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“脳の大掃除”を叶える、3つの具体的な方法【ヴォーグなお悩み外来】

  • 2025.12.27

スマホの苦手な相手の名前登録を「B」に変換

脳科学者・西剛志先生が提案する“脳の大掃除”の一つ目は「ネームチェンジ法」。

苦手な上司や取引先の名前を、あえて意味のない名称に変えてしまうという、シンプルな方法だ。たとえば「田中さん」が苦手なら、スマホの登録名を「B」に変更するだけ。

では、名前を変えると脳にはどんな変化が起きるのだろう?

「着信やメッセージに『田中』と表示された瞬間、脳はその人の顔や役職、怒鳴られた声、理不尽な要求など、過去の嫌な記憶を一気に呼び起こします。しかし“B”と表示されると、『誰だっけ?』と脳が一瞬立ち止まり、ワンクッションが生まれる。この間が扁桃体(不安や恐怖を感じる部分)の過剰反応を抑え、嫌な記憶を再生しにくくしてくれるんです」

つまり、“B”には感情や記憶が紐づいていないため、同じ相手からの着信でも、不快感を覚えにくくなるということだ。

この方法は、スマホだけでなく、帰宅後にその相手を思い出す回数を減らす効果も期待できるという。名前に反応しなくなることで、脳が“過去の記憶を呼び出すクセ”そのものが弱まっていくからだ。

「ネームチェンジ法」によって、相手へのマイナスな感情が減りポジティブな感情が戻ってくるとも。

「私たちの脳は、コントロールできない存在に対して不安を感じます。名前を変えることで、相手への“主導権”を取り戻した感覚が生まれ、安心が戻ってくる。ポジティブな思考が戻り、結果的にストレスも軽減されるんです。もちろん、上司そのものが変わるわけではありませんが、受け取るストレスの量は確実に減ります」

ネームチェンジ法のコツは、自分や家族のイニシャルを避け、感情が湧かない無機質なワードを選ぶこと。前述の「B」など、意味を持たない文字が最適だ。

photo: getty image

モヤモヤが消えるまで全部書き出す

脳の大掃除の二つ目は、いま頭の中にあるストレス・悩み・感情を、ひたすら書き出していくこと。

「それなら何度もやっている」「今も毎日書いている」という人もいるかもしれない。

けれど、ここで大事なのは“もう何も出てこない”ところまで書き切ること。脳の整理整頓には“最後のひとかけら”まで外に出し切ることが重要なのだそう。

掃除に例えるなら、部屋の隅に残ったチリまで逃さず、徹底的にゴミを追い出すイメージだ。

西先生自身、強いストレスに悩まされていた時期に、怒りや恨みを40分ほど書き続けて、ようやく「空っぽになった」と感じる地点にたどりついたという。そこから不思議と怒りが薄れ、心がふっと軽くなったそうだ。

中には、一日では書ききれず、一週間かけて“脳のゴミ出し”を完了させたクライアントもいたという。

「書く行為には、頭の中のもやもやを“言葉にして視覚化する”効果があります。さらに、紙の上に“外へ出す”動作が加わることで、脳は『これはもう処理済み』と判断する。すると扁桃体は過剰反応しなくなり、気持ちが落ち着いてくるんです」

書くときは、感情だけでなく「なぜあの人はあの行動をしたのか?」という思考のプロセスまで一緒に書き出すと、整理が一段と進みやすいという。

では、年末年始によくある“友人に悩みを話してスッキリする”のはどうだろうか?

実は、それだけでは不十分なのだそう。

「話すだけで一時的に楽になるのは事実です。でも、研究では“話すより書くほうが効果が高い”というエビデンスが多く示されています。特にトラウマ研究の分野では、聞いてもらうだけでは改善につながらなかった、という報告もあります」

今年の年末は、休み全部を使うくらいの気持ちで、ゆっくりと“脳のゴミ出し”をしてみてはいかがだろう。

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来年の目標は、ストレスを捨ててから描くもの

「来年の目標を立てるとき、ストレスを抱えたまま考えると、どうしても“疲れた自分が選ぶゴール”になりがちなんです。まずは脳のゴミ=ストレスをしっかり捨てて、脳内にスペースをつくること。まっさらな状態になってはじめて、自分にとって本当に適切なゴールが見えてくると思います」と、先生。

つまり、来年の目標は“脳のワーキングメモリーが元気に働いている状態”でこそ、正しく設定できるということ。

今年のストレスは、できるだけ年内にデトックスしておくのが理想だ。

そして、もっと即効性のある方法がほしい人へ、先生がすすめるのが「ラベンダーの香りをかぐ」という、とてもシンプルな習慣。

「オキシトシンにはストレスを下げる効果があります。ハグやペットとの触れ合い、マッサージ、フードシェアリングなどでも分泌されますが、香りを使うのがいちばん手軽。なかでもラベンダーは非常に有効です」

まずはラベンダーの香りをかいで、深呼吸をひとつ。

香りで今の緊張をゆるめ、脳の大掃除をしてから、来年の自分に向き合ってみて。

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西剛志先生

脳科学者(工学博士)、分子生物学者。東京工業大学大学院生命情報専攻修了。博士号を取得後、特許庁などを経て、うまくいく人とそうでない人の違いを研究する会社を設立。脳科学者の観点から悔いのない充実した人生のあり方を提案している。20万部のベストセラーになった『80歳でも脳が老化しない人がやっていること』(アスコム)の他、『脳科学でわかった仕事のストレスをなくす本』(アスコム)など近著多数。

Photos: getty images Text: Kyoko Takahashi Editor: Kyoko Muramatsu

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