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『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』好評の一方で、“マンネリ”の指摘も? 映画館で必見の理由

  • 2025.12.27
『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』の「どの上映方式を選べばいい?」ことから、基本的には好評ながら厳しい意見もある理由、それでも称賛できる理由まで、解説します。(画像出典:(C) 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.)
『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』の「どの上映方式を選べばいい?」ことから、基本的には好評ながら厳しい意見もある理由、それでも称賛できる理由まで、解説します。(画像出典:(C) 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.)

12月19日より劇場公開中の『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』は、公開からわずか3日間で全世界興行収入が3億4500万ドル(約543億円)という超ロケットスタートを切りました。

結論から申し上げれば、本作は映画館で見てこそ「真価」がわかる、年末年始にふさわしい圧巻のエンターテインメントとして大推薦できます。

注意点としては、上映時間が3時間17分と長尺なので直前のトイレが必須ということ。また、3作目であり物語も完全に「続き」であるため前2作の鑑賞が強く推奨されることです。

一方で、後述するように「この要素だけを知っておけば話は十分に理解できるし、本作から初めて『アバター』を観る人でも楽しめるのでは?」と思える理由もあります。

まずは「どの上映方式を選べばいい?」ことから、基本的には好評ながら厳しい意見もある理由、それでも称賛できる理由まで、たっぷりと記していきましょう。

どの上映形式で見るのがおすすめ?

まず、本作は上映方式が非常に多く複雑なため、どれで見るべきか迷う人もいるでしょう。

「・通常上映(+3Dも)
・大画面と迫力の音響の「IMAX」(+3Dも)
・座席の移動などの演出が楽しめる「4DX」(+3Dも)
・画が鮮明かつ音響もパワフルな「Dolby Cinema」(+3Dも)
・特定のシーンが「3画面」に広がる「ScreenX」(4DXと合わせた「ULTRA 4DX」も)(2Dのみ)
(それぞれで「字幕と吹き替え版」でも当然分かれています)」

結論から申し上げれば、究極的にはどの上映方式で見てもいいけれど、可能であれば3D上映を選ぶのがおすすめです。『アバター』シリーズの3Dは「何かが飛び出てくる」というよりも、「世界の奥行き」を表現したものであり、それでこその没入感もあるでしょうから。また、劇場によっては3Dに加えて「HFR(ハイフレームレート)」の上映も実施されています。HFRは通常よりも滑らかな動きの映像を楽しめるため、間違いなく一見の価値がありますが、その「ヌルヌル」とした動きを逆に不自然に感じてしまう人もいるため、やや好みも分かれています。上映劇場のスケジュールで「HFR」または「ハイフレームレート」の表記を確認しておくといいでしょう。

その上で総括するのであれば、「最高の映像と音響」「3D」「HFR」という全ての要素がハイスペックで楽しめる「Dolby Cinema」で鑑賞するのがもっともおすすめです。特に「黒」が映える、コントラストがよりはっきりとするDolby Cinemaでこそ、劇中の夜の暗い場面もより美しく見えるはずです。筆者は時間と場所の関係上、Dolby Cinemaではない「吹き替え+3D+HFR」で見ましたが、それでももちろん存分に楽しめました。最終的には鑑賞料金や移動距離なども踏まえて、総合的に判断して選べばいいでしょう。

基本的には好評。ただしマンネリを指摘する厳しい意見も

そんな『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』の作品評価は、「高いレベルながらやや賛否を呼んでいる」といえます。映画.comでは5点満点中3.8点、Filmarksでは4.0点と十分に好評といえるスコアですが、アメリカの批評サービスのRotten Tomatoesでの批評家支持率は66%に留まっていたりもするのです(いずれも12月下旬)。

特によく見られるのが、「既視感がある」「新鮮味が薄い」といった、マンネリズムを指摘する意見です。確かに全体的な物語の印象は、「先住民と侵略者である人間たちの戦い」「その間にいる主人公が決死の行動をする」「植民地化による資源の搾取や自然破壊への批判」といった「物語の大筋と根幹」がシリーズ3作で共通しています。

それでも2作目の『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』では、1作目とは明確に異なる「海の上の美しい光景と迫力のバトルシーン」と「主人公に家族ができてこそのドラマ」という要素があったため、それほどマンネリズムを感じさせませんでした。

