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「うまくいっている間が奇跡」夫婦のすれ違いを描いた著者からのメッセージ【著者インタビュー】

  • 2025.12.20

【漫画】本編を読む

専業主婦の彩子は、デザイン事務所で働く夫・裕介と、4歳の息子・大地の3人家族。仕事をこなしつつ家事と育児にも積極的な夫に不満はなく、幸せに暮らしていた。しかし彩子には最近とある悩みが。それは「夫と会話が広がらない」こと。息子が生まれたばかりの頃は夫婦でたくさん話をしていたのに、いつの間にこんな関係になってしまったの……?

夫婦の日常を妻と夫、それぞれの視点から描く『夫と会話になりません』(上野りゅうじん/祥伝社)。“完璧主義な夫と大ざっぱな妻”というふたりの行動や思考のリアルさが魅力で、つい自分を重ねながら読んでしまう。そんな本作が生まれた経緯や反響について、著者の上野りゅうじんさんにお話を伺った。

――会話が減っていた上に、口論もあってすっかり関係性が悪くなってしまった夫婦。しかし子どもの誕生日に両親が遊びにくるということで、夫・裕介は「その日だけ平穏な夫婦のふりをしよう」と妻・彩子に持ちかけます。最後のコマには大地くんの後ろ姿が描かれていて、事態を見ている大地くんが何を感じているか、どう動くかがこれからの展開の肝になりそうですね。

上野りゅうじんさん(以下、上野):漫画の中の大地くんは4歳。個人差はもちろんありますが「まだ小さいからきっとわかってない」「優しくごまかせばいい」という考えは案外通用していないかもしれない、という気持ちで描きました。

――確かに、子どもはこちらが思ったよりもいろんなことを理解していますよね。

上野:私自身、次男が7歳くらいの時に、2〜3歳くらいの頃のことを「あの時おもちゃが取れなくて僕は悔しかった」と語り出してびっくりしたことがあります。子どもって、大人が想像するよりもずっと多くのことを感じているんだなと。表現する言葉や態度が見つからないから、大人には伝わっていないだけだと感じました。

――11月には2巻が発売になりました。バリキャリの妻と主夫で画家の夫という組み合わせで彩子&裕介とはタイプが異なる夫婦です。どうしてこの設定になったのでしょうか?

上野:世間的に子どもが小さい間は大黒柱が夫である場合が多いことを考ると、役割が逆な2巻の主人公である夫婦は珍しいパターンかもしれません。これは男女逆にすると改めて見えてくるところもあるのではと思って設定しました。逆にしてみるとジェンダーロール故に違和感が出たり、相手の気持ちもわからないでもない気がしてくるというか…。

例えば、夫の言葉で「子育てを押し付けられたというより、祥子(妻)が働いてくれたおかげで、子育てに打ち込める貴重な機会が持てた」というセリフがあります。子育て=大変、妻にとっては当たり前…という世間の感覚の中で、夫として子育てに専念した彼はそういう視点にもなるのかな? と思って描きました。逆に子育てに専念している時期の妻側であっても「貴重な機会」と捉えると少しだけ気持ちが変わってくるような気もします。

――最後に、本作を手に取る方の中には夫婦のコミュニケーションについて悩んでいる方も多いと思います。その方にメッセージをお願いします。

上野:夫婦と言ってもそれぞれなので、正解はないのですが……。基本はやっぱり対話なのかなと思います。誰でも嫌なことからは逃げたくなるので、嫌になる前に、もつれた糸を解くことができたらいいですよね。「うまくいっている間が奇跡」であるとしたら……お互いに夫婦であることを諦めなければ、奇跡を長く味わい続けられるのかもしれません。

取材・文=原智香

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