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深夜のコンビニ、刺青の男が入店して… 買い物中の警官にかけた言葉に、ジーンとくる

  • 2025.12.21

『人は見かけによらぬもの』という言葉があります。

一見、近寄りがたい雰囲気の人が、実はとても親切だったり、逆に穏やかで優しそうに見えた人が、思いもよらない一面を持っていたり…。

私たちは日常の中で、知らず知らずのうちに、見た目や第一印象で人を判断してしまいがちです。

筆者が以前、警察官として勤務していた頃、筆者はこの言葉を強く実感する出来事を何度も経験してきました。

警察の仕事は、時に人を疑うことが求められます。

相手にその気配を悟らせることはなくても、常に最悪の事態を想定しながら行動する…そんな意識が自然と身につく仕事でもありました。

その価値観を改めて考えさせられたのが、深夜のコンビニエンスストア(以下、コンビニ)での出来事です。

深夜のコンビニで出会った『イカツい男性』

その日は深夜の交番勤務でした。事案対応が続き、ようやく休憩を取れる時間ができたため、小腹を満たそうとコンビニへ向かうことにしました。

時刻は深夜0時頃。店内は静かで、落ち着いた空気が流れていました。

念のため店員に声をかけ、特に異常がないことを確認したうえで、「少し買い物をさせてください」と伝え、筆者はカップ麺コーナーで商品をチェック。

すると、身長180cmほどで体格のよい男性が来店してきました。

腕には入れ墨が見え、正直なところ、かなりいかつい印象です。深夜のコンビニという状況もあり、自然と警戒心が高まりました。

※写真はイメージ

やがて商品棚越しにその男性と目が合います。筆者は職業柄、表情には出さず、笑顔で「こんばんは」と声をかけました。

しかし、男性は険しい表情のまま、こちらへ近づいてきたのです。

内心では「これは絡まれるかもしれない」「攻撃されるかもしれない」と、最悪のケースを想定します。

にこやかな態度は崩さず、しかし万が一の事態に備えて、間合いだけは意識しながら身構えていました。

男性からかけられた『意外な一言』

緊張したまま様子をうかがっていると、男性は筆者の目の前まで来ました。

距離が一気に縮まり、思わず身体に力が入ります。

次の瞬間、男性の口から出たのは、想像していたものとはまったく違う言葉でした。

「ラーメン、食うんすか?」

拍子抜けすると同時に「え?あ…そうですね。カップ麺にしようかなと思っていたところです」と答えると、男性は「何系が好きっすか?」と続けて聞いてきました。

「こってり系が好きですかね」と返すと、男性は商品棚を指さしながら、「ああ、それならこれがおいしいですよ。これ、オススメです」と教えてくれたのです。

※写真はイメージ

その瞬間、張り詰めていた緊張の糸が、すっとほどけていくのを感じました。「ありがとうございます。買ってみます」と伝えると、男性は軽くうなずき、レジへ向かいます。

そして店を出る際、「遅い時間まで大変っすね。ご苦労さまです」と一言、声をかけて帰っていきました。

見た目ではなく『行動』を見る

警察官の仕事は、人を疑うことが必要な場面も少なくありません。それは、周囲の安全を守るために欠かせない意識でもあります。

しかし、長く現場に立っていた中で、筆者が大切にするようになった視点があります。

それは、見た目ではなく、「不自然な振る舞いはないか」「違和感はないか」と、言動に不自然な点がないかを見ること

この男性は外見こそ強面だったものの、実際には穏やかで、自然な形で気遣う言葉をかけてくれました。

その一つひとつの行動から、不審な点は感じられなかったのです。

温かい言葉は人を救うことも…

また、張り詰めた緊張感の中で働く警察官にとって、何気ない労いの一言は、想像以上に心に残ります。

「怖い」「近寄りがたい」といったイメージを持たれがちな警察ですが、実は温かい言葉に救われることも少なくありません。

『人は見かけによらぬもの』という言葉は、ありふれて聞こえるかもしれません。しかし、深夜のコンビニでの出来事は、その意味をいろいろな角度から改めて実感するきっかけとなりました。

※写真はイメージ

見た目だけで人を判断してしまいそうになった時こそ、一度立ち止まり、その人の言動に目を向けてみる…。

深夜のコンビニで交わした短いやり取りは、今でも筆者の中で、大切な経験として残っています。

[文・構成/りょうせい]

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