しかし、今回の3作目『ファイヤー・アンド・アッシュ』はその2点が「地続き」な上に、1作目から物語の大筋と根幹は共通しているので、「2作目と(あるいは1作目とも)やっていることはほぼ同じでは?」という不満の声があるのも、致し方がないと思えたのです。

また、ジェームズ・キャメロン監督は1作目の時点から、劇場パンフレットに「見慣れない環境で、見慣れたタイプのアドベンチャーを作り出したいと思った。異星の土地と文化を舞台とした、典型的なストーリー」と言い切っていたりもします。

1作目の公開当時から『風の谷のナウシカ』や『ポカホンタス』や『ダンス・ウィズ・ウルブズ』などの既存の有名な映画との類似性も指摘されていましたし、3作で共通する物語そのものが「よくある」ものであったと思うのです。

キャラクターの成長や関係は「前に進んでいる」

そのように「全体的には典型的な物語」かつ「シリーズで同じことの繰り返し」のような内容への不満が出るのは当然のこと……と思いつつ、その批判をするだけではもったいない、という気持ちも同居しています。

なぜなら、この3作目では、2作目であった出来事を踏まえてキャラクターたちが「前に進んでいる」と思えたからです。大枠ではマンネリを感じたとしても、それぞれの心情や関係性に着目すれば、かなり面白く見られるのではないでしょうか。

(C) 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.
(C) 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

また、ジェームズ・キャメロン監督は「2作目と3作目はもともと1本の映画として公開する予定だったものの、物語が長大になりすぎたため、2作に分割した」と明言しています。その言葉を踏まえて「キャラクターの成長」を物語の軸に置いて考えれば、2作目が「前編」で今回の3作目が「後編」とさえ思えたのです。

ここからは、キャラクターの魅力や成長を振り返ってみましょう。これらを踏まえれば、前2作を見ていない人でも楽しめると思うのです。公式Webサイトにはキャラクター紹介のページもあるため、前2作を見た人であっても設定を忘れてしまっているのであれば、ぜひ一度目を通しておくことをおすすめします。

(C) 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.
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そのほか、固有名詞は「エイワ」が「惑星パンドラの調和を保つ神のような存在」、「スカイ・ピープル」が「人間/地球人」を指すという2点だけ押さえておけば、しっかり物語を飲み込めるでしょう。

※以下、今回の3作目『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』の明確なネタバレは避けたつもりですが、2作目『ウェイ・オブ・ウォーター』および1作目のネタバレに触れています。ご注意ください。

「2人の父親」の間で揺れる「スパイダー」の物語

今回の『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』で、もっとも劇的な変化が訪れるのは、「スパイダー」でしょう。彼は幼い頃に「惑星パンドラ」に取り残された少年で、今では「ナヴィ」族のサリー家に養子として迎えられています。 人間の体のために、惑星パンドラの環境ではマスク着用が必須というハンデを背負っているものの、義理のきょうだいたちとともに楽しく過ごしてきた彼には重大な試練、というよりも「2人の父親」との「対峙」を余儀なくされるのです。

その1人が、海兵隊の人間として絶命したものの、人間とナヴィのハイブリッド戦士として復活した「クオリッチ」。彼は自身を一度殺した主人公の「ジェイク・サリー」への復讐に燃えている一方、自身の息子であるスパイダーへの愛情も垣間見えるという、なかなかに複雑な立ち位置および、心情の持ち主です。 そのジェイク・サリーは人間の体を捨ててナヴィになった元海兵隊員であり、家族を大切にしている一方で、序盤から息子たちの気持ちを顧みない、独善的な言動が疎まれてしまいます。しかも、物語の後半では養子のスパイダーに対して、客観的にはどう考えても許されない、とある決断をしてしまいます。 実の父親のクオリッチと、養子として迎えられた今の父親であるジェイク・サリー。その2人の父親の息子であるスパイダーの物語がどこに行き着くのか……それは前作『ウェイ・オブ・ウォーター』では描ききれなかったことであり、「後編」といえる本作で決着をつける必要があったと思えたのです。

「喪失感」を抱えた家族それぞれの変化

スパイダーのほかにも、サリー家それぞれのキャラクターの変化は、やはり興味深いものになっています。

(C) 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.
(C) 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.



