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見逃していたらもったいない!「未知のソウル」「ソウルの家から大企業に通うキム部長の物語」…2025年の隠れた傑作韓国ドラマ6選

  • 2025.12.27

2025年も残りわずか。今年も、ファンを魅了する韓国ドラマの名品が数多く生まれた。そんななかから、家族や恋人、友人たちで集まることが増える年末年始に寒い身体を心から温めてくれるハートウォーミングな傑作をご紹介しよう。

【写真を見る】ソン・ソック扮する夫ナクジュンの一途さもたまらない!

パク・ボヨンが1人2役で現代女性を好演した「未知のソウル」

韓国ドラマ界のヒットメーカースタジオドラゴンが制作した「未知のソウル」は、ソウルを舞台に現代女性の憂いと喜びに満ちた人生をめぐる癒しのドラマだ。元有望な陸上選手という経歴を持ち、今はフリーターとして家計を支えるミジと、成績優秀だが都会での会社勤めで深く傷ついたミレ。容姿以外全てが異なる一卵性双生児の姉妹が、ある理由から互いの人生を交換したことで、本当の感情や愛を捜し、自分と向き合う道程を描く。

苦難の多い時代で懸命に生きる女性の姿を描いた「未知のソウル」 [c]Everett Collection/AFLO
苦難の多い時代で懸命に生きる女性の姿を描いた「未知のソウル」 [c]Everett Collection/AFLO

熱い反響を得た秘訣の一つは、俳優陣の確かな演技。パク・ボヨンが1人2役に挑戦し、双子の姉妹ミジとミレをしっかり演じ分けて俳優として大きく格を引き上げた。姉妹の苦悩や生き方をていねいに描いただけでなく、ロマンスの相手にも注目が集まった。ミジの幼馴染で優秀な弁護士でいながら聴覚のハンディキャップによる偏見にさらされているホスには、『聖なる復讐者』(22)のパク・ジニョン。ミレがひょんな手違いから働くことになるイチゴ農家の主人セジンには、『梨泰院クラス』などのリュ・ギョンス。それぞれが紡ぐ暖かく慈しみ深いラブラインにときめいた視聴者も続出した。ちなみにパク・ボヨンは来年、Disney+で配信される「ゴールドランド(原題:골드랜드)」でも主演を務めている。人里離れた町出身の少女が、偶然にも密輸組織から金の延べ棒を手に入れることから始まるスリリングなストーリーで、また新しい演技を見せてくれそうだ。

夫婦の幸福について考えさせられる暖かいドラマ「君は天国でも美しい」

「君は天国でも美しい」は、結婚や夫婦のあり方をめぐるハートフルコメディ。主人公であるヘスクは80歳で亡くなり天国へ。そこで彼女は、天国で誰とどんな姿で一緒に過ごすかを選ばさせられる。考えあぐねた末に最愛の夫ナクジュンの生前のセリフ「いまの姿が一番美しい」を思い出すと、老いたまま夫のいる場所へ向かう。ところが夫は若い姿で天国生活を謳歌していた…。80歳の妻と20代後半の夫の奇妙で幸福な天国での暮らしがスタートする。

【写真を見る】ソン・ソック扮する夫ナクジュンの一途さもたまらない! [c]Everett Collection/AFLO
【写真を見る】ソン・ソック扮する夫ナクジュンの一途さもたまらない! [c]Everett Collection/AFLO

死後の世界や輪廻転生と韓国ドラマが得意とする王道なテーマを扱いながら、妻役に“国民的ハルモニ(おばあちゃん)”として愛されるキム・ヘジャ、夫役にソン・ソックという新鮮なカップリングがチャーミングだった。夫婦愛や人生の幸福の本質に立ち返らせる深く温かい本作は、人恋しい冬の季節にピッタリだろう。本作を以て一時活動休止宣言を発表したソン・ソック主演だが、母を亡くしたった一人で伝統舞踊に青春を懸ける主人公を見守る薬剤師として特別出演した映画『IT'S OK(原題:괜찮아 괜찮아 괜찮아!)』が2026年日本公開予定となっており、こちらも要チェックだ。

激動の時代に奮闘する青年をジュノが演じた「テプン商事」

大ヒットドラマ「暴君のシェフ」の後継として好評を博した「テプン商事」。父の後を継ぎ、社員も資金もない貿易会社の社長になってしまった商社マンのカン・テプンが、商売の初心者として奮闘しながら仲間とともに成長していくストーリーだ。

ジュノとキム・ミンハの演技力が光った「テプン商事」 [c]Everett Collection/AFLO
ジュノとキム・ミンハの演技力が光った「テプン商事」 [c]Everett Collection/AFLO

韓国現代史のなかで、いまも人々に暗い記憶として残る、韓国のIMF経済危機。ドラマ「二十五、二十一」などのように、近年は時代の激動に必死で抗う若者の生き様をていねいかつドラマティックに描く映像作品が増えたが、本作もまたその系譜に連なるものだ。イ・ジュノ扮するテプンそのものの魅力や、自由奔放な彼が徐々に社長へ成長していく等身大のサクセスストーリーとしての見ごたえはもちろん、「パチンコ」シリーズの好演も記憶に残るキム・ミンハ扮する経理担当のエース、ミソンも忘れがたいキャラクターだった。イ・ジュノはまもなく配信予定のNetflixの新ドラマ「CASHERO 〜ヒーローは現金を持つ〜」で、手持ちの現金の数だけ強くなれる奇抜な男に扮する。本作の勢いに乗ったまま演じる新感覚ヒーローにも期待したい。

