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【カスカラ被害】トイレで密かに泣く店員たち…。「明日から来れない」接客業を追い詰める“粘着客”の恐怖【作者に聞く】

  • 2025.12.22
画像提供:タジマオオカ(@pu92yu)
画像提供:タジマオオカ(@pu92yu)

商品やサービスへの正当な不満を伝える「クレーム」とは異なり、理不尽な言がかりや著しい迷惑行為で従業員を追い詰める「カスタマーハラスメント(カスハラ)」。社会問題として認知されつつあるものの、現場のスタッフが受ける心の傷は計り知れない。

販売員のタジマオオカさん(@pu92yu)が描く実録漫画『かすはら物語』には、感情のままに暴言を吐く客と、サンドバッグにされる店員たちの悲痛な叫びが描かれている。今回は、接客業の現場で何が起きているのか、タジマさんにリアルな実情を聞いた。

「お礼を言いなさい」暴走する客の正義感

画像提供:タジマオオカ(@pu92yu)
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タジマさん自身、販売員として店頭に立つ中で、数え切れないほどのカスハラ被害に遭ってきたという。「こんなマズそうな商品が売れるわけがない」といった商品への難癖ならまだしも、時には「汚い顔でモノを売るな」と、容姿に対する直球の罵倒を浴びせられることもあった。さらにタチが悪いのが、歪んだ正義感を振りかざすタイプだ。「あなたが売れるようにアドバイスしてやっているんだから、お礼を言いなさい」と長時間にわたり説教を垂れ、感謝を強要してくる客もいたそうだ。

初対面の相手になぜここまで尊厳を踏みにじられなければならないのだろうか。タジマさんが抱いた疑問と恐怖は相当なものである。さらに残酷なのは、一人のスタッフがターゲットにされると、他の同僚たちは巻き添えを恐れて「見て見ぬふり」を決め込み、被害者が孤立してしまうケースも少なくないことだった。

狙われるのは「いい人そう」な店員

なぜ、特定のスタッフばかりが被害に遭うのだろうか。現在もサービス業に従事するタジマさんは、自身の経験から「話しかけやすい雰囲気の人」ほど狙われやすいと分析している。「例えば、道や時間を聞きやすい店員はいる。そういう『優しそうで拒絶しなそうな人』は、裏を返せば『文句を言いやすい相手』として認定されやすい傾向にある」親しみやすさや優しさが仇となり、悪意の受け皿にされてしまう皮肉な現実があるのだ。タジマさんは、こうした理不尽が自分だけに起きているのかと長年悩んでいたが、漫画をSNSで公開したところ多くの共感が寄せられ、被害の普遍さに驚いたという。

トイレで泣き、翌日から来なくなる

心ない言葉のナイフは、確実に店員の心を殺していく。タジマさんは、カスハラが原因で職場を去った同僚を何人も見てきた。「接客経験が浅い人が激しい怒号を浴びると、恐怖で翌日から出勤できなくなることは珍しくない。バックヤードや従業員用トイレで隠れて泣いているスタッフは本当に多い」また、名札から個人情報を探ろうとしたり、プライベートな質問を執拗に繰り返したりする「粘着質」な客への対応も、精神をすり減らす大きな要因だ。客を不快にさせないよう慎重に言葉を選びながら、自身の身を守らなければならない苦悩がそこにはある。

短時間の出来事でも、受けた傷は一生消えない。『かすはら物語』は、笑顔の下で悲鳴を上げているサービス業従事者たちの代弁者といえるだろう。

■取材提供:タジマオオカ(@pu92yu)

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