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「アバター」スティーヴン・ラング&ウーナ・チャップリンが語るJ・キャメロンが巨匠と言われる所以「彼は俳優を愛する監督」

  • 2025.12.21

2009年に3D映像革命を巻き起こし、現在も世界興行収入歴代1位に君臨するジェームズ・キャメロン監督の『アバター』(09)。13年ぶりの続編『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(22)も世界興収第3位の記録を保持している。そんな大ヒットシリーズの最新作『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』が公開中だ。

【写真を見る】クールで強烈な個性にあふれるアッシュ族のヴァラン。これまでのナヴィ族とは異なるビジュアルにも注目

主人公ジェイク・サリーへの復讐にすべてを懸ける、元海兵隊の大佐、クオリッチを演じるスティーヴン・ラングと、最新作で初登場するアッシュ族のヴァランを演じるウーナ・チャップリンのインタビューをお届けする。

「クオリッチのキャラクターには明らかに監督の持つ多くの側面が反映されています」(スティーヴン・ラング)

クオリッチを興味深いキャラクターと語るラング。キャメロンとクオリッチの共通点(!?)から、俳優への敬意を忘れないキャメロン監督の姿勢についても語った。

――今回の『ファイヤー・アンド・アッシュ』はシリーズ全部の物語のアークのなかで、どういう位置づけになるのでしょうか?

「五部作のど真ん中ですよ。『物語はダークな世界へと足を踏み入れる』と言っておきましょう。そして、この第3作の物語を突き動かしている根本的なテーマは“悲嘆”だと私は思っています。サリー一家が経験した長男の死、パンドラという衛星自体が抱える様々なトラウマ…そういう要素が大きな意味を持ってくるんです。ここから先、事態はますますクレイジーに展開することになる。新たに、謎めいたアッシュ族も登場しますからね!」

サリー家が最大の死闘に挑む!『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』は公開中 [c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.
サリー家が最大の死闘に挑む!『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』は公開中 [c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

――クオリッチ大佐というキャラクターは、このシリーズが始まったころに比べてより複雑になったように思いますがいかがですか?

「より多くの側面を持っていることが描かれるようになったと私も思います。クオリッチ自身が歩む道は複雑で、彼自身も少し混乱している。ある特定の事柄に対して自分がどう感じているのか、自分自身も確信できないような時があるという感じでしょうか。そういうなかで変わらないのは彼のジェイク・サリーに対する執着心です。裏切られたという感覚と、そこから生まれた復讐心、自分が蔑ろにされたことに執着し続けているのです。殺されるなんてクオリッチにとっては最大級の屈辱ですから!クオリッチは誰かを気にかけたり、愛を表現することを封印していますが、いずれはそれも形を変えて噴き出てくるかもしれません…つまり、とても興味深いキャラクターだということです」

異常なまでの執念でジェイクを狙うクオリッチ [c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.
異常なまでの執念でジェイクを狙うクオリッチ [c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

――そういうクオリッチ大佐の個性的なキャラクターはキャメロンと創り上げたものなのでしょうか?

「そうですね。長年にわたり、ジム(ジェームズ・キャメロン)とは何度も話し合ってきました。キャラクターのトーンや感情、雰囲気に関しては多くの点で私たちの意見は一致していると思います。ジムはクオリッチを愛し、彼を信じている。彼のキャラクターには明らかにジムの持つ多くの側面が反映されています。クオリッチの善の部分、悪の部分、父性、より専制的な側面もジムの一部を反映しているんです。

さらにジムはジェイクでもありトゥク(サリー家の末娘)でもありパヤカン(サリー家の次男ロアクの親友の海洋生物トゥルクン)でもある。ジムは登場するキャラクターすべてでもあるんですよ。そして、是非とも伝えたいのはジム・キャメロンは俳優を愛する監督だということです。監督のなかにはそういうことを口にする人はたくさんいますが、実際はそうではない場合が多い。でも、彼は違います。心から俳優を愛してくれています。これはすばらしいことですよ」

スティーヴン・ラングいわく、「アバター」に登場するキャラクターたちにはキャメロンの一部が反映されている!? [c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.
スティーヴン・ラングいわく、「アバター」に登場するキャラクターたちにはキャメロンの一部が反映されている!? [c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

――キャメロンがそうやって俳優を愛する理由はなんだと思いますか?

「私が思うに、撮影現場でジムが出来ない唯一のことが演技だからじゃないでしょうか。彼はそのほかのことはなんでもできますから。俳優ではなく演技もできないからこそ私たちに対して深い敬意を抱いてくれているんですよ。あ、もうひとつ、ジムができないことがありました。料理です。ケータリングの人たちに対して神々しいまでの敬意を抱いていますからね(笑)」

――ラングさんはこの壮大なサーガがどういうふうに終わればいいと考えていますか?

