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20歳の体重から10キロ増えたら赤信号…40代から表面化する「血管をヨボヨボにする病」の予兆

  • 2025.12.21

年齢を重ねても健康に過ごすには、どうすればいいのか。国際医療福祉大学三田病院 糖尿病・代謝・内分泌内科の坂本昌也教授は「『太っていないから大丈夫だ』と思っている人ほど注意してほしい。とくに、20歳から10キロ以上増えている人は、臓器が静かに蝕まれている可能性が高い」という――。(第2回)

※本稿は、坂本昌也『世界中の研究結果を調べてわかった!糖尿病改善の最新ルール』(あさ出版)の一部を再編集したものです。

太ったビジネスマンのお腹
※写真はイメージです
40代からは“回復力”が遅くなる

糖尿病とうまく付き合っていくには、まずは敵を知ること。

敵の状態を知るうえで欠かせないのが検査です。日本の場合、会社勤務の人は会社が実施する健診、それ以外の人は自治体が実施する健診を定期的に受けられます。

40代になると、健診で何かしら引っかかる人が一気に増えます。統計的にもおよそ6割強が「要経過観察」や「要精密検査」と判定され、中性脂肪、体重、肝機能、血糖値、血圧など、どれかしらの数値が基準を超えるケースが多いです。

これは体が急に弱ったというより、20代、30代から積み重ねてきた生活習慣の影響が体にあらわれてきたと考えたほうがいいでしょう。若い頃なら徹夜や暴飲暴食をしても平気だった体が、40代になると回復力が遅くなる。その「ほころび」が健診の数値としてあらわれ始めているのです。

といっても、基準値を少し超えるくらいの数値では自覚症状はほとんどないことが多いので、気にする人はあまりいないと思います。しかし、ちょっと高い数値が危ないことは、本書や前回の記事でも話した通りです。

“命に関わる臓器”は自覚症状が出にくい

2年前のネイチャー誌の報告では、50歳前後になると誰でも何かしらの臓器の老化が始まっていることが示されています。

家族歴やストレスの有無で早まる人もいれば遅れる人もいますが、遅くても50歳を過ぎれば臓器のどこかがほころび始めるということです。

ただし、ほころび始めたとしても、心臓や腎臓、脳など命に関わる臓器は最後まで守られるため自覚症状が出にくく、あらわれるときはかなり危険な状態です。

心筋梗塞や脳梗塞が「突然」といわれるのはそのためです。

タバコなら本数と年数でリスクを数値化(ブリンクマン指数)できますが、糖尿病や高血圧、脂質異常症は、どれくらいの期間、どの程度の異常があったのか判断するのは困難な場合がほとんどです。

だからこそ健診や積極的な検査で細かく現状を把握することが不可欠なのです。

検診での主な判定値
出所=『世界中の研究結果を調べてわかった!糖尿病改善の最新ルール』
BMIが正常でも、内臓脂肪が多い人は要注意

「かくれ糖尿病」は血糖値が正常に見えても、すでに糖代謝の異常が進行している状態を指します。一方で、「かくれ肥満」は血糖値ではなく、内臓脂肪がたまっていることに焦点を当てた状態です。

見た目には太っていなくても、体の内部では脂肪がたまり、生活習慣病のリスクが高まっていることがあります。そのため、「自分は太っていないから大丈夫」と思っている人ほど注意が必要です。

日本人の場合、見た目がスリムでも、内臓に脂肪がたまっている人は少なくありません。体重や見た目に問題がなくても内臓脂肪が増えていて、糖尿病や高血圧、脂質異常症といった生活習慣病が静かに進行していることがあります。

肥満の判定でよく使われる指標が、BMI(=体重(kg)÷{身長(m)の2乗})です。例えば、身長175cm、体重70kgの人の場合、70kg÷(1.75ⅿ×1.75ⅿ)=BMI22.86となります。

あなたも、BMIを計算したことがあると思います。しかし、これはあくまで身長と体重の比率であり、どれくらい脂肪がついているかまではわかりません。

筋肉が多い人はBMIが高くても健康的ですが、BMIが正常でも内臓脂肪が多い人は要注意。特に日本人は欧米人に比べて皮下脂肪は少なくても内臓脂肪がつきやすい体質なので、「痩せて見えてもかくれ肥満」というケースが多いです。

腹囲が「男性85cm以上」「女性90cm以上」は要注意

内臓脂肪がたまると、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが確実に高まります。イタリアからの報告では、ウエスト中心にポッコリと出た腹部肥満が心血管イベントの予測に重要であることが示されており、さらに腹部肥満と善玉コレステロールの低下が死亡率と関連するというデータも出ています。「ちょっとお腹が出てきただけ」では済まないのです。

かくれ肥満を見つけるいちばん手軽な方法は腹囲を測ることです。男性で85cm以上、女性で90cm以上が内臓脂肪型肥満の目安。体重が標準でもウエストが基準を超えていれば要注意です。

