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帰省時、電車遅延し飛行機に乗り遅れた…鉄道会社に“賠償請求”できる?弁護士に聞く

  • 2025.12.27
帰省時や旅行時に電車が遅延し、飛行機に乗り遅れたら鉄道会社に賠償請求できる?(画像はイメージ)
帰省時や旅行時に電車が遅延し、飛行機に乗り遅れたら鉄道会社に賠償請求できる?(画像はイメージ)

年末年始に帰省や旅行の際に飛行機を利用する人は多いと思います。空港まで移動する際に電車がよく使われますが、移動時に電車が人身事故や車両故障などで運転を見合わせたり、遅延したりして飛行機に乗り遅れてしまうケースがあります。この場合、鉄道会社に賠償を請求することは可能なのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

鉄道会社の規則の規定上賠償請求は困難

Q.飛行機に乗る予定があり、空港まで電車で移動するとします。移動中、人身事故や車両故障などにより電車が運転を見合わせたり、遅延したりした結果、飛行機に乗り遅れてしまった場合、鉄道会社に賠償を請求できるのでしょうか。

牧野さん「電車の遅延で飛行機に乗り遅れた場合、鉄道会社に損害賠償請求することは、非常に難しいです。鉄道会社は『運送約款』を規定しており、時刻表の到着保証をしておらず、遅延は『鉄道利用につきもの』とみなされ、2時間以上遅延など一定の範囲での払い戻しにとどまり、搭乗便変更に伴い、新たに支払わなければならなくなった航空機のチケット代や手数料のほか、商談の機会損失などの逸失利益は鉄道会社の損害賠償責任の範囲外とされています。

まず遅延による鉄道会社に対する損害賠償請求については、鉄道会社と乗客との間に旅客運送契約が成立しており、鉄道会社の旅客営業規則などの『運送約款』が適用されます。

列車遅延による損害賠償について、JR東日本の『旅客営業規則』では、『列車が運行時刻より遅延し、そのため接続駅で接続予定の列車の出発時刻から1時間以上にわたって目的地に出発する列車に接続を欠いたときまたは着駅到着時刻に2時間以上遅延したとき』には、乗客は、乗車券の有効期間の延長や旅客運賃の払い戻しが請求できる規定があります。

そのため、旅客営業規則に従えば、1時間以上の列車接続を欠いたか、着駅到着時刻に2時間以上遅延した場合であれば、乗客は乗車券の有効期間の延長や旅客運賃の払い戻しを請求できる規定になっていますが、その時間に満たない遅延については、旅客営業規則では、有効期間の延長や旅客運賃の払い戻しを請求できないことになります」

Q.では、電車の運転見合わせや遅延の理由が運転士のミスなど、鉄道会社側に起因する場合はいかがでしょうか。この場合、鉄道会社に賠償を請求できるのでしょうか。

牧野さん「鉄道会社の運送約款で、鉄道会社側の損害賠償責任の上限金額などが規定されていない場合には、先述の時間数に満たない遅延の場合でも、利用者が損害賠償請求できないというわけではありません。鉄道会社側の過失が原因で遅延した場合には、旅客運送契約違反や民法の不法行為を根拠に、電車遅延により飛行機の搭乗に間に合わなかった結果、航空機のチケット代や手数料など、新たに支払わなければならなくなった費用の賠償を請求することは可能です。

しかし、損害賠償を請求するためには、『遅延がなければ確実に飛行機に乗れて損失がなかった=遅延が原因で損害が発生した』という因果関係を証明する必要がありますが、通常は非常に難しいでしょう。さらに代替交通手段を利用するなどで損害を回避できた場合には、鉄道会社に損害賠償を請求するのは難しいと考えます。

また鉄道会社の運送約款で、損害賠償責任の上限金額が規定されている場合、その上限金額を超えて損害賠償請求するには、鉄道会社側の過失よりハードルが高い立証責任が課される『重過失』(故意に近い重大な過失)を証明しなければなりません」

Q.ちなみに電車の運転見合わせや遅延が原因で飛行機に乗り遅れた場合、航空会社から何らかの補償を受けることは可能なのでしょうか。

牧野さん「先述の通り、鉄道会社は責任を負わない場合が多いですし、さらに航空会社は、顧客が飛行機に乗り遅れた原因に対して何ら責任を負わないため、基本的には、顧客は自身で飛行機に乗り遅れた結果発生したリスクを自身で負うことになります。日本航空のホームページでは、『諸費用の負担について』として、『天候など弊社の管理のおよばない理由による遅延、欠航における費用は、お客さまのご負担とさせていただきます』と規定しています。

一方、『弊社に起因する理由によって、当日の遅延、欠航が発生し、到着予定日に最終目的地に到着できない場合には、宿泊費・交通費を負担いたします』『本対応はご搭乗日当日に遅延・欠航が発生した場合を対象としており、ご搭乗予定日前日までにスケジュール変更や欠航が決定している便は対象とはなりません。なお、日付をまたぐ深夜便も、ご搭乗日当日とみなします』という記載があるため、航空会社側の過失に起因する理由で損害を被った場合には、補償を受けられる可能性があります。

クレジットカード付帯の航空機遅延保険が適用されるかどうかも確認する価値があります。クレジットカード付帯の航空機遅延保険が適用される場合には、例えば6時間以上の遅延で食事代、宿泊費などが補償される航空機遅延保険が付保されている場合があります。鉄道会社や航空会社に損害賠償責任がない場合は、保険による請求を検討するために、領収書は必ず保管しておくべきです」

オトナンサー編集部

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