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「休肝日」は本当に必要?実は“毎日少しずつ飲酒”はNG…医師が教える肝臓を壊さないお酒の飲み方

  • 2025.12.21

12月は職場の忘年会やクリスマスパーティーなどでお酒を飲む機会が増える人は多いのではないでしょうか。SNS上では「最近、忘年会続きだったので、休肝日にします」「毎週続く忘年会のために休肝日必要」など、休肝日の必要性を訴える声が上がる一方、「休肝日なんていらない」といった声もあります。お酒を定期的に飲む場合、休肝日は本当に設けた方がよいのでしょうか。肝臓に負担をかけないお酒の飲み方について、天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニック(大阪市天王寺区)院長で総合内科専門医、消化器病専門医、内視鏡専門医の安江千尋さんに聞きました。

週2日以上の「休肝日」を設けるのが理想

休肝日は週に何回以上必要?(画像はイメージ)
休肝日は週に何回以上必要?(画像はイメージ)

Q.そもそも、飲酒習慣がある人がかかりやすい病気について、教えてください。例えば、肝臓系の疾患にかかるケースが多いのでしょうか。

安江さん「飲酒習慣がある人がまず注意すべきなのは『肝臓の病気』です。アルコールは肝臓で分解されますが、その過程で肝細胞にストレスがかかり、脂肪が蓄積しやすくなります。近年は従来の“脂肪肝”という呼び方に代わり、MASLD(マスルド:代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)という概念が用いられています。MASLDは肥満や糖尿病、脂質異常症などの代謝異常と深く関連する肝疾患で、飲酒量がやや多い人ではアルコールの影響が加わり、進行しやすいことが知られています。

MASLDの段階では自覚症状はほとんどありませんが、放置すると『肝炎→肝線維化→肝硬変→肝がん』と進行します。肝臓は『沈黙の臓器』と呼ばれ、かなり悪化して初めて症状が出るため、日頃の飲酒習慣が将来の健康に直結します。

また、アルコールは膵臓に強い毒性を示し、急性膵炎や慢性膵炎の大きな原因になります。胃や食道、咽頭では粘膜に炎症を起こし、咽頭がんや食道がん、胃がんのリスクを高めます。さらに大腸がんや乳がんは『飲酒量に比例して発症リスクが上昇するがん』として国際的に認められています。

そのほか、高血圧や不整脈、睡眠障害、肥満、糖尿病悪化、痛風なども起こしやすくなります。特に『毎日飲む』『量が多い』『短時間でまとめて飲む』人はリスクが高まり、症状がなくても進行していることがあるため、定期的な肝機能検査と適量飲酒が重要です」

Q.体への負担を和らげる上で、休肝日は本当に必要なのでしょうか。それとも、休肝日を設けてもあまり効果がないのでしょうか。

安江さん「休肝日は医学的にも『必要』です。アルコールを分解する際は活性酸素が生じ、肝細胞に炎症が起きます。毎日飲酒が続くと修復が追いつかず、MASLDの悪化や肝炎につながります。

休肝日は、この『肝細胞が回復する時間』をつくる意味があります。実際に、毎日飲む人が週に数日、完全な休肝日を設けることで、タンパク質を分解し、肝臓の解毒作用に関与する酵素の一つであるγ(ガンマ)-GTPの数値や、肝臓の細胞で作られる酵素で、アミノ酸を作る働きを持つALTの数値が改善したという報告があります。『量を減らすだけ』よりも『完全に飲まない日を設ける』方が肝臓の負担軽減につながりやすいとされています。

ただし、休肝日があるからといって大量飲酒が許されるわけではありません。1日の大量飲酒は肝臓にとって非常に大きなダメージとなり、休肝日の効果を打ち消してしまいます。

休肝日は肝臓だけでなく、睡眠の質改善やむくみ軽減、胃腸機能の回復、自律神経の安定といった全身の回復にも役立ちます。『毎日少しずつ飲む』という習慣がある人ほど、1日の飲酒量は軽く見えても蓄積が大きくなるため、意識的な休肝日が必要です」

Q.休肝日を設ける場合、週に何回程度が望ましいのでしょうか。理由も含めて教えてください。

安江さん「理想は週2日以上の休肝日です。これは日本肝臓学会などが推奨する目安でもあります。肝細胞はダメージを受けてから修復するまでに時間を要するため、1日だけの休肝日では不十分なケースもあります。

可能であれば連続した2日間を休肝日にすると、肝細胞の回復により効果的です。また、休肝日があっても残りの飲酒日に『まとめ飲み』をすると、肝臓へのダメージは大きくなり、休肝日の効果は相殺されます。

適量飲酒の目安は純アルコール1日20グラムで、これはビール中瓶1本(500ミリリットル)、日本酒1合、ワイン2杯程度に相当します。

これを大きく超える飲み方は、肝臓だけでなく、高血圧やがん、心疾患のリスク上昇につながります。『飲む日は適量』『休む日は完全に休む』というメリハリが、肝臓を守るための最も効果的な方法です」

Q.宴会で通常よりもお酒を飲み過ぎてしまったとします。この場合、何日程度、お酒を控えるのが望ましいのでしょうか。

安江さん「宴会で飲み過ぎた場合は、少なくとも2〜3日は禁酒するのが望ましいです。アルコール自体の分解は数時間ですが、肝臓、胃腸の炎症、脱水、睡眠の質低下、自律神経の乱れなどは数日続くためです。飲酒量ごとの目安は次の通りです」

・ビール数杯程度 1〜2日休む・酔うまで飲んだ、飲み過ぎの自覚あり 2〜3日休む・嘔吐(おうと)、強い二日酔いがあった 3日以上休む

この期間は、水分補給(経口補水液、みそ汁なども可)を小まめに行い、ビタミンB群や良質なタンパク質を意識的に取ると肝臓の回復を助けます。

二日酔いの症状を和らげるために少量のお酒を摂取する『迎え酒』は絶対NGで、肝臓への負担増加や依存リスクの上昇につながります。数日しっかり休む方が結果的に体調も整いやすく、長期的な健康維持につながります。

休肝日を無理なく続けるコツは?

Q.休肝日を無理なく続けるコツはありますか。

安江さん「休肝日を続けるためには、意志よりも『環境づくり』が重要です。まず、家に大量のお酒をストックしないことです。冷蔵庫にあるだけで手が伸びてしまいます。『飲む日は必要な分だけ買う』という仕組みにすると続けやすくなります。

次に、代わりの飲み物を準備するのがお勧めです。炭酸水やノンアルコール飲料、ハーブティーなど、『飲む行動の置き換え』が休肝日の成功率を高めます。夕食後すぐに歯磨きをして『飲まないモード』に切り替えるのも有効です。

さらに、『飲む量を最初から決めておく』ルールも役立ちます。例えば『350ミリリットルの缶ビール1本まで』と決め、それ以上は買わない、開けないようにします。

また、休肝日を『翌日の体調アップ』と結びつけることも大切です。『目覚めが軽い』『胃もたれしない』『疲れが残りにくい』といった実感があるほど続けやすくなります。完璧を目指さず、『週2日から』『連続2日』を目標にといった形で取り組むことが、休肝日を長続きさせるポイントです」

オトナンサー編集部

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