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“猫あるある”から伝わってくる、その存在のいとおしさと尊さ。動物病院に勤務経験のある著者が描いた猫との日々に共感必至!【書評】

  • 2025.12.20

【漫画】本編を読む

猫と暮らすことは、ただ可愛い存在と同居するということだけではない。気まぐれで、空気を読まず、それなのに不意にこちらの心に寄り添ってくれる――。そんな生き物と日々を分かち合う豊かさと難しさ、そして面白さを、動物病院に勤務した経験がある著者ならではの視点で描いた作品が『にんげん1人とねこ1匹』(とみた黍/KADOKAWA)だ。

物語は、ひとり暮らしの「にんげん」と、とある日に出会った1匹の茶トラ猫との日常を描く。猫がゲーム機の上に乗ってきたり、ふすまで爪とぎをしたり、見つめ合って眠ったり……。そんなドラマチックではない、ささやかな出来事のひとつひとつに、「猫との暮らしってこうだよね」と思わずうなずくことだろう。特に印象的なのは、「枕の右側をトントンすると猫がやってくる」シーン。言葉がなくても通じ合っている関係は、ともに時間を重ねてきたからこそ生まれた、この1人と1匹にしかない尊いものだ。

生活に余裕がない中で「猫を飼う」と決めるまでの著者の葛藤、一緒に暮らすことの喜びや大変さが細かく描かれており、やわらかな線と淡い色使いが、豊かな猫との暮らしを映し出す。

猫の行動に一喜一憂し、生活のリズムがやがて「猫中心」へと変わっていく様子は、猫と日々をともにする人にとってはまさに、あるあるの連続だ。猫がいるから救われる日もあれば、猫の存在に悩まされる日もある。それでも、振り返るとすべてが「いとおしい」と思えてしまう。

本作は猫と暮らしている人には共感を、猫と暮らしていた人には懐かしさを、そしてこれから猫を迎えようとしている人には心構えも教えてくれる作品だ。ページをめくるたびに癒やしをもらえることだろう。

文=坪谷佳保

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