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口を閉じるだけで睡眠の質が上がる⁉ 冷えにも乾燥にも打ち勝つ冬の睡眠対策

  • 2025.12.18
口を閉じるだけで睡眠の質が上がる⁉ 冷えにも乾燥にも打ち勝つ冬の睡眠対策 9nong/PIXTA(ピクスタ)
口を閉じるだけで睡眠の質が上がる⁉ 冷えにも乾燥にも打ち勝つ冬の睡眠対策 9nong/PIXTA(ピクスタ)

冷えや乾燥が気になるこの季節は、睡眠の質が低下しやすい時期。「朝起きるとのどが痛い」「眠りが浅くて疲れが取れない」なんて方も多いのではないでしょうか? 実はそんな不調の原因として、“睡眠中の口呼吸”が潜んでいる可能性があります。口呼吸により睡眠の質が下がると、不快な症状だけにとどまらず、あらゆる病気の引き金になることもあるのだそう。口呼吸が招くさまざまな不調とその対処法について、みらいクリニック院長の今井一彰先生にうかがいました。

▶教えてくれたのは

今井一彰先生

今井一彰先生
今井一彰先生

みらいクリニック院長。内科医。口呼吸問題の第一人者として、診療や全国での講演などを通じ、口呼吸を鼻呼吸に改善する重要性を発信している。

睡眠中の口呼吸で冷えや乾燥、感染症のリスクが上がる

寝ている間はもちろんのこと、普段から無意識に行っている呼吸。でも「呼吸を間違ってたら元気にはなれない」と話すのは、内科医の今井一彰先生。

「人間が生きていくうえで一番大事なのは、酸素とエネルギー。つまり呼吸を間違えることは、食事を間違えているのと同じことです。ところが、食事の質にこだわる人は多いものの、空気にこだわる人はほとんどいません。空気清浄機などでこだわっているつもりでも、その空気をどこから取り込むのかということに関しては、全くの無頓着です。でも実は、空気はその取り込み方こそが非常に大事。鼻で呼吸するのと、口で呼吸するのとでは、体への影響が大きく異なります」

人間にとっての正しい呼吸法は鼻呼吸。完全な無意識下で行われる睡眠時の呼吸も、鼻呼吸と口呼吸では、その睡眠の質に雲泥の差が生じるそう。

「鼻呼吸は深くゆっくりとした腹式呼吸。横隔膜を使ってしっかり換気ができるうえ、鼻から取り入れた空気を温めて加湿したり、細菌やウイルスなどの異物を除去する機能も備わっています。いっぽう口呼吸は浅くて早い胸式呼吸なため、酸素が十分に行き渡らず、自律神経が乱れます。また、外気が直接肺に送られてしまうため、冷えや感染症をはじめ、さまざまな不調や病気のリスクも高まります」

■睡眠中の口呼吸がもたらすデメリット

外気をダイレクトに取りこむ口呼吸は冷えにつながる プラナ/PIXTA(ピクスタ)
外気をダイレクトに取りこむ口呼吸は冷えにつながる プラナ/PIXTA(ピクスタ)

・冷え

鼻呼吸では、鼻から取り入れた空気は鼻腔内で温められ、加湿されてから肺に届けられますが、口呼吸では乾燥した冷気がダイレクトに肺に送られます。いくら温かい布団で防寒しても、口呼吸だと体の内側から冷えてしまうことに。

・乾燥

睡眠中はほとんど唾液が出ません。鼻呼吸で口を閉じていれば、わずかな唾液で潤い続けることが可能ですが、口を開けた口呼吸では唾液が蒸発しやすくなり、口の中がカピカピに乾燥。のどの痛みや違和感を招きやすくなります。

・リラックスできない

鼻呼吸は深くゆっくりとした腹式呼吸のため、副交感神経が働きリラックス効果が得られます。いっぽう口呼吸は、浅くて速い胸式呼吸。緊張時にハアハアと浅い呼吸になるのと同じで、睡眠中もずっと緊張状態を強いられることに。寝ていてもリラックスできていないため、疲れも取れにくくなります。

・いびき、無呼吸

口呼吸で舌が落ち込んでしまうと、気道が狭くなりいびきや無呼吸につながります。すると脳に行く酸素の量が減少し、脳を休める深い睡眠(ノンレム睡眠)が得られにくくなります。睡眠時間が十分でも、睡眠の深度が浅いため、「寝ても寝ても寝足りない」「起きた瞬間から眠い」という状況に。

