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「集中豪雪」をもたらすJPCZとは? 短時間で身動きがとれなくなるリスクに注意しよう

  • 2025.12.23

冬の日本海側に大雪をもたらす要因の一つが「JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)」です。

JPCZに伴う雪雲が流れ込んでくると、短時間で積雪が急増し、交通の乱れや停電など生活への影響が大きくなることもあります。過去にもJPCZを原因とした大雪災害が数多く発生しています。

この記事では、JPCZの仕組みや発生条件、リスク、そして備え方までを詳しく解説します。

JPCZとは?

JPCZとは、主に冬季に日本海上で発生する発達した線状の雪雲です。長さは1,000kmに及ぶこともあります。

集中豪雨をもたらす線状降水帯という言葉がありますが、これに対してJPCZは線状降雪帯とイメージするとわかりやすいです。

JPCZのメカニズムは、中国大陸のシベリア高気圧から日本に向かって吹く季節風が、朝鮮半島の北部に位置する長白山脈や白頭山という山で分流し、日本海で再び合流することによって発生します。

異なる風がぶつかることによって雪雲が組織的に発達し、季節風に流されることで日本海側に大雪をもたらします。

さらに、JPCZによって発生した雪雲は通常の雪雲に比べると背が高いことが多いのも特徴です。このため、瀬戸内海や太平洋側の一部にも流れ込み、普段雪が少ない場所に大雪をもたらすケースもあります。

JPCZが発生しやすい条件

JPCZは以下の2つの条件が揃うと発生しやすくなります。

・冬型の気圧配置が強まる
・気温と日本海の海水温との差が大きい

JPCZは、冬型の気圧配置が強まり、中国大陸のシベリア高気圧から吹き出す寒冷な北西風が日本海に流れ込んでいることが前提条件です。

また、JPCZによって雪雲が発達するためには風がぶつかることに加え、気温と日本海の海水温の差が大きい必要もあります。

そもそも冬の雪雲はシベリア高気圧から吹き出す冷たい北西風が、暖かい日本海を吹き渡る際に水蒸気を供給して発生します。

これらの条件が揃うとJPCZが発生しやすくなります。

JPCZのリスクと事例

JPCZのリスクは、数時間で大量の雪が降り、積雪が急増する危険性があることです。さらにJPCZ上に低気圧が発生し、雷や突風などの激しい気象現象をもたらすこともあります。

特に北陸や東北、山陰など日本海側の地域では、交通機関の乱れや立ち往生、停電などの生活への影響が大きくなります。また、雪の重みによる建物の倒壊、事故の増加といった災害も発生しやすく、避難や救援活動も困難になることがあります。

過去にJPCZが原因となった大雪の事例を以下にまとめています。

JPCZは特に珍しい現象ではなく、年に数回から10回程度発生しています。大雪をもたらすかどうかはJPCZに伴う雪雲の発達具合や、どれくらい停滞するかによって変わってきます。

JPCZの予想について

JPCZの予想について、線状降水帯予想のような専門的な予想はありません。しかし、JPCZが発生するかどうかは数日前から予想可能であり、JPCZに伴う大雪が予想される際には気象庁や国土交通省から警戒の呼びかけが行われます。

近年は「JPCZの発生によって大雪の可能性があります」のように、JPCZという言葉が気象情報やニュースで使われるケースもあります。

また、JPCZは天気図でも特徴的な形として現れることが多いです。

北陸地方から朝鮮半島にかけて「くの字」に湾曲した等圧線が並んでいるのがわかります。この「くの字」になっている部分は異なる方向から風が吹いている場所で、JPCZの発生を示唆しています。

このような天気図になっている場合は要注意です。

JPCZに備えるポイント

JPCZの怖いところは短時間で積雪が急増し、身動きが取れなくなってしまうことです。実際、急な雪に対応できずに車両滞留が発生し、立ち往生するケースは多くあります。また、積雪によって外出することが難しくなる可能性もあります。

そのため、JPCZが予想されていたり、大雪が予想されていたりする際には不要不急の外出を極力控えることが大切です。さらに数日程度自宅避難が必要になる可能性もあるため、非常食や飲料水、防寒用品も揃えておきましょう。

また、気象庁の以下の気象情報も活用し、雪への備えを行うことも大切です。

全般気象情報
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気象警報・注意報

JPCZによる大雪災害から身を守るためにも、発生条件やリスクを理解し、事前の備えと最新の気象情報の確認を徹底しましょう。

<執筆者プロフィル>
田頭 孝志
防災アドバイザー/気象予報士
田頭気象予報士事務所。愛媛の気象予報士・防災士。不動産会社の会員向けの防災記事、釣り雑誌にコラムの連載・特集記事の執筆、BS釣り番組でお天気コーナーを担当したほか、自治体、教育機関、企業向けに講演を多数、防災マニュアルの作成に参画。

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