「『アバター5』が完成し、このサーガが完結した時にハッピーエンドが約束されているとは、私は断言できない。私が願っているのはキャラクターたちが長い旅路の果てにそれぞれの決着をつけられること。そしてパンドラという衛星が最終的には救われること…皆さんには是非、すべての終わりを見届けて欲しいと思っています」

「監督は私のなかから最高の演技を取り出す方法を見つけました」(ウーナ・チャップリン)

続いては、喜劇王チャーリー・チャップリンの孫で、俳優のジェラルディン・チャップリンを母に持つウーナ。苛烈な破壊衝動に駆られるヴァラン役に抜擢されるに至った経緯や役作り、キャメロン監督やジェイクを演じるサム・ワーシントンからのアドバイスを教えてくれた。

【写真を見る】クールで強烈な個性にあふれるアッシュ族のヴァラン。これまでのナヴィ族とは異なるビジュアルにも注目 [c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.
【写真を見る】クールで強烈な個性にあふれるアッシュ族のヴァラン。これまでのナヴィ族とは異なるビジュアルにも注目 [c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

――あなたはこのシリーズに初めて参加しました。どういう経緯でアッシュ族のリーダー、ヴァランを演じることになったのでしょう。

「オーディションを受けたんです。そのころの私はキューバのジャングルのなかにあるツリーハウスに住んでいたんですが、オーディションの話をもらい、是非ともトライしてこのチャンスを活かしたいと思いました。というのも『アバター』シリーズの大ファンだったからです。映画は、大自然とのつながりをまったく新しい形で感じさせてくれました。こんな映画が存在するなんて、私たちにとっての“恵み”のようなものだと思うくらいでした。もし、その映画の一部になれるのなら、こんな名誉なことはないと思ったんです。

2度のオーディションが終わり、3度目の時に初めてジムと会って、彼の前で演技をしました。とても尊敬していたので上手く出来ないんじゃないかと不安でしたが、ジムは寛大で遊び心があり情熱的な人で、すぐに打ち解けただけではなく、一緒にこの仕事をつくりたいとより強く思うようになりました。テストを終えたあと、私とジムは有機農業や土中カリウムレベルなどの話をして、自分なりに手応えを感じたんですが、それから何週間も連絡がなくて不安が拡がり始めたんです。周囲の友人たちには『もうこの役を手に入れた』なんて豪語していたから(笑)。そして、諦め始めたころ、ジムから電話をもらい『ヴァランはあなたに決まりました』って。飛び上がって喜んじゃいました(笑)」

3度のオーディションを経てヴァラン役を勝ち取ったウーナ・チャップリン [c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.
3度のオーディションを経てヴァラン役を勝ち取ったウーナ・チャップリン [c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

――初めて「アバター」の世界に飛び込む時、キャメロンはどんなアドバイスをくれましたか。

「最初のころ、ジムがひとつだけヴァランというキャラクターを説明してくれたことがありました。『そこに彼女を怖がらせるものがあったら、それに向って走るのがヴァラン。彼女はそれに突進して破壊しようするキャラクターだ』と言っていました。これが私の演技の指針になりました。でも、それだけなんです。撮影が始まるとほとんどなにも言わなくて、ずっと自由にやらせてくれた。それも不安になるくらい!もしかして監督は私に関心がないんじゃないだろうか?と悶々とする時もあったくらいです。ほかの俳優とはたくさん話しているのに、私に対しては口出しがなかったんですから。でも、ある時、こう思いました。監督は私のなかから最高の演技を取り出す方法を見つけたんじゃないかと。それが“自由にさせること”だったのではないかということです」

――あなたにとってはパフォーマンスキャプチャも初めてですよね?

「そう、初めてでした。だから、自分に関係のないシーンの時も現場に行って、ほかの俳優たちの仕事を見ていました。実際にやってみると、驚くほど解放感があって、子どもの時、友達と遊びに没頭してしまったあの感覚を思い出しました。舞台の経験に近いかもしれません。純粋で自由で、エネルギーを与えてくれているという感じ。すぐにでもまたやりたいと思うくらいです。

そうそう、サムに的確なアドバイスをもらったんです。『パフォーマンスキャプチャは100%のクローズアップが撮影の間中、100%続く』ということです。ということは、どこにも逃げ場はなく、どこにも隠れることができないということであり、トリックも効かなければ、ごまかしも無理ということでしょ?このアドバイスは役立ちました。サムに感謝しています」

第1作からジェイク役を演じるサム・ワーシントンに、パフォーマンスキャプチャでの演技についてアドバイスをもらったそう [c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.
第1作からジェイク役を演じるサム・ワーシントンに、パフォーマンスキャプチャでの演技についてアドバイスをもらったそう [c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

――アッシュ族、ヴァランはこのシリーズにどういう要素を加えてくれるのでしょうか。

「パンドラが持つ複雑性です。パンドラのこれまでまったくなかった側面をもたらすんです。これはとてもエキサイティングなことだと思います。アッシュ族もヴァランもとてもクールで強烈、そして恐ろしい存在。観客の方々はそういうところを楽しんでもらえると思うし、彼らを憎むという感情も味わえますよ!(笑)」

取材・文/渡辺麻紀

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