・風邪をひきやすい

口呼吸だと、鼻のブロック機能が働かず、外気がダイレクトに体内に侵入。細菌やウイルスも取り込みやすくなるため、寝ている間に風邪をひいてしまうことも。

口呼吸で風邪や感染症にかかりやすくなることも mits/PIXTA(ピクスタ)
口呼吸で風邪や感染症にかかりやすくなることも mits/PIXTA(ピクスタ)

・虫歯や歯周病

口呼吸で口腔内が乾燥すると、口の中を清潔に保つ唾液が奪われ、口腔内が酸性に傾きます。歯はpH5.5以下で溶け出すため、寝ている間に口腔内が酸性に傾き、むし歯や歯周病のリスクも上昇します。

だるい、イライラ、肌トラブル…。気になる不調も口呼吸が原因⁉

口呼吸は、肌トラブルやメンタルの不調など、一見無関係に思えるさまざまな不定愁訴とも関わりがあります。

「口呼吸は交感神経を緊張させるため、自律神経のバランスが乱れます。すると、めまいやだるさ、イライラや気分の落ち込みなど、あらゆる精神的な不調の一因となることがあります」

さらに、美容面にも悪影響が。

「口呼吸で口の中が渇くと、口腔内の細菌バランスが変わって体が炎症を起こしやすくなるため、シミやくすみの原因となることがあります。また、口呼吸で口が開き、舌の位置が下がった状態は、二重あご、ほうれい線、頬のたるみにつながる可能性も」

口が開いていると美容面にも悪影響を及ぼす kei.channel/PIXTA(ピクスタ)
口が開いていると美容面にも悪影響を及ぼす kei.channel/PIXTA(ピクスタ)

これらの不定愁訴は、加齢や更年期だから仕方ないと諦めてしまいがち。でも、もし口呼吸が原因だったら、呼吸を見直すことで改善されるかもしれません。

「実際、口を閉じて舌先を上あごにつける正しい舌位置に変えるだけでも、横顔がすっきりして見た目の印象が変わることが期待できます。リフトアップのために美顔器でコロコロやるのもいいけれど、正しい呼吸で内側から引き上げることも非常に大切です」

あなたは大丈夫?口呼吸危険度チェック

呼吸は無意識だからこそ、自覚しにくいもの。また、起きている時は鼻呼吸でも、寝ている時は口呼吸になっている人も多いそう。そこで口呼吸になっていないか、その危険度をチェック。ひとつでも当てはまれば、知らず知らずのうちに口呼吸をしている可能性があります。

□口を閉じた時、舌先が上あごについていない

□起床時に、のどの渇き、イガイガ、ねばつきなどの症状がある

□口臭を指摘されたことがある

□ほうれい線が深くなってきた

□唇が乾燥し、リップが手放せない

□舌の横にギザギザの歯型ができる

□口を軽く閉じたときに下あごに梅干し状のシワができる

女性は口呼吸になりやすい⁉ 口呼吸を招く生活習慣

コロナ禍のマスク生活で口呼吸になる人が増加 Sunny Side/PIXTA(ピクスタ)
コロナ禍のマスク生活で口呼吸になる人が増加 Sunny Side/PIXTA(ピクスタ)

そもそも口呼吸になるのは、口周りと舌の筋力が弱く、口がポカンと開いた状態になっているから。

「筋力が低下する原因としては、加齢もありますが、生活習慣も大きく関わっています。例えばコロナ禍ではマスク生活が続きましたが、実はマスクをしているだけで表情筋の動きは4分の1程度に落ち込んでしまうのです。さらにリモートでの仕事では、会話が減り、食事も簡素なもので済ませがち。表情筋を動かす機会が著しく減ったため、コロナ禍以降は口呼吸になる人がかなり増えた印象です。また、疲れやストレス、飲酒なども、筋肉を緩ませ、口呼吸を招きます」

今井先生によると、成人女性の約7~8割は口呼吸になっているとのこと。

「女性は妊娠・出産をきっかけに口呼吸になってしまうこともあります。おなかが大きくなると、ちょっと歩くだけでもハアハア息が上がるため、どうしても口呼吸になりやすいのです」

妊娠・出産をきっかけに口呼吸になるケースも多い Ushico/PIXTA(ピクスタ)
妊娠・出産をきっかけに口呼吸になるケースも多い Ushico/PIXTA(ピクスタ)

また、おしゃべり好きな人も口呼吸になる危険性が高いそう。

「話すことは表情筋を鍛えるのに役立ちますが、言葉を発するということは口呼吸になっているということでもあります。一般的に、女性は男性よりも会話量が多い傾向にあると言われており、その分口が開いている時間が長くなることで、男性よりも口呼吸に陥りやすいと考えられます」

