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人気作だけじゃない! オリジナルから怪作まで大豊作だった<2025年アニメ>

  • 2025.12.27
『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』Xのスクリーンショット width=
『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』Xのスクリーンショット

300を超える膨大なアニメ作品が登場した2025年も間もなく終了。人気シリーズの続編、注目の新作、隠れた良作などさまざまなアニメが登場したが、視聴者の心を打ったのはどんな作品なのか、四半期に分けて振り返る。

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■オリジナルに注目集まる1月期

1月期は『薬屋のひとりごと』第2期、『Dr.STONE SCIENCE FUTURE』、『チ。 ―地球の運動について―』第2クール、『わたしの幸せな結婚』第二期、『異修羅』第2期、『キン肉マン 完璧超人始祖編』Season2が放送。また、『SAKAMOTO DAYS』、『メダリスト』、『ババンババンバンバンパイア』など、アニメ化が望まれていた話題作も放送された。

そんな中、放送スタート後に大きな話題を集めたのがMAPPA制作のオリジナルアニメ『全修。』。好きなアニメ作品の世界に転生した人気アニメ監督・広瀬ナツ子が具現化させる絵が、実際のアニメ作品をオマージュしており、第1話から『風の谷のナウシカ』の巨神兵を彷彿とさせる怪物が大量の敵を薙(な)ぎ払った。その後も板野サーカス、タイガーマスク、うたの☆プリンスさまっ♪、美少女戦士セーラームーン、天元突破グレンラガン、ドカベンなど、ギリギリまで攻めながらも原作愛を感じる描写が素晴らしく、人気作の続編や話題作が多い冬アニメで覇権候補に推す声も多い。

■庵野&鶴巻ガンダム強し! 混戦の4月期

脚本・庵野秀明と監督・鶴巻和哉が全く新しい『機動戦士ガンダム』の世界を描きだす『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』が各話大きな反響を呼んだ。若々しいシャリア・ブル、ガンダムでコクピット一点突きを成功させるシャアなど、正史を知っていれば困惑するようなメタ情報を視聴者への伏線として次々と投下し、終盤でその謎を明かした。

メカニックは『新世紀エヴァンゲリオン』の山下いくとがデザインし、金世俊がメカニカル総作画監督を務めた。モビルスーツ、モビルアーマーは、ジムのようなゲルググやブラウ・ブロにしか見えないキケロガなど、作中の設定を反映した機体が次々と登場。思い切ったデザインの中に“らしさ”もあり、美しいシルエットや戦闘アクションに次第に魅了されていく。6基のビットを飛ばす赤いガンダム、三本足のドム、白いギャンらGQuuuuuuX製モビルスーツ・モビルアーマーが作中で躍動する姿は抜群にカッコいい。

『カウボーイビバップ』を手掛けた渡辺信一郎が原作・監督を担当する『LAZARUS ラザロ』も話題を呼んだ。制作はMAPPA、アクションシーン監修のチャド・スタエルスキ、音楽のカマシ・ワシントンらを起用。声優では『カウボーイビバップ』でメインキャラクターを演じた林原めぐみと山寺宏一が出演しているのがうれしい。とはいえ『カウボーイビバップ』に引っ張られた内容ではなく、全く新しいエンターテインメント作品として目にも耳にも楽しい仕上がりとなっている。

これまで以上にスポ根路線に振り切った『ウマ娘 シンデレラグレイ』第1クール、ディストピア×ホテルという変わった設定を美しく描いた『アポカリプスホテル』をはじめ、『黒執事 ‐緑の魔女編‐』、『ウィッチウォッチ』、『真・侍伝 YAIBA』、『ヴィジランテ‐僕のヒーローアカデミア ILLEGALS‐』など、人気作・有名作の続編、新作、スピンオフがひしめく中で、『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』と『LAZARUS ラザロ』が強く印象に残る4月期となった。

■令和の価値観に苦戦? 表現に苦しむ7月期

7月期は1月に放送された『Dr.STONE SCIENCE FUTURE』、『SAKAMOTO DAYS』Season1の第2クールがスタート。『怪獣8号 第2期』、『不滅のあなたへ』Season3など人気作の続編に加え、『光が死んだ夏』、『薫る花は凛と咲く』、『クレバテス‐魔獣の王と赤子と屍の勇者‐』など高い評価を得る新作も複数登場した。

