「元カノはもっと優しかったけどな」と比較する彼氏。だが、私の正論をうけ態度が一変【短編小説】

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

元カノと比べる彼

彼と付き合って半年が過ぎた頃、私にはどうしても許せない彼の悪い癖がありました。
それは、事あるごとに「元カノ」を引き合いに出して私と比較することです。
彼は悪気がないのかもしれませんが、言われる側としてはたまったものではありません。

ある週末、彼のために手料理を振る舞ったときのことです。
彼が好きなハンバーグを、隠し味まで調べて一生懸命作りました。
「美味しい」と言ってもらえるのを期待して出したのですが、一口食べた彼は、あろうことかため息交じりにこう言いました。

「うまいけどさ……元カノの味付けはもっとこう、深みがあったんだよな。あいつは俺の好みを完璧に分かってくれてたし、何より俺に対して元カノはもっと優しかったけどな」

その瞬間、私の中で我慢の糸がプツンと切れました。
せっかくの努力を過去の恋人と比較され、否定されたような気持ちになったのです。
今までなら苦笑いで流していた私ですが、この日ばかりは違いました。
ここで怒鳴ったり泣いたりするのは簡単ですが、それでは彼の記憶に「ヒステリックな女」として残るだけです。
私はとっさに、感情よりも冷徹な「論理」で戦うことにしました。

私が突きつけた正論

私は静かに箸を置き、彼の目をじっと見つめて、あくまで冷静に、そして穏やかに微笑みかけました。

「ねえ、そんなに優しくて、料理も上手で、あなたにとって完璧な彼女だったなら、どうして別れたの？」

彼は虚をつかれたように「え？」と固まりました。私は間髪入れずにたたみかけます。

「『元カノ』ってことは、何かしらの理由があって二人の関係は終わったってことだよね。もし本当に彼女があなたにとって運命の相手で、最高の人だったなら、今も一緒にいるはずじゃない？でも、今あなたの目の前にいるのは私。それとも、私を選んだのは間違いだったって言いたいの？」

正論すぎる指摘に、彼は何も言い返せない様子でした。
過去を美化している自分自身の矛盾に気づいたのか、顔を真っ赤にして俯いてしまいました。
そして数秒の沈黙の後、彼は「……ごめん、俺が悪かった。今の発言は最低だった」と素直に謝ってきました。

それ以来、彼が元カノの話をすることは一切なくなりました。
今では比較することなく、私の手料理を「美味しい」と感謝して食べてくれます。
時には感情的になるより、冷静な一言が二人の関係を救うこともあるのだと学んだ出来事でした。

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