1. トップ
  2. 恋愛
  3. “永続する物語”の魅力――東京コミコンPR大使・伊織もえが語る フランチャイズ映画世界の広がりとは?

“永続する物語”の魅力――東京コミコンPR大使・伊織もえが語る フランチャイズ映画世界の広がりとは?

  • 2025.12.26

ハリー・ポッター、マーベル、スター・ウォーズ——。いまやひとつの映画シリーズが複数の作品群へと広がり、長年にわたり世界中の人々を魅了し続けている“フランチャイズ映画”。その魅力はどこにあるのか。東京コミコンPR大使として3年連続で務め、イベントの現場を誰よりも体感してきた伊織もえさんに、フランチャイズ映画世界の“底なしの魔力”についてじっくり聞いた。

子どもの頃のハリー・ポッターと、大人になってからのハリー・ポッターは「まったく別の作品」

数あるフランチャイズ映画の中でも特に「ハリー・ポッター」のファンだという、伊織もえさん。伊織さんにとってハリー・ポッターとの出会いは、小学生の頃。学校の図書室に置かれていた原作シリーズを手に取ったことや、さらに映画版がテレビで放送されていた時期が重なり、自然と作品の世界へ入り込んでいった。

「でも本当にハマったのは、大人になってからかもしれません。子どもの頃は“魔法があって楽しい世界”という認識だけだったんですよね。でも大人になって見返すと、登場人物の選択や感情に“あ、そういう意味だったんだ”って気づくことが増えて。原作者のJ.K.ローリングさん自身の人生経験や価値観も透けて見えるようになって、物語の深さをもっともっと理解できるようになった気がします」

子どもの頃は何の違和感もなく“主人公”だと思っていたハリーの細かい性格や癖に、大人目線ではっとさせられたり、物語の背景にある社会性に気づいたり——。同じ作品でも、心の成長によってまったく違う景色が見えてくる。伊織さんはその“二度目の出会い”を楽しんでいるという。

作品の“世界が続いている感覚”が何度でも私たちを呼び戻す

映画が完結しても、ファンが何度も作品世界へ戻りたくなる理由。それは単に物語のあらすじを追うということではない。むしろ、もっと根源的な“世界とのつながり”を感じられるからだと伊織さんは語る。

「(ワーナー ブラザース)スタジオツアー東京が2023年にできたことで、作品の世界に物理的に帰ってこられるようになった気がするんです。出口に『いつでも魔法の世界に帰ってこられる』というローリングさんの言葉が書いてあって。それを見るたびに、ほんとにそうだなって思います」

ハリー・ポッターシリーズを展開する「ウィザーディング・ワールド」は、伊織さんをはじめとして多くのファンが「世界が“今も続いている”」と感じられる要素が数多く存在する。
・スタジオツアーを歩けば、撮影裏話を少人数で説明してくれるインタラクターがいる
・作中に登場した教科書やローブなどのグッズが現実に販売され続けている
・東京にはハリー・ポッター専門店「マホウドコロ」がある
・配信サービスが発達した今は、いつでもどこでもシリーズが見返せる

「こういうつながりがあるから、映画が終わって何年経っても“また帰りたい”ってなるんですよね。BGMとして音楽を流しているだけでも落ち着くし、作品世界に浸っていられる。世界観そのものが好きなんです」

誰もが安心して好きなものを表現できる。コミコンは“好き”の熱量が可視化される場所

東京コミコンの魅力を尋ねると、伊織さんの表情が一気に明るくなる。

「ローブを着て歩いている人を見ると、つい目で追っちゃいます(笑)。同じ世界が好きなんだってすぐわかるし、それだけで嬉しいんですよね」

コミコンには、映画そのものというより“世界観の中にいることが好き”という人も多い。アメコミ由来のカルチャーという枠を越え、マーベルやDC、スター・ウォーズ、ハリー・ポッターや続編であるファンタスティック・ビースト、さらにはストレンジャー・シングスやロード・オブ・ザ・リングまで、あらゆる“ユニバースもの”が混ざり合う独特の空気がある。

「映画好きと一口にいっても、ミニシアター作品が好きな人やアート系映画ファンなどいろいろいるけれど、コミコンは“コンテンツそのものが好き”っていう人が集まる場所かもしれません。世界観に浸れることが嬉しい人の集合体なんですよね」

日本人の“お祭り好き”気質もコミコンとは相性がいい。

「ここでは、本当に好きなものを出していいんだ!って安心感があるんです。非日常に浸れるし、大人になって忘れかけていた“ワクワク”に戻れる。大人が追いかける幻想みたいな場所でもあります」

“初心者に優しい”のもコミコンならでは。偶然の出会いが、新しい沼をつくる

コミコンの面白さは、新しい作品世界との出会いという点にもある。

「今まで見たことはあるものの、詳しくは覚えていないな、みたいな映画って実は多いんですよね。私はマーベルがまさにそうで。PR大使として携わるようになってから改めてマーベル作品を全部見て(笑)。そこであれ、こんなに面白かったんだ!って気づくこともあったんですよね。偶然見かけたコスプレイヤーを見て『これなんのキャラクター?』って検索して、そこから作品に興味を持つ人もいますよね」

スター・ウォーズのように作品数が膨大で、「どれから見ればいいのかわからない」というような参入しづらい作品でも、コミコンで触れることで“入口のハードル”が一気に下がるという。

「たくさん作品があっても、コミコンは初心者に優しいんですよね。まず出会って、気になったら帰ってから見ればいい。いろんな入口が転がっている場所です」

PR大使として――知らなかった人に“扉を開く”役割

今年もさまざまなステージを盛り上げるのに大忙しだ。Harumari Inc.

