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あの、ファンの方から求められることは「一方通行じゃない」使命感を感じる自身の活動について語る

  • 2025.12.26

アイドルからソロアーティストに転身し、音楽活動だけでなく俳優業やバラエティ番組出演などジャンルの垣根を越えた活躍でエンターテインメントの最前線を走り続ける、あのさん。アーティスト活動5周年を迎えた今年、自身の幼少期から近年までの自身の体験や感じたことを書き下ろした、初の著書『哲学なんていらない哲学』を出版した。哲学という切り口で、自身にとって「当たり前」のことをあえて本にしたというあのさんに、本書に込めた思いや自身の変化についてなどを聞いた。

著書『哲学なんていらない哲学』を書き下ろしたあのさん
著書『哲学なんていらない哲学』を書き下ろしたあのさん

初めて挑戦した“言葉だけの世界”

──今回、本を出すことになったいきさつを教えてください。

【あの】これまでに数えるくらいしか本を読んだことがなくて、本を書きたいと思ったこともなかったのに、初めて「書きたい」って思ったんです。そんな自分の感情が全部一瞬で過ぎ去っていくのもわかっていたから、書きたいと思った今、書いておこうみたいな感じでした。

壮大なことじゃなくて、本当にどうでもいいって周りから思われるようなことを自分の“初期設定”として書いておきたかったんです。いろいろ聞かれることも、これを読めばわかるでしょって思うし。テレビとか動画だと自分の喋り方、声や容姿にもっていかれて、自分の言葉が言葉として伝わることが少なくて、言葉だけの世界、言葉を閉じ込められる場所が本なのかなって。言葉だけの世界は初めてなので、読まれることにちょっとドキドキもあります。

『哲学なんていらない哲学』書影 発売・発行:株式会社KADOKAWA
『哲学なんていらない哲学』書影 発売・発行:株式会社KADOKAWA

──では、タイトルにはどんな意味を込めたのでしょうか?

【あの】哲学なんてなくても生きていけるでしょって思ってたけど、そういう考えで生きていても気づかないうちに哲学のもとで生きているっていう感覚が自分の中にあって。だから、「哲学なんて」と思っている人に読んでもらえるタイトルにしたかったし、哲学を否定して哲学が生まれるということを経験してわかったので、同じような人が興味をもってくれたらいいなって思います。

文章を書くことは「心が研ぎ澄まされていく感じ」

──初の著書を書き上げてみてのお気持ちはいかがですか?

【あの】写真集とかも、撮ったらどんどん次に行きたい気持ちになるので、今また本を書きたいかと言ったら、もう書きたくないし、読んでほしいかと言ったら、読んでほしくないって思う(笑)。そのくらい、本を書きたいと思った自分の瞬間を詰め込んでいます。

自分にとっては当たり前のことを書いてるから、それが人に伝わっていくことに恥ずかしい気持ちもあります。でもきっと、誰かの当たり前が僕にとって当たり前じゃないってことがあるように、僕の当たり前もみんなにとっての当たり前じゃなかったりしたら、新たな思考とか感情が生まれる可能性もあると思って気持ちを保っていたというか、「そこにちっちゃな可能性があるなら…」という気持ちで書き上げました。

──執筆はどのように進めていったのでしょうか?

【あの】仕事の合間をぬって、夜中にちょこちょこ書いたりとかしました。歌詞も書き始めたら一気に書くタイプで、本もそんな感じでした。ただ、自分の感情とか経験をふまえて、どういうことを吸収してきたのかということを書こうと思ったので、それを文章で表現することが難しいことはありました。

──過去のことを書くときに、すごくつらかったということも書かれていますね。

【あの】過去のことは思い出したくないものがほとんどだったので、それをわざわざ振り返ることが嫌だった。けど、それは自分の人生にはつきものだったから、書けば書くほど、自分がその物事に対してどこまで向き合えてたとか、どこまで許せていたのか、許せていないのかっていうのがけっこうわかりました。

──「曲を書くことは自分にとって救い」だといったことを書かれていますが、文章を書いてみたことで、自身への影響は何かありましたか?

