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「今のも、草彅くんが言いそうじゃないですか(笑)」稲垣吾郎が語る、草彅剛・香取慎吾に“年々似てきていること”

  • 2025.12.20
稲垣吾郎さん。

稲垣吾郎が人気俳優役を演じる主演舞台「プレゼント・ラフター」(Present Laughter)。20世紀英国を代表する劇作家で、マルチアーチストだったノエル・カワード(1899−1973)による大人の恋愛コメディで、1942年の初演以来、海外ではたびたびリバイバルされてきた。最近ではブロードウェイでケヴィン・クラインが、ロンドンではアンドリュー・スコットという名優が演じている。

そんな傑作に挑む稲垣さんが、舞台への想い、そして先日誕生日を迎えた今だからこそ“大切にしていること”について語ってくれた。


満足せず、何かに乾いていないといけない

稲垣吾郎さん。

――「プレゼント・ラフター」の戯曲を読むと、人気俳優である主人公ギャリーが中年となったことを意識するセリフが出てきます。これを書いたノエル・カワード自身が俳優でもあって、自分の人気者ゆえの孤独や年を重ねることへの不安を、笑いの中に描いていますね。

誰でも時間が過ぎていくと焦りっていうのはあって、僕もゼロではもちろんないです。夏休みの終わり頃になって焦るように、ね。ただ、まだ時間はあるかなって思う自分もいるし、いつまで生きるかはわからない、とも思う。人生100年時代といっても、それはわからない。ノエル・カワードさんは73歳で亡くなったようですが、やっぱり、できることはその日その日をきちんと生きるっていう感じですかね。

時間には逆らえないけれど、なるべく自分の理想を追い求めていく。抗うというよりも、常にその時の自分のベストで、理想の自分に自分を仕立て上げていくっていう努力はしなきゃいけないと思う。孤独を抱えたりするから、滲み出る俳優の魅力もありますしね。やっぱり幸せな人とか、何もかも満ちたりてる人の演技なんて見たくないじゃないですか? 作品もそうだし、音楽も。言い過ぎかもしれないけど、満足せず、何かに乾いていないといけないと思う自分もいたりする。

――何か自分を奮い立たせるための目標みたいなものはありますか?

それは持った方がいいですよね。でもあんまり目標を持っても、人生はその通りにはならないから。ただ、やっぱりいい作品に出会いたい。僕は自分から企画して何かをやるというスタイルではないから、誰かが僕が出ているものを見て、「今度はこれをこの人にやらせたいな」って思ってくれることで、次の作品が始まるわけです。その作品がこれはやれてよかったな、幸せだなって思えるようなものとなり、そしてそれを人に届けることが出来、人も幸せになれるような作品になる。それを地道に一つ一つやっていくっていうことが、今の僕の人生かな。僕もこういう作品をやってみたいな、という希望がないわけではないですけど、今出来ることをやっていくしかないですね。

――吾郎さんは、インタビューなどでもよく「今が一番幸せ」っておっしゃっていますね。

それは強がりですよ、もしかしたら(笑)。そう言ってないと、やりきれないじゃないですか。

――充実して見えるけれども、やっぱやりきれないこともありますか?

あります、あります。僕はそんなに悩むタイプではないですけど。やっぱり言霊じゃないけれど、そう言っていないとそうならない、と思うところがある。その辺は草彅剛さんとか、香取慎吾さんとか、やっぱり似てるのかなと。アプローチ方法とか、表現方法とか、使う言葉は違っても、やっぱり似てるなあ、と思うときがたまにあるんですよ。今の言葉って、草彅くんが言いそうじゃないですか。「言霊が」とか(笑)。ちょっと脱線しましたけど、そういうシンプルな考え方になってきたと思いますよ。それが年を重ねるってことかもしれない。

ラジオのパーソナリティの仕事で学んだ“対人スキル”

稲垣吾郎さん。

――舞台の上で、ギャリーは何かに追い立てられてるようにずっと喋っていますね。実は意外と吾郎さんも、おしゃべりなところがあるのかなと思うことがあるんです。特に「THE TRAD」(TOKYO FM)でラジオの生放送を聞いていると。

あのギャリーの感じは面白いですよね。僕もラジオをやっていて、なんか喋んなきゃとか、間が怖いから埋めなきゃ、みたいなのは感じますよ。そんなに大したことを喋ってなくても、ラジオをやる人はあんなふうに追い立てられるように喋るようになっちゃう。他のパーソナリティの方の番組を聞いていても思います。

僕の人生において、ラジオのパーソナリティはすごく経験できて良かったですね。人とのコミュニケーションであったり、場の空気をちゃんと感じ取る力であったり、人が生きる上で役に立つことをたくさん学びました。対人スキルを上げるような、こういうことを勉強しておかないと、僕は世の中から離れてしまうと思う。自分に欠けてた部分を補えて、すごくいいですね。

――対人スキルがそれまで欠けていたという意味ですか?