2023年から東京コミコンPR大使を務める伊織さん。ラジオや配信番組など、あらゆる場でコミコンの魅力を紹介してきた。

「最初にお仕事で関わったとき、本当に素晴らしいイベントなのに“知らない人がまだまだ多すぎる!”って思ったんです。だからラジオでも『こんなイベントがあるよ!』『こんな作品の俳優さんが来るよ!』って紹介していたら、リスナーさんが実際に足を運んでくれるようになって。本当に嬉しい瞬間です」

映画ファンだけでなく、彼女の活動を通じてコミコンに興味を持つ若い層も増えている。
倍速視聴が当たり前の世代にも、イベントの楽しさはしっかり届く。

「ここでは本当に“何でもいい”。それを体現したい」コスプレイヤーとしての視点

伊織さんはコスプレイヤーとしての顔も持つ。
コミコンに“コスプレの制約はない”ことも、伝えていきたいポイントだという。

「アメコミじゃなきゃいけないと思う人が多いんです。でも実際はオリジナルでもいいし、アニメでもいいし、日本のキャラでもいい。とっても自由なんです。今回の私の衣装は、来日予定だった香港映画『トワイライト・ウォーリアーズ 決戦!九龍城砦』に合わせて香港風に寄せてみてるんです。世界観の解釈を自分なりに取り込むのが楽しいんですよね。コスプレに抵抗があっても、スパイダーマンのカラーを取り入れたワンピースを着るとか、作品のTシャツで参戦するとか、ちょっとしたものだけでも“立派な参加の形”。そういうのを楽しんでほしいです」

作品のアパレルグッズを着たり、俳優のオリジナルグッズを身に付けたり。会場にはコスプレ以外にも何かをまとって参加している人も多い。

完璧なコスプレでなくても、グッズ一点でも、誰でも作品世界の一部になれる。
「ユニークなコスプレを見て『えっ!?』って驚くこともあります。“本当に何でもいいんだ”って思う。その自由さがコミコンの魅力です」

作品を語る場所をつくりたい。映画の楽しみ方を“共有”する活動へ

伊織さんは、池袋の映画館を借りて副音声上映イベントを行うなど、作品を語り合う新しい試みにも挑戦している。

「ハリー・ポッターなら神話に詳しい人を呼んで“狼男のルーツ”を解説してもらったり、映画のテーマに関連したゲストを迎えたり。作品の見え方が一気に変わるんです。こういうイベントにコミコンで私を知った方が来てくれたりして、新しい輪が広がっているのが嬉しいですね」

映画の世界と、ストリーミング文化やコスプレ文化——。それぞれのファンを柔らかくつなぎ、新しい楽しみ方を提案する存在になりつつある。

大人が“何度でも帰って来られる場所”

マーベルのコスプレ・ギャザリングというステージ。マーベル映画お馴染みのキャラクターに扮するファンが集う、コミコンの名物ステージだHarumari Inc.

大人になっても“好き”を追いかけられる場所。それこそがフランチャイズ映画の魅力だ。

「作品自体は終わっていても、世界が続いている感覚があるから、私たち大人は何度でも戻りたくなるんだと思います。新作にも出会えるし、昔の思い出ともつながれる。子どもの頃はわからなかったことが、大人になってやっと理解できる。フランチャイズ作品って、一生楽しめるコンテンツなんですよね」

コミコンは、その“帰って来られる場所”を現実に具現化したイベントだ。
多くの人が集まり、同じ世界を愛し、同じ熱量を共有する。その瞬間にこそ、フランチャイズ映画が長く支持される理由が宿っているといえるだろう。

伊織もえさんは、この世界の入口に立ち、新しいファンを迎え入れる案内役でもある。
「今年もたくさんの人に“楽しい場所なんだよ”って伝えたいですね」

伊織もえ

アジア圏を中心に活躍するコスプレイヤー・グラビアアイドル・ストリーマー。SNS総フォロワー数は550万人を超え(2025年8月現在)、国内外で絶大な人気を誇る。これまで150冊以上の雑誌表紙を飾り、多くの人気作品公式イベントやプロモーションに出演。映画、アニメ、ゲームに造詣が深く、『東京リベンジャーズ』『Re:ゼロから始める異世界生活』『その着せ替え人形は恋をする』『NIKKE』など数多くの作品とコラボレーションを行っている。日本を代表する女性ストリーマーとしても活動し、eスポーツ大会や国際的ポップカルチャーイベントのアンバサダー経験も豊富。アジアを代表するポップカルチャーアイコンとして、世界中に日々“きゅるん”をときめかせている。

Instagram:https://www.instagram.com/moe_five/?hl=ja

東京コミコン
(25年は終了。会場の様子などは公式YouTubeにて)
https://tokyocomiccon.jp/
https://youtube.com/channel/UCDEpRnftsqxuD4vKXbrlftQ?si=CxiisGtZaamVGLwIHarumari Inc.
元記事で読む
の記事をもっとみる