【あの】当たり前なこととか、周りからしたらどうでもいいことを、「どうでもよくない!」って言いたいがために書いたところもあったんです。そういう、これまで持っていた考えを書いていくうちに、自分の考えや思いに気づくことがあったし、それが整理できたことで心が研ぎ澄まされていく感じはありました。

撮影=後藤薫
撮影=後藤薫

──自分らしさについて、「流動的でいい」という内容もありました。この数年とかで性格など、自身の変化を感じていることはありますか?

【あの】自分はけっこうブレないほうかなと思うんですけど、でも昔はあまりにもブレなさすぎるところがあったんです。ブレないことももちろん大事だけど、もっともっと自分を知って、気分が変わるということも受け入れることが、自分らしさに縛られずに一番自分らしくいられるってこの数年で気づけたから、考えのバリエーションが増えたところが一番変わったなと思いました。

── フォトグラファーの松岡一哲さんが撮影を担当していますが、撮影についてのお話や、あのさんが感じる松岡さんの写真の魅力について教えてください。

【あの】今まで何度も撮っていただいて質感とかをすごくわかっていたので、特に希望などは伝えていないんですけど、作り込まずに等身大の自分を写してもらうようにはしていました。ボケてたり、ピントが合っていなかったりする写真もたまにあって、それなのに、僕の輪郭がすごくしっかり見えるような写真を撮ってくれるのが魅力だと思います。柔らかい光の中にも鋭さが宿っている写真家さんです。

撮影=後藤薫
撮影=後藤薫

「自分のためにやっていることが誰かの光に」

──あのさんの楽曲にも通じるところではあると思いますが、この世界に生きづらさを感じている人に手を差し伸べるような本になっているように感じました。「どこかの死にたがりが生きやすくなるかも」という思いで決断されたというエピソードも書かれていましたが、そういう「誰かのために」というような気持ちが生まれたきっかけはありますか?

【あの】ずっと、誰かのためにやろうとはしていなくて、自分が自分のためにやっていることが誰かの光になったりしているっていう感じです。だから、僕のやっていることの道連れのような感じになればいいなっていう感覚ですね。ただ、音楽を作っているうちに、いつの間にかみんなのことを考えることが多くなっていたんです。届くべき人のところに、僕の音楽が届いてほしいという思いがどんどん研ぎ澄まされていった結果、自分のためにやっていたつもりだったけど、誰かのためにやれるような自分もいるんだな、って知ることができたと思います。

撮影=後藤薫
撮影=後藤薫

──ファンの方から求められることに、幸せを感じることはありますか?

【あの】使命感や宿命のようなものという気持ちがすごく強くて…。みんなからもらっているものがある分、自分もあげなきゃなって思う気持ちというか。一方通行じゃないから、幸せとはまたちょっと違う感覚ではありますね。

──では、あのさんの幸せの定義を教えていただきたいです。自分が幸せだと心から思うには何が必要だと思いますか?

【あの】めっちゃざっくり言うと、他人と比べないこと。他人が関与しない、それが恋人や家族だとしても、他の人の存在と関係なく、幸せは自分自身の人生とか生活、日常の中ではかるものだと思います。他人にはかられるものでもないし、他人と比べるものでもなくて、それを全部とっぱらったうえで、自分が楽しいとかうれしいとか思えるものとかが幸せなのかなと思います。

──最後に、12月24日に発売されたことにちなんで、印象的なクリスマスの思い出があれば教えてください。

【あの】クリスマスは誰かに誘われたら遊ぶこともあるけど、ひとりでケーキとチキンを買ってベタなクリスマスを過ごすことがけっこう多いです。特別な日だから、すごく気分が上がるし、イルミネーションを見に、外に出てみたりとかもたまにしたりします。それが本当に楽しいので、逆にすごく印象的なことってあんまり覚えていなくて…。でも、ちっちゃいころにサンタさんからプレゼントと手紙が届いたことがあったんですけど、手紙の誤字がすごく多くて。「急いで書いたのかな…?」って思ったことがあって、それが今も忘れられないですね。

撮影=後藤薫
撮影=後藤薫

撮影=後藤薫

スタイリスト=神田百実

ヘアメイク=夕紀

取材・文=大谷和美

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