僕はどちらかというと人見知りのところがあったりするので。

――でも、吾郎さんはとても優しい方なんだなって、ラジオを聞いていて感じます。

優しいと言っていただけるのは嬉しいですね。これからも平和な感じで番組を続けていきたいので。人を追い詰めて面白さを引き出す、というのは苦手。そういう話の聞き出し方もあると思いますが、僕はそういう芸風ではないですしね。

――吾郎さんは「恋と音楽」シリーズ(2012年、14年、16年)など以前のPARCO劇場の舞台には何度も立たれていますが、新装したPARCO劇場は初めてですよね?

そう、初めてなんですよ。今まで観に行ってはいて、すごくいい劇場ですね。以前のPARCO劇場もよかったけれど、新しい劇場はいいですよ。古い劇場も良いですが、新しい劇場は、今の演出に耐えうる作りになっているという側面はある気がします。

PARCO劇場に立つのは、僕は10年ぶりぐらいなので楽しみでワクワクしています。もちろん思い出もありますし、20代前半からやってますから、なんかほっとするよね。「プレゼント・ラフター」みたいな会話劇ってあんまり大きい劇場でやるとちょっと違和感があるので、ちょうどいいサイズなのでは。渋谷も好きですし、好きな劇場ですね。

大人になってからの友達と、趣味のワインを楽しむ時間

稲垣吾郎さん。

――そんな吾郎さんが今一番興味があることってなんですか? 日常でも、趣味でも、仕事でも……なんでも良いので教えてください。今日はお誕生日が近いということで(12月8日)、少し良いドリップバッグのコーヒーをお持ちしました。コーヒーもお好きと聞いています。

どうもありがとうございます。コーヒーは好きなので嬉しいです。でもそこまで詳しくは語れないんですよ。僕は中途半端で趣味の幅が広いだけ。ワインへの興味はちょっとまた再燃してるかな。最近仲良くなった、よく時間を共にする友達がいて。その彼が若い時にワインを飲んでいなかったから、今から覚えたいと。やっぱり趣味を一緒に始めるとまた面白いじゃないですか。僕はワイン好きになったきっかけのワインを思い出して、自分が伝えられることもあるし、彼から学ぶことが多いし……新しい友達の影響でまたワインへの興味が盛り上がってますね。

――今日お酒をお持ちしようか、コーヒにするか、実は迷ったんです。

コーヒーは嬉しいですよ。僕もなるべく時間に余裕がある時は豆で買って自分で挽くんですが、ちょっと時間がなくなるとお店で挽いてくださいと希望を言って買ってきて、ほんとに時間がないとドリップバッグに、っていう感じになってくるんです。結構うちのコーヒーマシンが美味しくできるんですけど、ドリップバッグもこの間買ってきたら、とても美味しかった。ちゃんと作れば、美味しいんですよね。

実は僕がよく行く商店街にコーヒー豆を売ってるところがあって、行くと必ず「3時間待ち」とか言われるんです。だから1回も買ってないんですよ(笑)。どれだけこだわってるコーヒーの味なのかなと思っていて、前を通るたびにいつかそのコーヒーを買いたいなと思ってるのだけど。3時間分の甲斐があるのかな。でも、3時間も待つのは嫌ですよね(笑)。

――ワインに限らず、誰かに知識を教えることでの発見ってありますよね。

そう。それに今夢中になってる人って、成長の速度が早いじゃないですか。だだ、今ワインは値段が高すぎるから、趣味としておすすめと言いづらいところはあるんですよね。円安もあって、とんでもないことになっている。でもやっぱり趣味の1つとして本当に幸せな気持ちになれる、本当に僕はワインが好きだなって改めて再確認しました。それに、一緒に飲む人がいないとワインって楽しくないなあ。1人で飲むものではない、絶対そう思う。人がいて、料理もあって、初めて感動をもたらしてくれるものかなって改めて思ってます。

――吾郎さんディレクションのお店「BISTRO J_0」も今年、銀座から原宿に移転しましたね。

そう、以前より少し雰囲気が変わって、居心地がいいと思いますよ。場所が変わるとやっぱり違って見えてきますよね。お客さんとしていらっしゃる方の気分も変わると思います。

稲垣吾郎(いながき・ごろう)

1973年12月8日生まれ、東京都出身。アーティスト、タレント、ラジオパーソナリティなど幅広く活躍。俳優としては1989年に連続テレビ小説『青春家族』でドラマデビュー。翌1990年に『さらば愛しのヤクザ』で映画デビューを果たす。以降、ドラマ、映画、舞台などで見せた演技力が高く評価される。

文=石津文子
写真=平松市聖
スタイリスト=黒澤彰乃
ヘアメイク=金田順子

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