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島根県再発見!後編|石見で石見神楽と石州半紙に誘われ伝統文化を楽しむ旅

  • 2025.12.24
fujingaho

松江市に続く島根旅の後編は、県西部の石見地方へ。“石見”は浜田市、益田市、大田市、江津市をはじめとした西部エリアの総称です。

ダイナミックな石見神楽をはじめ、その面づくりや石州和紙(せきしゅうわし)など芸能と工芸が土地に息づく地域。ここでは石見神楽を中心に伝統の技に触れる旅をおすすめします。

温泉と石見神楽の非日常

石見神楽は、島根県西部の石見地方を中心に伝わる神楽。「八岐大蛇(ヤマタノオロチ)」などの演目で知られ、豪快な舞が特徴です。

鮮やかな衣裳、大蛇の大迫力の蛇胴、太鼓と笛の華やかな囃子が観客を引き込み、夜を徹して奉納されることもあります。現在は観光客にも人気の伝統芸能です。

今回は有福温泉街の「湯の町神楽殿」で鑑賞。基本的に毎週土曜の20時30分~22時まで(大人1名1,500円、要予約)地元の神楽団による公演が行われています。木造二階建ての建物で客席と舞台が一体になるほど近く、迫力ある神楽にそのまま飲み込まれるような体験ができます。予約は<a href="https://gotsu-kanko.jp/arifuku" target="_blank">江津市観光協会</a>(tel.0855-52-0534)へ fujingaho

圧巻の舞と力強い太鼓、笛の音はこの至近距離で鑑賞するともうトランス状態に。非日常の没入体験とはまさにこのこと。石見神楽には、後継者不足どころか、10代から「石見神楽に携わりたい」と志す若者が後を絶たないそうですが、たしかにイマドキのティーンをも魅了する迫力。次世代への継承が自然に行われている、“生きた地域文化”を目の当たりにいたしました。

さて、ここ江津市の有福温泉は美肌の湯として知られる歴史ある名湯です。島根県は“美肌県”と呼ばれるように、その気候が肌によいだけでなく、美容に適した温泉が豊富なことでも知られます。東部の玉造温泉が有名ですが、石見にもわざわざ訪れたい質のよい温泉があります。そのひとつが有福温泉です。

有福温泉は低張性アルカリ性高温泉。メタケイ酸を多く含み、無色無臭の柔らかいとろみのあるお湯が特徴。今回は2022年にオープンした「アウルリゾート有福温泉」に宿泊しました。「湯の町神楽殿」から徒歩すぐなので、夜の遅い神楽鑑賞でも行き来しやすくて便利です。

「アウルリゾート有福温泉」の源泉かけ流し半露天風呂付き客室(写真は304号室)。他に「御前湯」「さつき湯」「やよい湯」という3つの外湯もあります。有福温泉のメタケイ酸は64.6~71.8mg/1リットル。※一般的に1リットルあたり50mg以上メタケイ酸が含まれると“美肌の湯”と呼ばれます fujingaho

石州半紙と神楽面を学ぶ

石見地方は、2014年にユネスコ無形文化遺産に登録された「石州半紙」の産地として知られます。その製法は1969年、国の重要無形文化財の指定も受けています。今回は石州和紙や石州半紙を学ぶべく石州和紙会館を訪問。ここでは「手すき和紙体験」もできます。(はがき版2枚770円、流し漉きA3判1枚1,650円~。所要時間は30~60分程。要予約)

石州半紙は地元の楮(こうぞ)を原料とし、強靭で水に強いのが特徴。伝統的な「流し漉き」によって一枚ずつ丁寧に作られます。「石州半紙」は広義の石州和紙のなかでも最上級品。地元の良質な楮のみを使い、重要無形文化財の伝統的な製法を守って作られる手漉きの半紙を、石州和紙のなかでも特に「石州半紙」と呼ぶのです。

石州和紙の主な原料は楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)といった植物の靭皮(じんぴ)繊維。そこに補助材料として、ネリにトロロアオイの根の粘液を使うところが特徴です fujingaho
歴史において文献に石州(石見)の名前が登場するのは905年ですが、『紙漉重宝記』(1798年)によると「慶運・和銅(704~715年)のころ柿本人麻呂が石見の国の守護で民に紙漉きを教えた」と記されているそうです。つまり石見の紙漉きの歴史はなんと1300年以上。そんな紙漉きを体験させてもらいました。水を含んだとろみのある繊維は思いのほか重く、厚さが均一になるように漉くのが難しい! 石州和紙会館では和紙小物の展示販売もあります fujingaho

石見神楽に欠かせないのが、迫力のある神楽面。鬼、神、翁など役柄ごとに造形が異なり、石見地方では面を専門に作る職人がいまも活躍しています。ここで使われているのが石州半紙。水に濡れても破れにくく、乾けば元に戻るという驚きの強度。石州半紙は石見神楽のお面や蛇の胴体を作るのに大切な素材なのです。

石見神楽面を手掛ける<a href="http://www.kobayashi-kobo.jp/" target="_blank">「小林工房」</a>でお面作りを見学させてもらいました。幼少期に石見神楽に傾倒し、なんと11歳から石見神楽面の技法を学び始めたという小林泰三さん。石見の土で型を作り、そこに石州半紙を何重にも重ねて貼ります。乾いたら土の型を脱活(だっかつ)、つまり割って、和紙の面を取り出していきます fujingaho

丈夫な石州半紙で作られているからこそ、石見神楽の激しい舞でも壊れにくい。しかし紙なので軽くて演者に負担が少ない! なんと理に適っているのでしょう。

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世界遺産の石見銀山へ!

島根県大田市に位置する石見銀山は、16〜17世紀に世界有数の銀産出量を誇り、現在は世界遺産にも登録されている歴史遺産です。

坑道跡に加えて、お屋敷や町家が残る大森の町並みを歩きながら、当時の暮らしや産業に静かに思いを巡らせて過ごすことができます。自然と調和した町歩きは石見の旅の締めくくりにぴったりでしょう。

石見銀山の駐車場から少し離れた場所に「ぎんざんカート」やレンタル自転車(エリアが広範囲なので移動に乗ると便利)のカウンターがあります。人気なので待つことも。世界遺産に登録された石見銀山遺跡は、銀鉱山跡、町並み、街道、港、港町、城跡など14の資産で構成されており、写真右はそのなかの一つ重要文化財の熊谷家住宅。石見銀山で栄えた商家を見学できるようになっています(入場料は高校生以上600円/開館は9時30分~17時/火曜定休、年末年始は休み) fujingaho

石見神楽の熱気と和紙や面づくりに息づく匠の技。それからノスタルジックな温泉街や石見銀山の町並みは、このエリアならではの魅力です。出雲や松江に続く“島根旅”の新天地として、石見を訪れてみませんか?

ずっと行きたいと思っていた、“日本一の居酒屋”と呼ばれる益田市の<a href="http://tagosaku1966.jp/" target="_blank">「田吾作」</a>へ初訪問。なかに入るとすぐ大きないけす。近隣の漁港からその日のおいしい魚が集まるとあって、お造りをはじめ魚料理が人気です。地元のお酒も豊富に揃っており、酒飲みには心から楽しめるお店でした。特に新鮮ないか刺しは絶品! しかも驚くほどお手頃です fujingaho

島根県再発見!前編|松江

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