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「アバター」サム・ワーシントン、J・キャメロンから贈られた激励を明かす「私は技術を進化させる。君たち俳優は演技を進化させてくれ」

  • 2025.12.16

2009年に3D映像革命を巻き起こし、現在も世界興行収入歴代1位に君臨するジェームズ・キャメロン監督の『アバター』(09)。13年ぶりの続編『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(22)も世界興収第3位の記録を保持している。そんな大ヒットシリーズの最新作『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』が12月19日(金)より公開となる。

【写真を見る】ワールドプレミアにシックなスーツ姿で登場したサム・ワーシントン…やはり素顔もかっこいい

元海兵隊員で人間の身体を捨ててナヴィとして生きることを選んだ、主人公のジェイク・サリーを演じるサム・ワーシントンが、最新作の始まりから、サリー一家が戦う理由への考察、さらに、キャメロン監督との撮影時のエピソードまで語ったインタビューをお届けする。

「本当にパンドラに連れて行かれたような感覚を憶えるんじゃないでしょうか」

――『ファイヤー・アンド・アッシュ』の脚本を初めて読んだ時の感想を教えてください。

「とても感情を揺さぶられてしまいました。なぜなら、この第3作の始まりは2作目『ウェイ・オブ・ウォーター』のラスト、僕が演じるサリーとネイティリ(ゾーイ・サルダナ)の長男ネテヤム(ジェイミー・フラッターズ )が亡くなった心の傷と悲しみが癒えてない状態からスタートするからです。『ウェイ・オブ・ウォーター』の最後の2週間後くらいでしょうか。あのラストのヘビーなトーンが続くことで、より深みと複雑な陰影が加わったと感じました。2作目とこの3作目はひとつの物語として続いているため、その脚本は合わせて400ページにも及んでいます。本当に読み応えたっぷりでした」

12月19日(金)より日米同時公開となる『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』 [c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.
12月19日(金)より日米同時公開となる『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』 [c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

――今回はサブタイトルどおり“火”と“灰”が登場し、さらに新しい種族であるアッシュ族も初登場します。パンドラの世界が拡がるんですね?

「そうです。1作目では森林、2作目ではそれに海を加えて世界を拡大し、本作ではアッシュ族も出てきてパンドラがもっともっと拡がるんです。ジム(ジェームズ・キャメロン)は昔から確固たるビジョンをもつフィルムメーカーで、自分が語りたいストーリーをもっともよい形で語るためのツールとしてテクノロジーを進化させてきました。だから、ビジュアルはいうまでもなく最高です。おそらく皆さん、その世界にどっぷり浸かってしまい、本当にパンドラに連れて行かれたような感覚を憶えるんじゃないでしょうか。

でも、映画はそれだけじゃありません。そういうビジュアルの向こうには皆さんが感情移入するキャラクターがいます。彼らは皆さんが日常生活で感じている葛藤や喜びを抱えています。核の部分にこそ現実味を…それを忘れてないのがジムのスゴさであり、このシリーズが観客を魅了し続ける理由だと思っています」

最新作でサリー家の前に立ちはだかることになる火の部族、アッシュ族のヴァラン [c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.
最新作でサリー家の前に立ちはだかることになる火の部族、アッシュ族のヴァラン [c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

「ジムの言葉を借りるなら『私は技術を進化させる。君たち俳優は演技を進化させてくれ』ということです(笑)」

――ジェイク・サリーを演じるのは本作で3度目になります。あなたにとって同じキャラクターを演じるおもしろさと難しさを教えてください。

「おもしろいのはやはり、そのキャラクターの成長を演じられる点にあると思います。僕が成長したようにジェイクも成長する。誰かを演じるそのプロセスのなかで自分のこともより知るようになるんです。本作で、ジェイクが家族に対する保護意識を強めていくのは、僕自身の考えが増幅された形で表現されているところもありますね。

最新作では、トルーク・マクトとして帰還するジェイク [c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.
最新作では、トルーク・マクトとして帰還するジェイク [c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

彼を演じるのを飽きることなんてありません。なぜならジムは同じ映画を撮り続けることで、キャラクターが変化せずに息詰まってしまうのを嫌う監督だからです。今回のジェイクは戦うべき価値とはなにかを探求します。ジムはその旅路をとても新鮮なものにしてくれるので、常に刺激的なんです。もうひとつ、難しさに関しては、よりリアルな感情面での演技を求められたところですね」

――というと?具体的に教えてください。

「本作では、新しいパンドラの側面を見ることで世界観が深まりますが、それと同じようにキャラクターの内面をどこまで深く追求できるのかをジムに求められました。彼の言葉を借りるなら『私は技術を進化させる。君たち俳優は演技を進化させてくれ』ということです(笑)。僕が本作でもっともすばらしいシーンのひとつだと思っているのは、サリーとネイティリがテントのなかであることについて話しているところです。2人は、いま直面しているつらい現実について話し合い、再び愛を見つけようとするんです。僕とゾーイは、お互いの感情をとことん引き出すとてもいい演技ができたと思います。僕は本当に心を動かされてしまいましたからね。ジムが背中を押してくれたからこそできたんだと思っています」

――そういう演技についてキャメロンは細かく指示を出すほうなんですか?

