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「死にたいかも…」優等生の娘が突然不登校に。理由を言わない娘と見守るしかない親、双方の苦しみを描いたセミフィクション【書評】

  • 2025.12.17

【漫画】本編を読む

ある日突然、我が子が学校に行かなくなってしまったら――そのとき、あなたはどう向き合うだろうか。『娘に死にたいと言われました 不登校の理由』(とーやあきこ/KADOKAWA)は、前触れもなく唐突に「死にたい」と言って不登校になった娘と、その理由を探る母親の苦悩を通して、親子の葛藤と再生を描くセミフィクションだ。

「あーあ、なんかもう…死にたいかも」

優等生だった小学5年生の娘はそう呟いた日を境に、学校に行かなくなってしまう。成績も良く友達もたくさんいて、親とも良好な関係を築いていたはずの娘が、なぜ学校を休むようになったのか。原因もきっかけもわからないまま、ただ不登校という現実に直面する母親。どうして? 何がいけなかったの? 自分を責めながらも娘のそばに寄り添おうともがき、向き合っていく。

本作の大きな特徴は、不登校の理由が簡単には明かされないことだ。娘はもちろん、ママ友に聞いても、担任に聞いても、その理由はわからない。知ろうとすればするほど、娘の世界がわからなくなっていく母親の姿に胸が締めつけられる。突然学校へ行けなくなってしまう娘の「きっかけのなさ」が、恐ろしく感じられ、「うちの子はどうだろうか…」と他人事ではいられなくなる緊張感を生み出す。

友達が訪ねてきてくれたことをきっかけに、娘が一度だけ登校するという、物語中盤の描写は小さな希望の光だ。しかしその直後の出来事は、期待を裏切られる痛みとともに不登校の問題が簡単に解決できるものではないことを教えてくれる。

学校に行けず苦しむ娘と、得体の知れない不安に消耗していく母親。互いに逃げ場のない日々を描いた本作は、「最近、我が子の考えてることがよくわからない」と感じている親たちに手にとってほしい一冊だ。

文=坪谷佳保

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