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「アバター」で14歳の少女を演じたシガーニー・ウィーバー、次になりたいのは日本の巨匠監督?

  • 2025.12.18

2009年に3D映像革命を巻き起こし、現在も世界興行収入歴代1位に君臨するジェームズ・キャメロン監督の『アバター』(09)。13年ぶりの続編『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(22)も世界興収第3位の記録を保持している。そんな大ヒットシリーズの最新作『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』が12月19日(金)より公開となる。

【写真を見る】年の差29歳のシガーニー・ウィーバー&ゾーイ・サルダナ

1作目にグレース・オーガスティン博士として登場し、2作目では彼女の娘である少女キリをパフォーマンスキャプチャで演じたシガーニー・ウィーバーと、主人公ジェイク・サリーの妻でナヴィ族の強き母、ネイティリを演じたゾーイ・サルダナのインタビューをお届けする。

「私はキリには日本人的な部分があると思っているんです」(シガーニー・ウィーバー)

最新作でさらなる才能を開花させる14歳のキリを演じたシガーニーに、本作における役作りや作品選びのポイントについて訊いた。

エイワと強い絆を持つキリ。最新作でも神秘的な力を見せる! [c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.
エイワと強い絆を持つキリ。最新作でも神秘的な力を見せる! [c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

――キリを演じるのは2度目です。私たちは彼女のどんな新しい側面を見ることができるのですか?

「キリには自然をコントロールする力があり、それがどんどん大きくなっていることに彼女は気づきます。さらに、ほかの人とは異なり、エイワとつながることができるようになるんです。私はそういうキリの変化を、彼女の強さが増幅していると考えています。

日本の方と話しているからというわけではないんですが、私はキリには日本人的な部分があると思っているんです。日本の方は自然に敬意をはらい、自然と心を交わすでしょ。だからこそ、俳句を詠むことができるんですよね?そういう自然とのかかわり方はキリ、そしてナヴィ族の生き方に重なります。おそらくジム(ジェームズ・キャメロン)も意識しているんじゃないでしょうか。初めて彼とキリの話をした時『キリは森の少女であり、森そのもの』と言っていて、私は日本的な発想だと思いましたから。この3作目では、そういうキリらしさをより見ることができるんです」

――パフォーマンスキャプチャは誰にでもなんにでもなれる撮影技術です。これを使って演じたい実在の人物、小説のキャラクターがいれば教えてください。

「言うまでもなく、14歳のキリを演じるのが私にとってもっともエキサイティングなことです。でも、そうね…たぶん演じてみたいのはエレノア・ルーズベルト(合衆国第32代大統領フランクリン・ルーズベルトの妻)のような人物かしら…。時代を遡って昔の日本に行き、美しい剣士に扮したお姫さまというのにも憧れます(笑)。というのも、私はクロサワ(黒澤明)の大ファンなので、彼の世界に行ってみたいからです。いや、待って。パフォーマンスキャプチャならクロサワ本人にだってなれますよね?だったら私、クロサワがいいわ!」

主人公ジェイク・サリーを支える、少女キリを演じたシガーニー・ウィーバーと、妻ネイティリを演じたゾーイ・サルダナ [c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.
主人公ジェイク・サリーを支える、少女キリを演じたシガーニー・ウィーバーと、妻ネイティリを演じたゾーイ・サルダナ [c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

――あなたは、いまでもハリウッドの第一線で活躍しています。その秘訣はなんだと思っていますか?

「大きなひとつの理由は、やはりラッキーだったからです。そして、この前コミコンに参加した時、いろんな世代の女性たちに会ったんです。彼女たちは自分のお嬢さんやお孫さんを連れて来ていて、私に『あなたのやってきた仕事が、女性は強いんだということを見せてくれた。そして、自分自身の人生を思いどおりに生きることができることも教えてくれた』と言うんです。私は感動しました。彼女たちがまだ小さな女の子だったころ、私が演じたキャラクターが彼女たちを支えたのだということがわかったからです。役者として、誰かを幸せにすることができたのなら、それは本当にすばらしいことです。私自身、そういうキャラクターを演じたことで強くなったんです。なぜって、私は強い人間じゃないからです」

――それは意外です。

「強いどころかその逆なんですよ(笑)。強いからハリウッドで生き残れたわけではなく、出演する映画を選ぶ基準を『ストーリーを大切にする』と決めていたからかもしれません。いいストーリーを語れるのなら、それが大きな役であろうと小さな役であろうと関係ない。ジャンルも気にしなかったから、当時はほかの役者がやりたがらないSFなどもどんどん選んでいたんです。いまは大きなジャンルになりましたけどね。私の次の作品は、そのSFの『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』(2026年5月22日公開)です。子どもたちが喜ぶだろうという気持ちだけでなく、私がグローグーと一緒に仕事がしたくて出ることにしたんです。もしかしたら私、いまだに子どもみたいな趣味をもっているのかもしれませんね(笑)」