お口ポカンを改善する「あいうべ体操」

口を閉じるために必要なのは口周りと舌の筋肉。それらを簡単に鍛えられるのが、今井先生考案の「あいうべ体操」です。

「舌を本来の正しい位置に戻すことで、自然に口を閉じられ、鼻呼吸を身につけられるようになります。最近では学校や高齢者施設などでも取り入れられているんですよ。口を大きく『あ~、い~、う~、べ~』と動かすだけと、老若男女を問わず誰でも簡単にできるので、ぜひご家族でやってみてください。1日10回を3セットやるのが目安。数週間ほどで舌の位置の変化を実感する人もいます」

■「あいうべ体操のやり方」

①「あー」と口を大きく開く

なるべく縦の楕円形に近くなるようにして、のどの奥が見えるくらい口を開ける

②「い~」と口を横に開く

前歯が見え、頬の筋肉が両方の耳の前による感じがするくらいが目安

③「う~」と口をとがらせる

思い切り唇を前に突き出すようにする

④「べ~」と舌を伸ばす

舌の先を舌あごの先端まで伸ばすような気持ちで舌を出す

あいうべ体操
あいうべ体操

物理的に口を閉じられる「マウステープ」で睡眠時の鼻呼吸をサポート

起きている間は意識して口を閉じることができても、寝ている間は完全に無意識で制御不能。

「寝ている間の口呼吸を防ぐには、口をテープで閉じるマウステープを取り入れるのも一つの方法です。唇と舌は連動して動くため、マウステープで物理的に唇を閉じていれば、舌は気道の方に落ち込むことはありません。舌を正しい位置にキープしておくことにもつながるため、鼻呼吸を意識しやすくするためのサポートになります」

筋肉を鍛えるにはどうしても時間がかかってしまいますが、マウステーピングなら物理的に口が開きにくくなります。

「実際に、使った翌日から『目覚めがスッキリした』と感じる方もいらっしゃいますね。特に、口の中が渇かなくなるため、『のどの違和感がなくなった』という声も。また、お酒を飲んだ時に使用しているという方の中には、いびきが軽減され、よく眠れるようになったと感じる方もいるようです」

サージカルテープで手軽にマウステーピング
サージカルテープで手軽にマウステーピング

■マウステーピングの方法と注意点

サージカルテープやマスキングテープを5㎝の長さに切り、口の中央に縦に貼ります。肌が弱くて心配な方は、肌に優しいタイプなど専用のマウステープも市販されているので、そういったものを使用するのもおすすめです。

今井先生によるマウステープの貼り方お手本
今井先生によるマウステープの貼り方お手本

テープを貼って寝るのが少し怖く感じるようなら、起きている時に貼ったまま30分ほど過ごしてみましょう。意外と支障なく過ごせることがわかれば、そのまま寝ても問題ありません。

ただし、鼻水や鼻づまりのひどい時は、息苦しくなることがあるため使用を避けましょう。また、慢性的な鼻づまりやアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎など、鼻にトラブルがある人は、そちらの治療を優先したうえで、必ず医師と相談してから行うようにしてください。

旅のお供にも!マウステープで年末年始を元気に乗り切ろう

筋緊張が緩む飲酒もお口ポカンの原因に ABC/PIXTA(ピクスタ)
筋緊張が緩む飲酒もお口ポカンの原因に ABC/PIXTA(ピクスタ)

なにかと忙しく、疲れやストレスがたまりがちな年末年始。お酒を飲む機会も増えるため、口呼吸になる危険性が増す時期でもあります。

「口呼吸を根本的に直すには、やはり口周りの筋肉を鍛えることが第一です。ただ、疲労や飲酒などでどうしても就寝時に口が開きやすい時などは、マウステープで口を閉じてあげることも一つの方法です。冷えや乾燥、いびきの軽減が期待でき、睡眠の質の変化を感じる方もいます。また、旅行に行かれる方も多いと思いますが、旅先で疲れが取れないということもよくありますよね。マウステープをしてしっかり眠ると、翌日も元気に動けるようになるので、旅の必需品として携行されることをおすすめします」

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疲れがたまって体調を崩しやすい年の瀬。冷えや乾燥、ウイルスなどから身を守るには、口を閉じて眠ることが重要です。良質な睡眠を手に入れて、元気に冬を乗り切りましょう。

文=酒詰明子

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