一方で、昭和、平成からの価値観の変化に苦戦を強いられる作品も。山口勝平、林原めぐみら平成版アニメのキャストが出演する『らんま1/2』は、作風でもあるお色気表現が難しくなり、第2期で登場した色欲の権化・八宝斉の言動も賛否を呼んだ。下品でクズなブラックジョークが特色の『おそ松さん』も、第4期では時勢を考慮して表現に気を遣ったようにも見える。また『ダンダダン』第2期は、第1期に引き続きオカルンが“金の玉”を取り返すため奮闘する様子を描いたが、こちらは下ネタを感じさせないほどの圧倒的コミカル表現で乗り切った印象が強い。

そんな時勢で、過激な表現にフィルターをかけることなく悲劇を描いた配信アニメ『タコピーの原罪』は、世界の“つらい”“苦しい”“悲しい”を全て集めて煮込んだような物語を生々しく表現。特に追い込まれて絶望する子供の表情は正視に絶えない。各話の視聴に覚悟を要するほど疲れるが、一度見始めたら続きを見ずにはいられない魔性の作品だ。

■本命『ヒロアカ』に対抗するのは…怪作が登場した10月期

10月期は、王道ヒーローアニメ『僕のヒーローアカデミア FINAL SEASON』が大団円を迎え、圧倒的な高評価を得た。2016年のSEASON1から続く敵<ヴィラン>との戦いの中でヒーローの有り様と向き合い、苦悩し、成長するデクたちを描き切った。

さらに『キングダム』第6シリーズ、『SPY×FAMILY』Season 3、『ウマ娘 シンデレラグレイ』第2クール、『ワンパンマン』第3期と覇権を狙うビッグタイトルが集う中、狂気と笑いの異端作『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』が登場。本命『ヒロアカ』に勝るとも劣らないインパクトで視聴者の度肝を抜いた。

主人公は、子供の頃から憧れた仮面ライダーになれないまま40歳を迎えた東島丹三郎。これだけでも強烈だが、V3を体現するために生きる島村一葉、電波人間タックルを目指す岡田ユリコなど、狂人の元に狂人が集って生まれたコミュニティの前に本物のショッカーまで現れたことで東島の夢が叶ってしまう。仮面ライダーのお面を付けた中年男性がうれし涙を流しながら暴力を振るうという狂った構図が完成する。

「俺のは“ごっこ”じゃないから…“本気”だから!」と泣きながら鍛え抜かれた体で他人を殴り、また本物のショッカーが登場したときは「俺を受け止めてくれ」と歓喜にむせびながらライダーパンチを放つなど、度を越した奇行を繰り返す東島。どう考えてもおかしい。しかしパンチの際の「ライダアァァ…」や一葉の変身ポーズ「ブイスリャー」など、本人かと耳を疑う声優陣の熱演は、脳から危ないオジサンという情報が消し飛ぶほどカッコよく感じる瞬間もある。

さらに“仮面の下で涙を流す”という原作のメタ情報、上半身をユラリと横移動させる変身ポーズ、仮面を被ると半不死身になる東島のメンタルとフィジカルなど、現実では不可能なものも含めて「仮面ライダーが好きならそうなる」という原作ファンの気持ちを登場人物がきっちり代弁。アクションの作画も極めて高水準で、仮面ライダーの魅力、ひいては作品の魅力を伝えるため「このシーンは絶対にこう見せたい」という気概が随所で感じられる。狂気と笑いとあふれんばかりのライダー愛を伝える技術が恐ろしく高い。

常軌を逸した中年たちに心を奪われる瞬間が頻繁に訪れるので自分の感性がおかしくなったのではないかと不安になってしまうが、視聴後は“仮面ライダーを愛しすぎた”キャラクターたちのファンになってしまう傑作だ。

■「少年ジャンプ」作品の活躍目立つアニメ映画

アニメ映画は、7月18日に『鬼滅の刃』シリーズ最新作『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』が公開。日本映画史上初となる全世界興行収入1000億円を突破した。9月12日からは北米でも公開され、歴代No.1となる日本アニメ映画オープニング記録「観客動員600万8511人、興行収入7060万ドル(約102億3700万円/1ドル=145円換算)」を達成。26年ぶりに記録を更新した。

9月19日からは藤本タツキ原作のテレビアニメ『チェンソーマン』に続く劇場版『チェンソーマン レゼ篇』が公開。全国週末映画動員ランキングで7週連続首位を獲得、12月22日までに興行収入98億円を突破した。さらに10月24日から公開された全米でも、『鬼滅の刃』に続き初登場1位スタートを切る快挙を達成した。

ここで紹介した作品だけでも30作を超えるが、それでも全体の10分の1程度。ほかにも多くの名作が誕生した2025年、年末年始に自分の中の覇権作や良作を振り返ってみてはいかがだろうか。(文:二タ子一)

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