「ネイティリが果たしてどんな選択をするか?皆さんに楽しみにして欲しいです」(ゾーイ・サルダナ)

続いて、シリーズを追うごとに、ますます強さを見せつけるネイティリを演じるゾーイ。最新作が「ダーク」と言われている理由についての見解を教えてくれた。

最愛の息子を失った悲しみに打ちひしがれるネイティリ。彼女が選ぶ道とは? [c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.
最愛の息子を失った悲しみに打ちひしがれるネイティリ。彼女が選ぶ道とは? [c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

――シリーズも3作目です。しかもこれまでの2本は大ヒットを記録しています。「アバター」が世界中に愛される理由をあなたはどう分析しますか。

「共感できるストーリー、そして美しいビジュアルだと思います。それに、これはオリジナルのストーリーで、誰も聞いたことも見たこともない。ステキなサプライズに満ちていますからね。しかも、突き詰めると『アバター』は私たち人間の物語です。暴力が答えにならないことを教えてくれるだけではなく、母なる地球に生きる以上、地球を大切にしなければいけないことも教えてくれます。大切なテーマがたくさん含まれているからこそ、世界中の方が共感してくださるんだと思っています。私はそんなサーガの一部になれたことを心から光栄だと感じているんです」

――あなた自身、本作に出演して変わった部分はあるんですか?

「あります。それも大きく変わりました。『アバター』以前の私は自然に対してあまり気遣いしていませんでした。母なる大地は私たちに無償の愛を注いでくれると思っていたくらいですから。でも、『アバター』以降の私は、自然が“母”と呼ばれる理由がわかるようになったし、その美しさにも気づいたんです。いまでは資源の無駄使いや乱用、自然のバランスが狂う様子を目にすると、とても不安になってしまいます。いまは地球のことが心配で仕方ないんです」

第97回アカデミー賞では、『エミリア・ペレス』(24)で助演女優賞に輝いたゾーイ・サルダナ [c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.
第97回アカデミー賞では、『エミリア・ペレス』(24)で助演女優賞に輝いたゾーイ・サルダナ [c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

――それはすばらしい変化ですね。

「そういうことに意識を持ち、耳を傾けることができるようにしてくれたのが『アバター』シリーズです。皆さんと気候変動について会話し、世界にそのメッセージを拡げる“器”に私もなれると思っています」

――第3作は「ダーク」とも言われていますが、いかがでしょう?

「物語の始まりは、長男が亡くなった悲しみからまだ抜け出せていないサリー一家の姿からなので、そういう暗さは確かにあります。また、ネイティリだけではなく多くのキャラクターの心の底に秘めていた闇が引きずり出されてしまうんです。だから“ダーク”という言葉は正しいと思いますね。ネイティリは、自分の心を“怒り”に完全に支配させるかどうかという選択を迫られます。怒りを抱えたまま生き続けることは心が死んだも同然です。それは破滅にしかつながりません。愛する人たちのことを再び思い出し、自分を赦し、生き残った子どもたちのためにもスカイ・ピープルさえ赦さなければいけないんですが…。果たしてどんな選択をするか?皆さんに楽しみにして欲しいですね」

――子どもたちを演じている若い俳優たちが、現場の母親はあなただったと言っていますね。

「みんな本当に大きくなって…それを考えると感極まってしまうんですよ。(スパイダー役の)ジャック(・チャンピオン)なんて最初は私より背が低かったのに、いまや182cmもあるんですから!サリー一家の子どもたちと一緒にいると、私の母性本能が全開してしまいます(笑)」

【写真を見る】年の差29歳のシガーニー・ウィーバー&ゾーイ・サルダナ [c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.
【写真を見る】年の差29歳のシガーニー・ウィーバー&ゾーイ・サルダナ [c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

――キリは大先輩のシガーニー・ウィーバーが演じていますね。

「シガーニーは私が永遠に尊敬し続ける俳優のひとりです。いまでも彼女の前では緊張して気絶しないためにも、冷静に振舞うよう心掛けているんです。シガーニーと共演できるのは本当に最高です。私は彼女から多くのことを学ばせてもらいましたから。そんなシガーニーの母親が私って、この映画だからこそですよね(笑)。とてもすてきだなって思っているんですよ」

――あなたは『エミリア・ペレス』(24)でアカデミー賞助演女優賞を獲得しました。このプライズは演技に影響を与えましたか。

「いえ、そういうことはまったくありません。私はどの仕事においてもアプローチを変えることはないんです。準備段階であっても自分の120%を出し尽くしています。結局、そういうことでしか、自分が演じるキャラクターたちの心と体のなかに入り込めないからです。そのためには情熱と献身が必要なんです」

取材・文/渡辺麻紀

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