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ストレスを脱ぎ捨てる。人気脳科学者の年末リセット案内【ヴォーグなお悩み外来】

  • 2025.12.27

ストレスは“脳のゴミ”。考える力を奪っていく

脳には、あらゆる情報を処理しながら保持するワーキングメモリーのような仕組みがある。パソコンのメモリー領域を思い浮かべるとイメージしやすいと、脳科学者の西剛志先生は話す。

このワーキングメモリーの容量には個人差があるものの、それ以上に重要なのが「ストレスをどれだけ溜めないか」。ストレスが増えるほど脳の処理領域は圧迫され、本来のパフォーマンスが発揮しにくくなる。

「ストレスは、いわば“脳のゴミ”。溜まっていくほどワーキングメモリーが散らかり、使える可動域が狭くなるため、判断力や集中力の低下につながります」

たとえば、気がかりなことがひとつあるだけで、頭の中で同じ考えがぐるぐるとリピートされ、目の前の仕事に集中できない――。そんな経験は誰にでもあるはず。ストレスとは、私たちのワーキングメモリーを奪っていく“見えない負荷”なのだ。

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なぜストレスで人は冷静さを失うのか?

では、ストレスがかかったとき、脳の中では何が起きているのだろう? 西先生は次のように説明する。

1.まず、ストレスを感じると、不安や恐れに敏感な“警報ボタン”の役割を持つ脳の扁桃体が反応。

2.この反応によって、脳の「快」「安心」「安定」に関わるいわゆる“幸せホルモン”(ドーパミン・オキシトシン・セロトニン)が出にくくなる。

3.代わりに、ノルアドレナリンやコルチゾールなどのストレスホルモンが優勢になる。

4.ストレスホルモンが増えると、冷静な判断や思考をつかさどる前頭葉の働きが弱まり、仕事の効率が落ちたり、判断ミスが起きやすくなる。

「株が暴落して投資がうまくいかないと、逆にリスクの高い行動に踏み切ってしまう人がいますよね。あれはストレスによって前頭葉の働きが落ち、冷静な判断ができなくなった典型的な例です。また、前頭葉は感情のコントロールにも関わっていますから、ストレスが溜まって部下のちょっとした行動に過剰にイライラしてしまう、というのも同じメカニズムです」

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精神的ダメージほど、脳に残ってしまう

塵も積もれば山となる。家のゴミを放置すれば増えていくように、ストレスもまた蓄積していくというから厄介だ。

「ストレスが溜まる」という表現は比喩ではなく、実際に脳内でその影響が積み重なっていくのだそうだ。しかも、腰や肩の痛みといった物理的ストレスより、誰かのひと言に傷つくような精神的ストレスのほうが、はるかに残りやすいというのが興味深い。

「マウスに5日間、痛みなどの物理的ストレスを与えた場合と、母親から引き離すといった精神的ストレスを与えた場合を比較した実験があります。物理的ストレスは刺激をやめて5日後には脳の反応が完全に消えました。しかし精神的ストレスは、刺激をやめているにもかかわらず5日後にむしろ増幅していたんです」

職場で心ないひと言を受け、帰宅しても、週末になっても気持ちが晴れないどころか悪化していく…。そんな経験は誰にでもあるだろう。これこそが、”精神的ストレスの増幅”だ。

こうした精神的な負担が積み重なると、さらに深刻な変化を引き起こすことがあるという。

「心のダメージが長く続くと、脳の働きそのものが低下します。さらに強い状態が続けば、記憶をつかさどる海馬が萎縮することもわかっているんです」

最近「昔のように覚えられない」「ちょっとしたことをすぐ忘れてしまう」と感じるなら、それは年齢のせいではなく、精神的ストレスが影響しているのかもしれない。

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脳の大掃除は、未来の“若さ”を守る鍵に

ストレスは、実は将来の認知症リスクにも影響することがわかっている。

38歳・46歳・50歳・56歳の女性777名を50年にわたって追跡した研究では、中年期に心理的な負担を感じやすい女性ほど、75歳までに認知症を発症する割合が高かったという。

「心に負荷がかかると、血管が収縮し、脳の中でごく小さな“隠れ脳梗塞”のような変化が起こることがあります。痛みがないため本人は気づけませんが、こうした微細な変化が積み重なると、認知機能に影響する可能性があるんです。また、ストレスは睡眠の質を下げることも多く、これも認知症リスクを押し上げる要因になります」

つまり、日々のストレスをきちんと解消しておくことは、将来の脳の健康を守るうえで欠かせないということ。脳の大掃除は、未来の“若さ”を支える投資でもあるのだ。

では、どうすればストレスを一掃できるのか。後半では、その具体的な方法をご紹介!

西剛志先生

脳科学者(工学博士)、分子生物学者。東京工業大学大学院生命情報専攻修了。博士号を取得後、特許庁などを経て、うまくいく人とそうでない人の違いを研究する会社を設立。脳科学者の観点から悔いのない充実した人生のあり方を提案している。20万部のベストセラーになった『80歳でも脳が老化しない人がやっていること』(アスコム)の他、『脳科学でわかった仕事のストレスをなくす本』(アスコム)など近著多数。

Photo: getty images Text: Kyoko Takahashi Editor: Kyoko Muramatsu

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