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シアーシャ・ローナン、自身もアルコール依存症だったと語る 最新作で依存症から立ち直ろうとする生物学者役

  • 2025.12.16
映画『おくびょう鳥が歌うほうへ』ポスタービジュアル (C)2024 The Outrun Film Ltd., WeydemannBros. Film GmbH, British Broadcasting Corporation and StudioCanal Film GmbH. All Rights Reserved. width=
映画『おくびょう鳥が歌うほうへ』ポスタービジュアル (C)2024 The Outrun Film Ltd., WeydemannBros. Film GmbH, British Broadcasting Corporation and StudioCanal Film GmbH. All Rights Reserved.

シアーシャ・ローナン主演の映画『おくびょう鳥が歌うほうへ』より、シアーシャがヒロインと同じくアルコール依存症だったと語るインタビュー映像「シアーシャ・ローナン×パーパ・エッシードゥ~アルコール依存症を語る~」、本作を鑑賞した著名人からのコメントが到着した。

【写真】「シアーシャ・ローナン」フォトギャラリー

本作は、スコットランド・オークニー諸島の厳しくも美しい自然を舞台に、著者エイミー・リプトロットが自らの「再生の旅」を綴り、イギリスでベストセラーとなったノンフィクション回想録「THE OUTRUN」を映画化。主演兼プロデューサーのシアーシャ・ローナンが、『システム・クラッシャー』のノラ・フィングシャイト監督と初めてタッグを組む。

主人公のロナは、ロンドンでの学生生活を経て、自由と刺激を求めるあまり大都会の夜の世界へと傾倒していく。やがてその自由は制御を失い、アルコール依存へと変わり、人間関係を壊し、心身までも蝕む日々を送るようになる。恋人との別離、暴力的な体験、入院などを経て人生が限界を迎えたロナは、依存症の治療施設に入所。90日間のリハビリプログラムを終え、断酒生活を始める。

そして彼女が向かったのは、かつて自身が育ったスコットランド北部のオークニー諸島。野鳥保護団体に勤め、朝晩の決まった時間にフィールドワークへ出て、稀少種であるウズラクイナの鳴き声を聴き取るという地道な作業に従事する。誰とも言葉を交わさない孤独な時間の中で、ロナは少しずつ自らの内面と向き合い、自然とともに静かな再出発を図っていく――。

シアーシャは主演でありながら、自身初のプロデュース業も兼任し、キャリア最高峰とも言える成熟した深みと圧倒的な内面性をたたえた演技を披露。本作でアイルランド映画テレビアカデミー賞(IFTA)で主演女優賞、ロンドン映画批評家協会賞でブリティッシュ/アイリッシュ演技賞ほか数々の主演女優賞を受賞した。

今回解禁されたインタビュー映像「シアーシャ・ローナン×パーパ・エッシードゥ~アルコール依存症を語る~」は、シアーシャと、主人公ロナの恋人役デイニンを演じたパーパ・エッシードゥが、アルコール依存症や作品について語るもの。

インタビュー映像で、配偶者の俳優ジャック・ロウデンと共に初プロデュースを手掛けたシアーシャは、主人公ロナを演じたいと思った理由を「私自身も依存症に苦しんだから。私の場合もアルコールだった」と告白。「依存症は人生に痛みや悲しみをもたらした。この病気を別の角度から探求したいと思った」と自身の経験にも照らし合わせながら、制作の経緯を語った。依存症患者を演じたことについては「個人のあらゆる面を探求することができたのは役者冥利に尽きる」とコメント。制作面と演技面、両軸での自身の新しい挑戦に満足している様子を見せた。

ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーで黒人として初の主人公ハムレット役を務め、現在制作中のHBOのドラマ版『ハリー・ポッター』ではセブルス・スネイプ役に起用されたことも大きな話題を呼んだパーパは、アルコール依存症を「当事者の内面に注目しがちだけど、実際は恋人や友人、家族との関係にも影響する。外に広がる問題だ」と指摘し、「だから(劇中の)2人の間の距離を表現し、体現しようとした」と語る。

演技について特に分析的に読み解くことを大事にするというパーパは「深刻な関係を経験した友人や、回復期の人たちと話した」と、監督やほかの俳優陣と同様、現場でのリサーチを重ねたと述懐。そして彼らの多くは「関係を断つのではなく関係を保つための努力」を語っていたという。劇中のデイニンも、彼の言うところの「ただ絶望して去るのではなく、関係を守ろうともがく姿」に、多くの観客は胸を引き裂かれる想いになる。

シアーシャも昔からパーパの大ファンだったと明かし、最初の読み合わせの段階から「すぐに化学反応が生まれた。笑いやユーモアの感覚が合った」と振り返る。「特に即興が多い作品だし、相性の良し悪しが画面に表れやすい」と考え、その上で彼が適役であったと断言している。

そんなシアーシャから絶大な信頼を寄せられたパーパは「関係性を一定の形に当てはめたり、失敗した関係だとか決めつけないことが大事」と穏やかに語り、本作での演技について「深く愛し合う2人を想像し、生きてみようとした。互いを必要とする恋人たち。批判的だったり距離のある関係ではなく、深く親密な関係を表現しようとしたんだ」と語っている。

映画『おくびょう鳥が歌うほうへ』は、2026年1月9日より全国順次公開。

※鑑賞した著名人からのコメント全文は以下の通り。

<コメント全文>

■金子由里奈(映画監督)

映画を観たあと窓を開けると、近所の木から知らない鳥が飛び立った。いろんな音が耳に入ってくる。生き物の気配、街のざわめき、渡り鳥の記憶。地球の音は、いつもひとりを寿いでいることに気づかせてくれる映画だった。

■山崎まどか(コラムニスト)

シアーシャ・ローナンの演じるヒロインはいつも翼を持っている。打ちのめされても地上に安住するのではなく、もう一度飛び立つために再生を求めて厳しい環境で身を清め、鳥の声に希望を探す。それが翼を持つものの定めなのだ。

■信田さよ子(公認心理師・臨床心理士)

女性とアルコール依存症、そして回復。ともすれば残酷で悲惨さだけが強調されがちなテーマだが、本作は違う。お酒をやめ続けることがどれほど困難かをリアルに描きながら、それでも画面から伝わってくるのはすがすがしいまでの美しさと深い感動である。

■杉野希妃(俳優・監督・プロデューサー)

シアーシャ・ローナンは、ここで演じるのではない。未完成の生が、恐ろしいほど生々しくそこにあった。彼女はやがて自然の息づきとなり、風を呼び、海を震わせ、風景の奥底に沈んでいたリズムを呼び覚ます。その融和の先に置かれた、物語終盤のささやかな贈り物が、静かに心を揺さぶる。

映画『おくびょう鳥が歌うほうへ』インタビュー映像

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