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鏡から伸びる手、猛然と走ってくる老婆…男子高校生が「姿見」で遭遇した"最悪の結末"

  • 2025.12.27
写真はイメージです。©アフロ

なぜ幽霊は「髪の長い女性」なのか、なぜ「ビデオ」が呪いを伝播させるのか。

気鋭の映画研究者がジェンダー/メディアの観点でJホラーの本質を緻密に分析する『Jホラーの核心:女性、フェイク、呪いのビデオ』(ハヤカワ新書)を一部抜粋してお届けします。

卒業を間近に控えた男子高校生2人が、姿見に見たものとは……。(全2回の2回目)


鏡から伸びてきた白い手につかまれ……

『怪談新耳袋』の「邂逅」感は、作品の媒体がテレビから映画へ変わっても健在だ。

ふたつめに紹介するのは、これも「修学旅行」と同じく『怪談新耳袋 劇場版』で三宅が手掛けた一篇「姿見」である。

高校卒業を間近に控えた男子高校生2人〔演:内野謙太、上條誠〕が、高校生活で「やり残したこと」として体育館倉庫にしまわれた姿見にまつわる噂の検証を試みる。

写真はイメージです。©アフロ

この鏡には、幽霊が映るという噂があるようだ。

鏡を覆っていたカバーを外しても何事も起きず、ほっとしていると男子高校生のうちの一人の携帯電話に、就職先からの電話がかかってくる。

電話に応対するために彼がその場を離れている間に、もう1人は鏡から伸びてきた白い手につかまれ、姿を消す。

電話から戻ってきた男子高校生が砕け散った鏡のかけらの一つを手に取ると、自身の背後に立つ女性幽霊の姿を見てしまう。

笑い声がぴたっと止んで……

写真はイメージです。©アフロ

体育館内に響き渡る女性幽霊の笑い声に耳を塞いで絶叫すると、笑い声がぴたっと止む。

体育館を見渡す男子高校生に向かってバスケットボールを持った、真っ白な顔の老婆が猛然と走り寄ってくるところで、物語は終わる。

ちなみにこの老婆の幽霊は、やはり三宅隆太が監督を務めた『呪怨 白い老女』〔2009年〕で再び、しかも唐突にスクリーンに舞い戻ってくる。

『怪談新耳袋』と『呪怨』の世界が、この老婆を紐帯にして結びつくのである。

写真はイメージです。©アフロ

映画秘宝は、『怪談新耳袋』十年ぶりの新作となった『怪談新耳袋 暗黒』〔2023年〕の放送に際して、note においてこのシリーズを以下のように総括した。

『怪談新耳袋』は、かつてのオリジナルビデオ作品が若手監督たちの表現の場、演出のアイディアを試す実験の場であったのと同じように、Jホラーを縦にも横にも広げる場としての役割を果たしていた。

新たなJホラーの「実験場」は、オリジナルビデオでなく公共の電波に乗るテレビ番組として成し遂げられたのである。

Jホラーの核心: 女性、フェイク、呪いのビデオ (ハヤカワ新書)

定価 1,210円(税込)
早川書房

文=鈴木潤

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