「まったく反対です。ジムは、役者自身になにかを発見してもらい、自分自身だからこその要素を演技に持ち込んでもらいたいと考えています。そのうえで監督として、役者が加えてくれたディテールにさらに手を入れるんです。だからキャラクターはより複雑でリアリティのある存在になれる。ジムは本当に“人間”を理解していると思いますよ」

――ということは今回、とてもドラマ部分が濃いというか深いんですね?

「まさにそうです!サリー一家は悲しみを抱えたまま戦うんです。でも、僕はこれを“喪失についての映画”だとは捉えていません。そこからどう立ち直るのか、立ち直るためにはどんな強さが必要なのかを描いた作品です。愛する家族のために戦う姿を描きつつ、彼らはなぜ戦うのかも示している。とてもパワフルな映画になっていますから!」

「地球はひとつだけ。絶対に守らなければいけないんです」

――「アバター」シリーズにはエコロジカルな要素がたくさんあります。そういうキャメロンの理念や価値観に影響を受けましたか?

環境保全などのテーマも内包する「アバター」シリーズ [c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.
環境保全などのテーマも内包する「アバター」シリーズ [c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

「僕はオーストラリア出身で、物心ついた時からずーっとサーフィンをやっていますから、長い間、海洋の清掃活動にはかかわっています。エコロジーにはすでに敏感だったといえるかもしません。ジムの影響でいうと、僕は11年前から肉をいっさい食べていないんですよ。そのころ、ジムに地球に関するドキュメンタリーを観せてもらったのがきっかけです。また、ジムは南アメリカの奥地や、その他の国の秘境等を探検していて、そこで経験したこと見聞きしたことなど、本当にいろんなことを教えてくれる。そういう映画や話に大きな影響を受けて、肉を断つことにしたんです。

そうそう、撮影スタジオのケータリングはビーガン(完全菜食主義)料理でした。ジムは奥さんの影響でビーガンになったからなんですが、僕はそのチョイス、とてもいいと思いました。料理だけではなくセットそのものもエコフレンドリーで、ジムは驚くほど徹底していました。この映画は家族連れて観て楽しめる映画です。環境問題に触れるような映画を作るのであれば、それにふさわしい枠組みで制作されるべきだと僕は思います」

最愛の息子を失った悲しみにから立ち直ることができないネイティリ [c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.
最愛の息子を失った悲しみにから立ち直ることができないネイティリ [c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

――ビーガンではない人は困ったんじゃないですか?

「いやいや、別にジムはそういう人を説教するようなことはなかったと思いますよ。ちゃんと肉料理も出されていましたから」

――本作では地球はもう人間の棲める星ではなくなったという設定です。そういう未来をどう思いますか?

「先日、息子に『お前の時代で世界を修復して欲しい、なんてお願いは到底できないなあ』と言ったんですよ。僕たちの世代の失敗のせいで、もはやその段階を通り越してしまったかもしれませんから。僕らが彼らに残す世界がどうなっているのかということは、子どもを持つ親なら誰でも考えることだと思います。そして、『アバター』シリーズを観ている人たちも。地球はひとつだけ。絶対に守らなければいけないんです」

【写真を見る】ワールドプレミアにシックなスーツ姿で登場したサム・ワーシントン…やはり素顔もかっこいい [c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.
【写真を見る】ワールドプレミアにシックなスーツ姿で登場したサム・ワーシントン…やはり素顔もかっこいい [c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

――あなたの仕事だけでなく、生き方そのものにも「アバター」シリーズはとても影響を与えているようですね。

「シリーズにかかわった人たちは僕にとって友達というよりも第2の家族のようなものです。彼らと一緒にすばらしい物語を皆さんに届けることができて本当にうれしくってたまらない。それにしても、僕はとてもラッキーですよね。ジムのような稀代のビジョナリー(先見の明をもってる者)と一緒に仕事をやっているんですから。自分が俳優を始めたころに、『君はいつかジェームズ・キャメロンのような監督と超大作をつくるようになるだろう』なんて言われても信じなかったと思いますよ(笑)。だから、これまでの旅路に対してとても謙虚な気持ちで感謝しているんです」

取材・文/渡辺麻紀

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