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【体験談】「合わない場所から離脱するのはチャンス!」55歳で社会福祉士の資格を取得して

  • 2025.12.27

50代から新しい一歩を踏み出して、第二の人生を歩み始めた人たちを追う「わたしリスタート」。昼スナック「ひきだし」を営み、ミドル世代のキャリア支援のプロでもある紫乃ママこと木下紫乃さんの、軽やかにチャレンジするコツとは?

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あなたの“リスタートのヒント”が、きっと見つかるはず。
 → 他のエピソードも読む!(毎月更新)

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木下紫乃さんのリスタート・ストーリー

東京・赤坂で、週に一度開催される昼スナック「スナックひきだし」のママとして、多くのミドルシニア世代のよりどころになっている木下紫乃さん。

慶應義塾大学卒業後に入社したリクルートを筆頭に、これまで5回の転職を経て、47歳で大学院を修了し、2016年にミドルシニア世代のキャリア再構築を支援する会社「ヒキダシ」を設立。企業などでキャリアコーチングをするかたわら、週に一度スナックに立ち続けている。

『昼スナックママが教える 45歳からの「やりたくないこと」をやめる勇気』、『「会社を辞めて幸せな人」が辞める前に考えていること』など著書も話題に。

また、プライベートでは2度の結婚・離婚の後、“3度目の正直婚”。さらに、55歳で社会福祉士の資格を取得するなど、チャレンジの連続で人生を紆余曲折しながら進む木下さんに輝きの秘訣を聞いた。

会社員を離脱したい……試行錯誤を繰り返して

――50代に限らず、若い頃からたくさんのチャレンジをしていますが、きっかけは?

そこまで大志を持って、とかではないんです……。

起業まで転職を5回繰り返したのは、意識高くチャレンジしたいとか、キャリアの軸があって目指すものがあったわけではなくて、ただ生き方を変えたかったから。

社会人の出発点になったリクルートでは7年ほど働きましたが、体を壊して辞めることに。でも、食べていかないといけないですから、その後は友人の紹介で、未経験の仕事でも挑戦し、一度目の結婚で駐妻になって海外移住して、出戻ってまた日本で仕事を探して……。

面白そうだからと飛び込んでみても、だんだん飽きてきたり、嫌になったりする。それでも生活費を稼ぐ必要はあります。その逃げ道をサバイバル的に探すことを繰り返し、その時々で自分にとって居心地のいい居場所探しをしてきた感覚です。

「あ、違うな」と思ったら居場所を変えることを癖のようにしてきて、今に至るというか。

結局、私は毎日同じ場所に行き、同じ人に会うのがじきにつまらなくってしまうのね。だから、会社員から離脱できる方法を模索するようになりました。その方法をチャレンジと言っていいのかしら。転職も、大学院に進学したことも、嫌だと思う環境から逃げてきたの。でもその中で新しい分野の人とつながりができたし、新しい価値観とも出合えて、大きな刺激になりました。

――チャレンジやリスタートするときの決断ポイントは?

新しい出会いがある、面白そうな方を選ぶ。

仕事であれば、お金をより多くもらえることももちろん大事ですが、同じ条件なら私は面白そうな方を選びます。あるいは少々条件が悪くても、 新しいつながりが増える仕事を選びます。

これは会社員だった頃から変わっていなくて、そこが自分がハッピーになるポイントなんです。ブレない軸があったからこそ、お金のためや世間体のため、といった我慢はしてきませんでした。

自分の人生の面倒を見られるのは自分だけ。失敗してもお金はまた稼げばいいと言い聞かせて。自分が幸せでいられることが一番です。

合わない場所から離脱するのは「チャンス」

合わない場所から離脱するのは「チャンス」
木下さんの著書。左/『「会社を辞めて幸せな人」が辞める前に考えていること』、右/『昼スナックママが教える 45歳からの「やりたくないこと」を辞める勇気』

――会社員時代、「評価されてない」「辞めたい」と感じるのはどんなときでしたか?

「合わないかも」と思うのは、会社や上司、時に仕事をいただく企業の方との価値観が違うことが続くとき。自分が「大事にされていない」「合わないな」と感じたら、離脱するのがお互いのためにもいいと思います。

――自信をなくしたり不安を感じたりする状況から抜け出すための特効薬は?

