Xで流れてきた投稿が印象的でした。『新NISAで月3万円積み立て始めました』という報告に、見知らぬアカウントが『もっと効率的な方法ありますよ、DMください』とリプライしていたのです。典型的な手口です。あのリプライの先には、ほぼ確実に詐欺があります」(同)

問題は、被害者が「自分はだまされた」と気付きにくいことだと千葉さんは指摘します。最初は少し利益が出る仕組みになっています。「ほら、ちゃんと増えたでしょ」と見せられ、信用してもっと入れると、彼らは消えてしまいます。

「書店のマネーコーナーを見てください。『年収○○万円からの資産形成』『30代からの投資入門』-増やす本ばかりです。守る本は地味だから売れない。詐欺から身を守る方法より『10倍株の見つけ方』の方が読みたいに決まっている。人間の欲望は正直です」(千葉さん)

詐欺師は頭が悪い人を狙わない

千葉さんが、知人から聞いた話です。その知人の母親は70代、元教師で、しっかり者として知られていた人でしたが、400万円を失いました。どのような手法だったのでしょうか。

「手口はあきれるほど古典的なもので、『○○証券』を名乗る男からの電話です。『特別なご案内です』『今だけの優良銘柄です』。最初は、結構ですと断ったそうです。相手は3日後にまた電話してきました。『先日の銘柄、もう15%上がりました』と。そして1週間後、『最後のチャンスです』と。結局、振り込んでしまいました」(千葉さん)

「詐欺師はばかを狙いません。『自分はだまされない』と思っている、ちょっと賢い人を狙います。プライドがあるから、途中で引き返せない。おかしいと気付いても、『自分が間違っているはずがない』と思い込むからです」(千葉さん)

千葉さんは、去年、LINEで知り合いを名乗るアカウントから「投資に興味ありませんか」と連絡が来たそうです。丁寧な文面だったのと、共通の知人の名前が出てきたので、つい返信してしまいました。結果的には怪しいと思って途中でやめましたが、あのまま続けていたらどうなっていたでしょう。

ところで、千葉さんはこうした詐欺に加えて、もう一つ気を付けなければならないものがあると主張します。

「金融犯罪というと、オレオレ詐欺やマネーロンダリングを思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、身近なところにもっと厄介なものがあります。インサイダー取引です。会社の飲み会で『うち、来月大きな発表あるんだよね』と聞いて、その会社の株を買ったらアウトです」(千葉さん)

「取引先の担当者から『ここだけの話』で業績を教えてもらって、それを元に売買したらアウト。そう、そんなことで犯罪になるのです」(同)

千葉さんによると、個人投資家のインサイダーは多いといいます。本人に自覚がないだけで。よかれと思って教えてくれた情報、ありがたいと思って使った情報が犯罪になります。知らなかったでは済まされないのです。

コラムニスト、著述家 尾藤克之

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