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「NHKの傑作」放送終了から45年経てもなお「神アニメ」と称される“比類なき完成度”

  • 2026.2.3

子どものころ、何気なく見ていたNHKアニメを覚えていますか?あの懐かしの作品はいま、令和の子どもたちにどう映るのでしょうか。今回は、“令和の子どもに見せたいNHKアニメ”を5本セレクトしました。

本記事ではその第5弾として、アニメ『ニルスのふしぎな旅』(NHK総合)をご紹介します。スウェーデンの国民的作家による児童文学作品を原作とした、放送終了から45年が経っても愛され続ける一作です。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

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※Google Geminiにて作成(イメージ)
  • 作品名(放送局):アニメ『ニルスのふしぎな旅』(NHK総合)
  • 放送期間:1980年1月8日~1981年3月17日

スウェーデン南部の農村で育ったいたずら好きの少年・ニルス(CV:小山茉美)は、部屋で捕まえた妖精の怒りを買ってしまい、ハムスターのキャロット(CV:山崎唯)とともに魔法で小さくされてしまいます。小さくなって動物の言葉がわかるようになりますが、日ごろいじめていた家畜たちに仕返しをされ、逃げ回るニルス。そんななか、ガンの群れにからかわれ、空に飛び立とうとしていたガチョウのモルテン(CV:安原義人)に飛びつき――。

弱い立場から世界を見つめ直すニルス

アニメ『ニルスのふしぎな旅』の見どころは、旅のなかで起こる出来事を通して成長を自然に伝える語り口にあります。わがままで乱暴だったニルスは、妖精の呪いによって小さくなり、仲間たちとともに空を渡る旅へと出ることに。人間としての力を失ったことで、ニルスは初めて弱い立場から世界を見ることになるのです。

自然は美しいだけでなく残酷で、擬人化された動物たちは、人間の都合では動こうとしません。その現実に何度もくじけそうになりながら、ニルスはすこしずつ他者の痛みがわかるようになっていきます。印象的なのは、彼の変化には説教臭さがない点です。誰かを助けるか迷う沈黙や、仲間を思って踏みとどまる一瞬。そういった積み重ねによって、ニルスはやさしい人間へと近づいていきます。

旅の途中で出会う動物や人々もまた、毎回ニルスにとっての鏡となり、彼の未熟さを映し出します。そして、空を渡る群れが象徴するのは、群れに属する責任。好き勝手に生きることと、誰かと生きることは違います。ニルスがその違いを体験しながら学んでいくところが、本作の肝だと言えるでしょう。

放送終了から45年の『ニルスのふしぎな旅』

45年前に放送終了した本作は、セルマ・ラーゲルレーヴさんによる児童文学作品が原作です。ラーゲルレーヴさんは、女性初のノーベル文学賞を受賞したスウェーデンの国民的作家。『ニルスのふしぎな旅』についてSNSでは「多くの人に知って欲しい」「NHKの傑作」「神アニメ」「アニメ史に残る名曲」との声があがりました。

本作のオープニングテーマは、ゴダイゴのタケカワユキヒデさんが作曲を担当し、加橋かつみさんが歌唱する『ニルスのふしぎな旅』です。エンディングテーマも、同じくタケカワさんが作曲し加橋さんが歌う『いつまでも友だち』となっています。旅をするニルスたちが描かれたオープニング映像とともに流れる『ニルスのふしぎな旅』は、道中で見つける地平線や季節の景色が、加橋さんの味わい深い歌声に乗せて歌われているのが印象的です。

また、1983年にはTVアニメシリーズをもとに『劇場版 ニルスのふしぎな旅』が製作されました。そこで演出に参加していたのが、『うる星やつら』『機動警察パトレイバー』などの作品で知られる押井守監督です。完成しながらも未公開のままとなり、幻の作品となっていた劇場版ですが、2015年1月31日より国内で初公開されたという経緯があります。

空を飛ぶ爽快な冒険をしながら、自然の美しさと同時に怖さも知っていくニルス。誰かと生きるための距離感も、彼は身をもって学んでいくのです。他人の痛みを想像できる人間へと成長するニルスの姿は、きっと令和の子どもたちにも感じるものがあるでしょう。


ライター:まわる まがり
主にアニメについての記事を書くライター。コラムやレビュー、映画の作品評を手がける。X(旧Twitter):@kaku_magari