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「本当にオススメ」「最高」7年前 “NHKクオリティ”で魅せた【至高ドラマ】

  • 2026.2.7

勝負の世界を描くドラマは、決して少なくありません。スポーツ、仕事、あるいは人間関係。多くの物語は、「勝つか負けるか」という結果に向かって進んでいきます。しかし現実の人生は、勝ったからといってすべてが解決するわけでも、負けたからといってすべてを失うわけでもありません。2019年にNHKで放送された『盤上のアルファ~約束の将棋~』は、将棋という極めて静かな競技を題材にしながら、勝負の“結果”ではなく、勝負に向かう人間の心のありようを描き切った異色のドラマです。夢、再生、喪失、祈りー。さまざまなテーマを経て辿り着いたのは、「人は何かに人生を賭けるとき、そこに何を見ているのか」という、極めて静かで、しかし切実な問いでした。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

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ドラマ「スカイキャッスル」制作発表 比嘉愛未(C)SANKEI
  • 作品名(放送局):『盤上のアルファ~約束の将棋~』(NHK BSプレミアム)
  • 放送期間:2019年2月3日~2019年2月24日
  • 出演者:玉木宏、比嘉愛未、上地雄輔、野々すみ花、近藤正臣 ほか

新聞社の社会部でエースとして活躍してきた秋葉隼介(玉木宏)は、ある日突然、文化部の将棋担当への異動を命じられます。事件や社会問題の最前線で戦ってきた秋葉にとって、将棋は理解できない世界であり、正直なところ「負け組の趣味」とすら感じていました。

秋葉の仕事一筋の生き方に疲れた恋人・恵子(比嘉愛未)にも距離を置かれ、やけ酒の席で将棋を侮辱するような発言をしてしまった秋葉。すると彼の前に現れたのが、大阪弁の男・真田信繁(上地雄輔)でした。

真田は、かつてプロ棋士を目指しながらも、夢を掴めず将棋の世界から逃げ出した過去を持つ人物。将棋に対して屈折した思いを抱える彼との出会いが、秋葉の人生、そして将棋への見方を大きく変えていきます。

次第に将棋の奥深さに惹かれていく秋葉と、もう一度プロ棋士を目指そうとする真田。二人の物語は、派手な逆転劇ではなく、静かで、しかし確かな熱を帯びて進んでいきます。

将棋のルールを知らなくても、“勝負の厳しさ”や“選ばなかった道への後悔”は、誰の人生にも重なる普遍的な感情として描かれていきます。盤上で交わされるのは、駒だけではありません。そこには、誇り、焦り、悔恨、そしてわずかな希望が置かれているのです。

将棋を知らなくても、将棋が伝わるドラマ

本作が高く評価されている理由のひとつが、将棋を“わかりやすく説明しすぎない”点にあります。専門用語や戦術を丁寧に解説するのではなく、一手を指すまでの沈黙、負けが確定した瞬間の空気、勝ったはずなのに晴れない表情ー。そうした「言葉にならない部分」を、映像と演技で丹念にすくい取っていきます。

その結果、SNSでは、「本当にオススメ」「最高」「さすがNHK」といった声が数多く見られました。将棋ファンには将棋の本質が深く刺さり、そうでない人にも、“勝負とは何か”がまっすぐ届くー。

このバランス感覚こそが、『盤上のアルファ~約束の将棋~』の大きな強みです。「将棋って学校にあったけど触れなかった」「ルールがよく分からない」そんな人にこそ、将棋と人生を重ねて描く本作は、静かに、しかし確実に刺さるでしょう。

比嘉愛未がもたらす、現実の温度

この作品に、柔らかな現実感を与えている存在が、比嘉愛未さんです。

彼女が演じる恵子は、勝負の最前線に立つ棋士ではありません。しかし、勝負に人生を賭ける人間を、最も近い距離で見つめ、支える存在として描かれます。

比嘉愛未さんの自然体の演技は、張り詰めた将棋の世界に、確かな“日常の温度”を持ち込んでいます。

勝負にすべてを注ぐ人間と、そのそばで生きる人間。この対比があるからこそ、盤上の一手一手が、単なる勝敗以上の重みを持って迫ってくるのです。

勝負を描きながら、人生を描き切る

『盤上のアルファ~約束の将棋~』は、勝者を讃え、敗者を切り捨てる物語ではありません。勝っても、人生は続く。負けても、人生は終わらない。

それは将棋の世界に限らず、仕事でも、人間関係でも、私たちが日々直面している現実そのものです。

盤上での勝敗は、人生という長い対局の、ほんの一局面でしかないー。その事実を、このドラマは声高にではなく、静かに、しかし確実に伝えてきます。

失敗してしまった日も、負けたと感じた今日も、人生のすべてではない。次の一手は、まだ指せる。そんな希望を、押し付けがましくなく残してくれるからこそ、「最高」という短い言葉に、これほどの重みが宿るのでしょう。

次の一手を指すのはあなた

“NHKの隠れた名作ドラマ”シリーズの最後を飾ったのは、この『盤上のアルファ~約束の将棋~』でした。派手な演出も、大きなどんでん返しもありません。それでも、観終わったあと、しばらく盤面を見つめていたくなる。

人生という長い対局の中で、自分はどんな一手を選んできたのか。そして、これからどんな一手を指すのか。そんな問いを、静かに、深く、心に残してくれる名作です。


※執筆時点の情報です