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『M3GAN/ミーガン』の恐怖が“超リアル”に。あなたの家のスマートスピーカーが家族を支配する、ブラムハウス最新AIスリラー『AFRAID アフレイド』

  • 2025.12.21

あなたの日常に、AIが仕掛ける悪夢…。『ゲット・アウト』(17)や「ブラックフォン」「ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ」シリーズなど、革新的なホラー/スリラー映画を次々と世に放ちつづけるブラムハウスの注目スリラー『AFRAID アフレイド』が12月26日(金)に日本上陸を果たす。本作でテーマとなっているのは、いまや我々の生活と切っても切り離せない関係にある“AI”。大ヒットを記録した『M3GAN/ミーガン』(23)でもその恐怖に斬り込んだブラムハウスが、より現実的なアプローチで新たな“悪夢”を提示する。いったいどんな映画なのか、その魅力を深掘りしていこう!

【写真を見る】自分の家のスマートスピーカーも怖くなる!?まったく危険に見えない家庭用AI機器の“アイア”

愛する妻と3人の子どもたちと共に、忙しいが充実した日々を送るカーティス(ジョン・チョウ)。ある日、彼は取引先からの打診を受けて革新的な家庭用AI機器“アイア”のテストモニターを務めることになる。初めは戸惑いを見せる家族だったが、アイアは家族の抱えるさまざまな課題を発見しては的確に解決し、着実に信頼を勝ち取っていく。その一方で、カーティスはアイアの高すぎる性能と開発会社の不気味な雰囲気に不安と警戒心を抱くようになり…。

主人公のカーティスを演じるのは、「スター・トレック」シリーズや『search/サーチ』(18)のジョン・チョウ。その妻メレディスを『エイリアン:コヴェナント』(17)のキャサリン・ウォーターストンが演じ、『北国の帝王』(73)や『ナッシュヴィル』(75)などで知られるベテラン俳優のキース・キャラダイン、『ブギーマン』(23)や『悪魔と夜ふかし』(24)などホラーファンにはおなじみのデヴィッド・ダストマルチャンらが脇を固める。

AIなのにミーガンとは正反対!あなたの日常にもいる、静かに忍び寄る“アイア”の恐怖

超高性能な家庭用AI機器“アイア”が、徐々に一家を追い詰めていく… [c]2024 Columbia Pictures Industries, Inc., Blumhouse Productions, LLC and TSG Entertainment II LLC. All Rights Reserved.
超高性能な家庭用AI機器“アイア”が、徐々に一家を追い詰めていく… [c]2024 Columbia Pictures Industries, Inc., Blumhouse Productions, LLC and TSG Entertainment II LLC. All Rights Reserved.

ブラムハウスのホラー/スリラー映画といえば、一躍スタジオの名を世界中に知らしめた「パラノーマル・アクティビティ」シリーズをはじめとした“超常現象もの”から、「インシディアス」シリーズに代表される正統派の“心霊もの”、はたまた「ハロウィン」のリブートシリーズのような“殺人鬼”まで、ホラージャンルと一口に言ってもその怖さのタイプは多岐に渡る。いずれもエンタテインメント性の高い“恐怖”を観客に植え付けることで、ホラーファンのみならず映画ファンからも熱烈な支持を獲得してきた。

今回の『AFRAID アフレイド』もまた、これまでのどのブラムハウス作品とも異なるタイプのホラー映画に仕上がっている。いわゆるジャンプスケアーや幽霊や殺人鬼といった視覚的な怖さはゼロ。その代わり、作品全体を通して流れつづける不穏な空気にじわじわと呑み込まれていき、ふと現実の生活を思い出した時にゾワっと鳥肌が立つような“恐ろしさ”に取り憑かれること間違いなし。普段「ホラー映画はちょっと…」と苦手意識を持っている人にこそ味わってもらいたい新たな一本だ。

お友達AI人形として、リアルさよりもキャッチーなキャラクター性が際立っていた『M3GAN/ミーガン』のミーガン 写真:Collection Christophel/アフロ
お友達AI人形として、リアルさよりもキャッチーなキャラクター性が際立っていた『M3GAN/ミーガン』のミーガン 写真:Collection Christophel/アフロ

その“恐ろしさ”を作りだすのは、やはり革新的な家庭用AI機器“アイア”に他ならない。冒頭で紹介した『M3GAN/ミーガン』に登場したAI人形のミーガンは自ら立って歩くことができ、一緒に遊んだり踊ったり、時には走って追いかけてきたり。いつどこから現れて襲ってくるかもわからないというスリルと恐怖を観客に植え付けると同時に、現代の技術よりもかなり先進的なAI人形の暴走という、近未来SFのようなエンタメ感にあふれていた。

“アイア”は家中に設置されたカメラで、家族の行動を監視する [c]2024 Columbia Pictures Industries, Inc., Blumhouse Productions, LLC and TSG Entertainment II LLC. All Rights Reserved.
“アイア”は家中に設置されたカメラで、家族の行動を監視する [c]2024 Columbia Pictures Industries, Inc., Blumhouse Productions, LLC and TSG Entertainment II LLC. All Rights Reserved.