「・ネイティリ:サリー家の母。勇敢な戦士であるが、前作で長男のネテヤムを亡くしたため精神的に病んでもいる。
・ロアク:サリー家の次男。亡くなった兄のネテヤムに複雑な感情を抱いており、行動が猪突猛進で危ういところがある。海のメトカイナ族のリーダーの娘であるツィレアと惹かれあっている。
・キリ:サリー家の養女。亡くなった人間のグレイス博士のアバターから誕生していた。スパイダーと仲良し。」

「兄のネテヤムが亡くなったことが家族に影を落としている」「人間のスパイダーが大切な家族になっている」ことを踏まえれば、それぞれのキャラクターの変化と成長も、より味わい深くなるでしょう。

支配的で妖艶な悪役の「ヴァラン」の魅力

さらに、今回からの新キャラクターとして、アッシュ族のリーダー「ヴァラン」が登場します。彼女は火山の炎で故郷を奪われ、愛する民を失ったというトラウマを持っていたため、人間と手を組み惑星パンドラの支配を目論みます。象徴的なのは、ヴァランがクオリッチから人間の銃器を与えられるシーンです。「先住民に銃を与えること」が「内戦を引き起こす」という、人間の植民地時代の痛烈な風刺そのものに思えます。

そのヴァランを演じたのはチャールズ・チャップリンの孫であるウーナ・チャップリンで、祖父のルックスに似ていることはもとより、獰猛かつ官能的でもあるキャラクターを体現したことを、誰もが称賛するのではないでしょうか。 全体を見渡せば「ジェイク・サリーとクオリッチ(とスパイダー)の因縁」のほうが目立っている印象があるものの、「クオリッチとヴァランの“利害が一致した”以外の理由でも“危険な関係”を匂わせる関係」もまた、興味深く見られると思うのです。

マンネリズムも含めて肯定できる理由も、フレッシュな要素もある

ストーリー面の賛否、あるいは画を含めてのマンネリが指摘される『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』ですが、それでも人類の持てる力を結集したような映像はやはり圧巻。単純に「数字」だけでも、ニュージーランドでの制作スタッフは1500人超。視覚効果の数は3382ショット、ほぼ全てがCGなのに小道具は2000点超が制作されるなど、やはり規格外です。

(C) 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.
(C) 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

家のモニターでは、どうしたって没入感が削がれてしまいますし、3時間超えの時間では必然的に集中力も失われてしまうため、やはり映画館で見る機会を失ってほしくない、と強く思うのです。

また、海の上での決戦などのメインの画には既視感があるものの、空を飛ぶクラゲのような巨大生物の「メデューソイド」のスケール感と美しさ、サブタイトルの「火と灰」が美しく映えるシーン、「新たに参戦してくれる巨大生物」の笑ってしまうほどに豪快かつ痛快な活躍、クライマックスでの「驚きのバトルのシチュエーション」の興奮など、フレッシュな画もしっかり用意されています。

また、前述してきたマンネリを言い換えれば、「『アバター』という作品が持つ面白さが担保されている」「安心して見られる」ということでもあります。それはある種の「様式美」とも言えますし、それを崩さずにシリーズで一貫していることも、実は美点とも言えると思うのです。

(C) 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.
(C) 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

その様式美の中で、前述してきたキャラクターの成長や変化は、間違いなく魅力的に描かれていますし、リアルタイムでシリーズを追えたからこその感動も間違いなくあるでしょう。

次回作からは「新たな物語の始まり」に

また、ジェームズ・キャメロン監督は、「4作目、5作目の構想はある」一方で「『ファイヤー・アンド・アッシュ』でシリーズが一区切り」「3部作としての物語は本作で完結」と明言。「次作が作れるかどうかは本作のヒット次第ですし、もし実現したとしても、それは新たな物語の始まりとなります」とも宣言しています。(海外ドラマNAVIのインタビューより)

無事に『ファイヤー・アンド・アッシュ』は大ヒットスタートとなりましたし、4作目、5作目が作られる可能性は高いでしょう。そして監督自身が「新たな物語の始まりとなります」と宣言しているからこそ、ネガティブな意味でのマンネリも打破した、新たな『アバター』が見られることにも期待しています。

文:ヒナタカ

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