正しい腹囲の測り方
出所=『世界中の研究結果を調べてわかった!糖尿病改善の最新ルール』

さらに詳しく調べる場合は、医療機関でCT(コンピュータ断層撮影)検査による内臓脂肪測定を行うこともできます。CTのある中小規模の病院なら依頼できることも多く、男女ともに内臓脂肪面積が100平方センチメートルを超えると内臓脂肪型肥満と診断されます。

「痩せているから大丈夫」という安心感が、病気の発見を遅らせてしまうことがあります。かくれ肥満は外からではわかりにくいからこそ、腹囲や検査でしっかり確認し、早めの対策を心がけることが大切です。

20歳以降に増えた体重は「ほぼ内臓脂肪」

「昔は痩せていたのに、気がつけば体重が10キロ以上増えていた」という人は、意外にいるのではないでしょうか。

社会人になってから生活リズムの変化や運動不足、ストレス、外食の増加などで、20歳の頃と比べてじわじわと体重が増えていくのはよくあるケースです。

基礎代謝(生きているだけで消費するエネルギー)のピークは20代前半といわれているため、20歳の頃と食事量が変わらなければ加齢とともにどんどん太ります。しかし医学的に見ると、20歳からの体重増は慢性疾患のリスクが高まっているサインです。

どうして危ないのかというと、20歳以降に増えた体重は、ほぼ内臓脂肪だからです。先ほども話したように、基礎代謝が落ちる20歳以降は、使えなかったエネルギーは脂肪として蓄積されます。

日常より運動して筋肉をつけている人は別ですが、そうでなければ「この増加分は脂肪、しかも内臓脂肪」と考えて差し支えありません。BMIが正常範囲でも、この10年くらいで数値が上がってきている人は注意してください。内臓脂肪は、かくれ肥満の原因です。しかも、血糖値や血圧、脂質に悪影響を与えます。さらに、体重が増えた時期が早いほど慢性疾患のリスクは大きくなります。

30代で10キロ増えれば、その後の40代、50代を高血糖や高血圧の状態で過ごすことになり、長期にわたって血管や臓器に負担がかかるからです。結果的に心筋梗塞や脳梗塞といった重大な病気へとつながりやすくなるのです。

40~50代で体重を落とせれば、リスクは低下する

20歳の頃から増えた体重はほとんど内臓脂肪だと聞いて、焦った人もいるかもしれませんが、事実がわかったらやるべきことは体重を減らすことです。

坂本昌也『世界中の研究結果を調べてわかった!糖尿病改善の最新ルール』(あさ出版)
坂本昌也『世界中の研究結果を調べてわかった!糖尿病改善の最新ルール』(あさ出版)

特に生活習慣病のリスクが急激に高まる40~50代は、体重減の効果を最大限に得られるチャンス。ある研究によると、40~50代で体重を落とした人は、その後10年、20年にわたって心筋梗塞や脳梗塞、腎不全の発症リスクが明らかに低下することが示されています。

ただし、気をつけたいのが減らし方。体重を減らすときに大切なのは、急激な減量ではなく「持続可能な減量」です。一般的には半年~1年で現在の体重の最大3~5%を目標にするのがよく、例えば80キロなら4キロ、70キロなら3.5キロです。これだけでも血糖値や血圧、脂質がかなり改善し、薬を減らせることもあります。

急激に体重を落とすと、体が飢餓状態と勘違いしてリバウンドしやすくなりますし、筋肉まで落ちて基礎代謝が下がり、かえって太りやすい体質になります。頑張ってダイエットしても、生活習慣病を進行させる原因になるのです。

(参考文献)
・令和4年度 健診検査値からみた加入者(40-74 歳)の健康状態に関する調査/健康保険組合連合会 政策部 調査分析グループ(令和6年6 月)
・Oh HS, et al. Nature. 2023;624:164-172.
・『Cardiovascular Diabetology』(2025 年8 月11 日号)
・JAMA Netw Open: May 27, 2025, 2025;8;(5):e2511825.

坂本 昌也(さかもと・まさや)
国際医療福祉大学三田病院 糖尿病・代謝・内分泌内科 部長
国際医療福祉大学 医学部教授。国際医療福祉大学三田病院 糖尿病・代謝・内分泌内科部長。東京都出身。東京慈恵会医科大学医学部卒。東京大学・千葉大学大学院時代より、糖尿病、心臓病、特に高血圧に関する基礎から臨床研究に渡るまで多くの研究論文を発表。日本糖尿病学会認定指導医・糖尿病専門医、日本内分泌学会認定指導医・内分泌代謝専門医、日本高血圧学会認定指導医・高血圧専門医、日本内科学会認定指導医・総合内科専門医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本医師会認定産業医、厚生労働省指定オンライン診療研修、臨床研究協議会プログラム責任者養成講習会を修了。現在も研究を続けながら若手医師や医学部生の指導も担当している。

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