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「嫌な予感しかしない」玄関越しに呼んでも返事がない一人暮らしの父、ベランダから踏み込んだ先で見た現実【作者に聞く】

  • 2025.12.25
救急車を拒もうとする父に、思わず強い口調で言い返す! 作=キクチ
救急車を拒もうとする父に、思わず強い口調で言い返す! 作=キクチ

実家に一人で暮らす父と連絡が取れなくなった。電話も出ない、玄関越しに声をかけても反応がない。嫌な予感を抱えたまま家の周囲を回り、キクチさんはベランダから室内に入るという決断をすることになる。コミックエッセイ「父が全裸で倒れてた。」は、母を看取ってから約2年後、今度は父の異変に直面する娘の体験を描いた作品だ。自身の体調や家族の介護を題材に漫画を描いてきたキクチさん(@kkc_ayn)が、再び“親の老い”と真正面から向き合うことになる。

家に入る前から察してしまった「これはまずい」

「父が全裸で倒れてた。」カバー 作=キクチ
「父が全裸で倒れてた。」カバー 作=キクチ
第1話1-1 作=キクチ
第1話1-1 作=キクチ
第1話1-2 作=キクチ
第1話1-2 作=キクチ

室内に入る前、床に落ちていた便のようなものを見つけた瞬間、キクチさんは状況の深刻さを悟ったという。父を探さなければならないのに、見つけたくない。最悪の想像が頭をよぎる一方で、どうか無事であってほしいという願いも捨てきれない。逃げたい気持ちと向き合わなければならない現実がせめぎ合う中、それでも足を止めることはできなかった。

全裸で倒れていた父と、判断を迫られる娘

浴室で見つけた父は全裸で倒れており、意識はあるものの明らかに異常な状態だった。目は血走り、全身は発疹で赤く腫れている。70代の高齢者が一人でこの状態にあるという事実に、キクチさんは一瞬ひるみながらも、頭を打っている可能性や、動かしていいのかどうかなど、次々と判断を迫られることになる。知識がないからこそ迷いも生じるが、それでも立ち止まってはいられなかった。

「救急車を呼ぶほどじゃない」への一喝

それでも父は「救急車を呼ぶほどじゃない」と口にする。母のときも同じだったことを思い出し、キクチさんは思わず強い言葉で制止する。明らかに一刻を争う状況でなお躊躇する父に、呆れと怒りが入り混じるのは当然だった。本人に自覚はなくとも、性格や価値観は非常時にこそ露わになる。この場面は、娘として、そして一人の大人として決断するキクチさんの強さを印象づける。

重い題材でありながら、「父が全裸で倒れてた。」は終始淡々としすぎることなく、ときに笑いを挟みながら描かれている。母の介護を経験したからこそ冷静に動けた部分もあれば、それでも一人っ子として背負う重さに揺れる瞬間もある。誰にでも起こり得る“その日”を、少しだけ現実的に、そして少しだけ身近に感じさせてくれる一作だ。

取材協力:キクチ(@kkc_ayn)

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