やはり人と会うことで元気がもらえますね。

考え込むと落ちるタイプなので、やばい!と思ったらすぐに人と会うようにしています。こんなときはこの人、とテーマごとにメンターがいて、問題に応じて「背中を押してください!」「落ち込んでるので元気を注入してください!」とはっきりお願いするようにしています。

――「あの過去があるから今がある」と思えることは?

今までのすべて。

離婚や転職を含め、忙しすぎて体を壊したり、会社や上司とうまくいかなかったり、思っていたのと違う結果になったり、うまくいかなかったことは特に。変化の直前は、必ず何か思うことがある。だから変化するわけで、その都度、自分はどんなことを考えて決断したかな?と振り返ると、改めて自分が大事にする指針が見えてきました。

――ミスから学んで成功につながったことはある?

やらかしちゃったことも含めて生きること自体が学びなので、毎日が学びの連続よ。

――あなたの座右の銘は?

人生はネタづくり!

長く生きていれば、そりゃ思い出したくない失敗もたくさんあります。でも、そんな感情に支配されているだけでは悔しいじゃない。嫌なことがあっても、「またネタになる!」「3年後には笑い話になる」と思えば乗り越えられる。いろんな人が経験の数だけネタを持っているし、なにより人が話す失敗談やそこからの立ち直りの話って聞いていて面白いものでしょ。

だから私も失敗したり、嫌なことがあってもネタが増えたらと思って、惜しみなく人に話すようにしています。それが誰かの背中を押すこともあると信じてる。

安定?挑戦?幸せのハードルは下げておく

安定?挑戦?幸せのハードルは下げておく

――安定を求めるか、挑戦するか、迷ったことは?

今までずっと、安定したことがないというのもあるけれど、その迷いはないかな……。

今の場所が「合わない」と感じているのに、そこを「安定しているから」という理由で選び続けることが私にはできない。

45歳で大学院進学を決めたときも、10年近く勤めていた会社でしたが、行き詰まっていて何か自分の環境を変えたいと思って一歩踏み出しました。いきなりノープランで退職するのは確かに不安だし、危なかしいけれど、何もしなければ何も変わらない。だからまずは会社にいたまま大学院に入ったんです。

違和感を蓋したままにせず、何か次のプランを考えて行動してみる。そのうち、次のやりたいことが見えてきたら、決断する。

いきなりゼロか100かみたいな決断をすることだけがチャレンジではないと思うし、新しい事を知った結果、やっぱり今の状態を続けようと決めてやり続けることだってチャレンジだと思うんです。

それに「次の転職でこそ安定して勤めたい」という人もいますが、それは残念ながら難しいかもね。社会も、会社も変わっていくんだもの。働き方が大きく様変わりしている今だからこそ、変化を楽しめる力を付けて、不安定さの波に軽やかに乗れることが大事だと思います。

それから幸せのハードルを調節するスキルも必要。

「寒い夜、おでんを食べるだけで幸せ」など、いかに日常の些細なことを楽しめるか。たとえ今日は元気でも、明日大病の宣告をされるかもしれません。実際にスナックのお客さんにもそういう方がいらっしゃいました。この先予想もつかないような事態におかれても、いかようにも楽しめるサバイバル術を身に付けることが大事だと感じています。

――パートナーに助けを求めることは?また、結婚生活の秘訣は?

もちろん、意見をもらいたいときは相談しますが、私は基本的にはあまりパートナーと長い時間一緒にいない方がいいと思っています。なにしろ、揉めやすくなりますから(笑)。それぞれに自分の世界があって自立した上で、二人の接点を楽しめるのが理想です。

――軽やかに生きるために必要なことは?

自分の価値観に凝り固まらず、新しい事や出会いをどんどん取り入れて、別の考え方や生き方を注入すること。狭い世界がすべてだと「今の会社で出世できないなんてこの世の終わり」などと思い詰めてしまうことに。そうなると苦しいですよね。

よく起業したいけれどハードルが高いとずっと迷っている人がいるけれど、そもそも最初から成功する確率の方が低いのだから、チャレンジしてみてダメだったらまた会社員に戻ればいいと思う。私だっていまだにそう思っていますよ。スナックにお客さんが来なくなったら、アルバイトでも契約社員でもいいからまた雇われる生活に戻ろうって思ってます(笑)

わたしリスタート:木下紫乃さん
子どもたちが大人からのお悩みに答えてくれる、年に一度の「夏休みノンアル子どもスナック」。売り上げは難病や生きづらさを抱える子供の支援団体などに寄付している

人生後半からは、社会に貢献できることをしたい

――55歳のときに「社会福祉士」の資格を取得した理由は?