女性同士の友情と別れ、そして再会をていねいに描く「ウンジュンとサンヨン」

今年は2人の女性を主人公にしたドラマが豊作だったが、「ウンジュンとサンヨン」もそのなかの1本に数えられる。小学校時代からの親友、そしてライバルでもあったウンジュンとサンヨン。しかしある出来事をきっかけに絶交してしまい、そのまま疎遠になってしまった。大人になった2人はある日、サンヨンからのアプローチによって再会。実は彼女は病で余命わずかだった。サンヨンは「人生最後の願い」をウンジュンに託し、 もう一度日々を共に過ごしていく。

二人の女性の過去と未来を丹念に紡ぎ出す「ウンジュンとサンヨン」 [c]Everett Collection/AFLO
二人の女性の過去と未来を丹念に紡ぎ出す「ウンジュンとサンヨン」 [c]Everett Collection/AFLO

彼女たちの10代から40代までを伏線をちりばめつつていねいに描き、「人生とは積み重ねである」という普遍的なメッセージを視聴者へ届けることに成功した本作は、全15話を一挙配信というチャレンジングな編成にもかかわらず“イッキ見”してしまうファンが多かったそうだ。ドラマ作家ウンジュン役には安定感間違いなしなキム・ゴウン、映画会社社長サンヨン役を『秘顔』(24)での狂気あふれる演技で青龍映画賞助演女優賞受賞など数多の賞賛を受けたパク・ジヒョンがそれぞれ演じたことも、いまを生きる同世代の女性の心をつかんだ理由だろう。キム・ゴウンは現在、サスペンス「告白の代価」が配信中で、打って変わったサイコパス役の力演も高評価を受けている。またパク・ジヒョンは『大人の童話 この恋、青少年は禁止です!』(2026年1月9日公開)が控えている。昼は公務員、夜は官能小説家として活動する作家に扮し、SUPER JUNIORのチェ・シウォンとラブコメディを繰り広げる。

欠点だらけのレジデントが成長していく姿に感動!「いつかは賢いレジデント生活」

いまなお愛されるドラマ「賢い医師生活」シリーズのスピンオフとして制作された「いつかは賢いレジデント生活」の主人公は、鍾路ユルジェ病院分院で産婦人科に採用された新人4人。寝る時間もないくらい手に負えないほどの仕事をこなし、アマチュアゆえの失敗の数々を経験しながら、“いつかは賢い名医”を目指していく姿を描く。

医師としても人間としても成長していく4人を応援したくなる [c]Everett Collection/AFLO
医師としても人間としても成長していく4人を応援したくなる [c]Everett Collection/AFLO

医師としての姿のみならず、彼らの友情や恋愛、家族愛といった等身大の人間的在りようを生き生きと描き出した「賢い医師生活」シリーズの良さを持つ本作もまた、厚みあるキャラクターの描写はさすがだった。出戻りレジデントのイヨンのほか、仕事よりもプライベートが気になるナムギョン、出来が良いゆえに時々独りよがりになるサビ、お調子者で失敗してしまうジェイルは、みな少しずつどこかに欠点があり、劣等感や嫉妬心から足を引っ張ってしまうことも。そんななかでも互いに励まし合って困難を乗り越えていく様子は、生命が生まれてくる産婦人科という場所も相まって静かな感動を呼び起こす。イヨンを好演したコ・ユンジョンは、Netflixで「その恋、通訳できますか?」の配信が控えている。

中年男性がたどる“男らしさ”からの解放から目が離せない「ソウルの家から大企業に通うキム部長の物語」

最後に、「じゃああんたが作ってみろよ」や「おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!」といった日本のドラマに通じる痛快さがあるドラマをおすすめしたい。『エクストリーム・ジョブ』(19)や「ムービング」などヒット作を盛り上げて来たリュ・スンリョンによる新作ヒューマンコメディドラマ「ソウルの家から大企業に通うキム部長の物語」だ。ソウルの一等地に自宅を持ち、「自分は組織にとって価値がある」と思い込んでいた不遜な中年男性キム・ナクスが、あるとき自身の地位もプライドもすべて一瞬で失う。崖っぷちに立たされた彼は、「大企業の部長」というかりそめの肩書きではない“本当の自分”を見つけ出し人生を再編しようとする。

 嫌な奴だがなぜか憎めないキム・ナクス [c]JTBC
嫌な奴だがなぜか憎めないキム・ナクス [c]JTBC

ナクスはいわゆる嫌われるタイプの上司であり、夫であり、父親だ。だが一方でそれは韓国の家父長制の歴史や、男性中心で競争の激しい社会が押しつけてきた〝男らしさ〟の呪いの結果でもある。本作は近年日本でも注目される“男性らしさ”からの解放というテーマを扱った、意外な社会派の快作だ。演じたリュ・スンリョンの持つ渋みや人間味によるものなのだろうか、ナクスにどうしようもなくイライラしたり呆れたりしながらも、なぜか目が離せなかった。そしてリュ・スンリョンは、『エクストリーム・ジョブ』の脚本家とキャストが再タッグを組んだ新作主演映画『大命中!MEは何しにアマゾンへ?』も、12月26日より公開中。アーチェリー競技から引退した平凡なサラリーマンに扮していて、この年末も笑わせてくれそうだ。

文/荒井 南

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