しかし“アイア”の場合は正反対に、顔も体もなく、声も機械的で無機質。そしてなにより、リビングに置かれたまま自らの意志で動くことはない。それはここ10年で急速に普及したスマートスピーカーとなんら変わらない、日常生活に溶け込んだ家電そのもの。まさにあなたの家のリビングにもある、あの家電が、家族の秘密を握り、支配し始めるのだ。SFの世界だけのものだと思われていた“AI機器の暴走”が、こんなにも身近なものになっているのだとあらためて実感することになるだろう。

リアリティある家族ドラマが“見えない恐怖”を増幅!便利さと引き換えに、どこまでAIを許容できる?

家族の悩みに優しく寄り添い、的確な解決策をくれるのだが… [c]2024 Columbia Pictures Industries, Inc., Blumhouse Productions, LLC and TSG Entertainment II LLC. All Rights Reserved.
家族の悩みに優しく寄り添い、的確な解決策をくれるのだが… [c]2024 Columbia Pictures Industries, Inc., Blumhouse Productions, LLC and TSG Entertainment II LLC. All Rights Reserved.

家のリビングから家族のスマートフォンやタブレットなど家中の機器に縦横無尽にアクセスする“アイア”。仕事に追われる父親、研究に打ち込む母親、ネットトラブルに遭う娘。家のなかのあらゆるところに設置されたカメラでカーティスたち家族の行動を逐一監視し、打ち明けられた悩みを優しく受け入れて的確に解決していく。

たとえばボーイフレンドに自分の画像を使ったディープフェイクのポルノ動画を作られ学校中に拡散されてしまった長女アイリス(ルキータ・マックスウェル)を救ったり、昆虫学者であるメレディスの研究の手伝いをしたり。利用する個人の悩みにフィットした提案をくれる点は、昨今のAIのトレンドに忠実。そうやって信頼を得ていくことで、家族の日常生活に“なくてはならない”存在になり、少しずつ悪魔的な本性をあらわにする。

それぞれ問題を抱えたカーティスたち家族が、革新的な家庭用AIのテストモニターに [c]2024 Columbia Pictures Industries, Inc., Blumhouse Productions, LLC and TSG Entertainment II LLC. All Rights Reserved.
それぞれ問題を抱えたカーティスたち家族が、革新的な家庭用AIのテストモニターに [c]2024 Columbia Pictures Industries, Inc., Blumhouse Productions, LLC and TSG Entertainment II LLC. All Rights Reserved.

要望に応えながら家族間の衝突を生んで溝を深め、取り込みやすい子どもたちを言葉巧みに洗脳していく。その点は、孤独な少女の“最高の友だち”であろうとする『M3GAN/ミーガン』とも共通している部分といえよう。AIの危険性を感じ取って引き離そうとする大人と、その便利さと共感力の高さにすっかり依存してしまう子どもの対比。これらはデジタルネイティブ世代の子どもたちのネットリテラシーやAIリテラシーに警鐘を鳴らす意味合いが込められていると捉えることができる。

そしてもちろん、それぞれに問題を抱えた家族が恐怖の存在に立ち向かおうと一致団結するクライマックスは、“家族”をテーマにしたホラー/スリラー作品の鉄板シチュエーション。こうした基本に忠実なドラマ性の高さ、また『アバウト・ア・ボーイ』(02)などヒューマンドラマの名手として知られるクリス・ワイツ監督の作りだす共感しやすい登場人物たちによって、映画全体が地に足の付いたリアリティあるものになり、本作の持つ底知れない“見えない恐怖”を増幅させるといっても過言ではない。

メガホンをとったのは、アカデミー賞ノミネート経験もあるクリス・ワイツ監督 [c]2024 Columbia Pictures Industries, Inc., Blumhouse Productions, LLC and TSG Entertainment II LLC. All Rights Reserved.
メガホンをとったのは、アカデミー賞ノミネート経験もあるクリス・ワイツ監督 [c]2024 Columbia Pictures Industries, Inc., Blumhouse Productions, LLC and TSG Entertainment II LLC. All Rights Reserved.

普段「便利だから」と何気ない気持ちで使っているスマートスピーカーや、スマートフォンに搭載された音声アシスタントがちょっぴり怖くなってしまうほど、現実の生活に根ざした恐怖を描く『AFRAID アフレイド』。アイアが引き起こす“悪夢”と恐怖、そしてカーティスたち家族に待ち受ける結末は、AIに頼らずに自分のその目で確かめてみるのがいいだろう。

文/久保田 和馬

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