スナックに来るお客さんの中には、親の介護をしていたり、福祉関係の仕事をしている人もいて。いろんな話を聞くうちに、興味が湧いたし、自分に知見があったらもう少し的確な手助けができるんじゃないか、と思ったんです。

それで、広く福祉について学べそうな社会福祉士の資格を目指すことにして、大学に1年半ほど通い、勉強しました。

――取得した資格はどのように生かしていますか?

私の場合、社会福祉士として働こうと思って資格を取ったわけではないんです。

お客様からの相談にも少し具体的なアドバイスができるようになったり、作業所や福祉関係のイベントに参加したり、これまでの経験にプラスしてどう生かしていけるのか、模索しているところです。

先日、障がい者の方は作業所と家の往復だけになりがちだとの話をお聞きして、福祉施設で出張スナックを開店させてもらいました。障がいがある人も、そうでない人もごちゃまぜでお酒飲んだり話したり楽しかった。誰だって、気兼ねなく話せる息抜きの場は必要よね。お客さまのうれしそうな顔を見て、また開催できたらなと思っています。

人生後半からは、社会に貢献できることをしたい
日本社会事業大学という福祉専門の大学で学んだ木下さん。「50代を過ぎると目が疲れやすくて……勉強は1日も早く始めた方がいいですよ」

――いろいろなチャレンジをして得た最大の教訓は?

時間を戻すことはできないのだから、悩んでいる暇があったら、小さな一歩でいいから今すぐ始めよう。

私自身、思い切ってやってみたら「こんなに面白いならもっと早くやっておけばよかった!」と思うことの方が多かったです。それに人生は何をやっても成功か学びしかない。失敗なんてありませんから。

チャレンジし続けてきた人生というより嫌なことを逃げ続けてきた人生、人に対しては恥ずかしいことしかありませんが、自分に対してはがんばって生きてきたから、それだけで偉いなと思うようにしています(笑)

――世の中にもっとあってほしいものは?また、逆に減ってほしいものは?

もっと老若男女みんなが話せるスナックがあるといいなと思っています。

減ってほしいものは、我慢する人や我慢させる環境。

――あなたにとって幸せ・充実した人生とは?

次にやること、行く場所を主体的かつ自由に選べる状態にあること。

この先、年を重ねると体も不自由になったり活動の幅が狭くなることを思うと、そのときに自分がどんなふうに生きていくかは今後の課題ですね。

人生後半からは、社会に貢献できることをしたい
東京・赤坂見附の雑居ビルにある「スナックひきだし」。ママは日替わり。紫乃ママは毎週木曜が出勤日

50代のリスタートに必要な3つの備え

何かを新しく始めるのも、現状維持しながら変えていくのも、どちらもチャレンジ。気軽に話をしたり相談したいときは、どうぞ「スナックひきだし」にも遊びにきてくださいね。

1.メンターになる人

一人でネガティブモードに入ると抜け出せなくなるので、状況や問題にあったメンター(指導者、助言者)になる人が数人いると安心。そのためにも、学校や会社など1か所に留まらず、いろんな人と出会い、少し勇気を出して自分の興味のあることや悩みを話してみて。

2.自分自身の棚卸し

最後の転職でお世話になった転職エージェントの女性から、転々と職を変える私に「あなたの強みは速習力ね」と言われたとき、目からウロコが落ちました。一見、短所に見えたり、何の取り柄もないと思っている人でも必ずその人らしい強みがあるもの。棚卸しして、客観的に見るときっと見つかる。周りの誰かに聞くのもありね。

3.嫌なことをやめる

一つでもいいから、嫌なことをやめてみましょう。そのためには、何が嫌で、どんな状態が幸せなのか、自分を知ることから始まります。そうやってブレない自分の軸、ハッピーポイントを自分で知っていないと、決断もチャレンジもできなくなってしまうから。

※HALMEK upの人気記事を再編集したものです。

取材・文=庄司真美 写真=日高奈々子 企画・構成=長倉志乃(HALMEK up編集部)

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