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任天堂の聖地巡礼へ。元本社ビルが当時の空気はそのままに、モダンに生まれ変わった!ホテル「丸福樓」で過ごす上質な京都の休日

  • 2025.12.15

創業当初カルタや花札を製造していた任天堂の元本社ビルが、リノベーションしてホテルになっているのをご存じだろうか。名前は任天堂が株式会社として設立された際の商号「丸福株式会社」にちなんで「丸福樓(まるふくろう)」。「聖地巡礼」の感覚で泊まりに来る人もいれば、1900年代初期のアール・デコを目当てに訪れる建築ファンもおり、利用客は幅広い。その魅力を探るべく、見学できるのは宿泊客のみというホテルの内部に入らせてもらった。

ホテル玄関には山内任天堂の表札がかかる
ホテル玄関には山内任天堂の表札がかかる

当時の内装を残したまま本社ビルがホテルに

任天堂の創業は1889年。京都市下京区の鴨川にかかる正面橋すぐ近くに店舗を構え、1930年、同じ場所に本社ビルを建てた。かつてこの一帯には五条楽園と呼ばれる花街があったが、2010年の一斉摘発で遊郭は廃業。今では、リノベーションしたおしゃれなカフェや宿があちこちにオープンしていて、京都で最もおもしろい地域のひとつとなっている。

そのなかでも注目したいのが、2022年にオープンした丸福樓だ。内装や建築様式は従来の姿を可能な限り残してほしいという創業家・山内家の要望のもと、リノベーションと運営を任されたのは株式会社プラン ドゥ シー。これまでにもさまざまな歴史的建造物をリノベーションしてきた同社の手によって、任天堂の元本社ビルは1930年代からあった3棟に新築棟を加えた計4棟18室のラグジュアリーなホテルに生まれ変わった。

 ゲストラウンジでは当時のソファに座れる
ゲストラウンジでは当時のソファに座れる

歴史のなかに革新的な技術を取り入れた事務棟

まず案内してもらったのがホテルの入口がある事務棟。「山内任天堂」の表札がかかる玄関から中に入ると、当時のままのタイル張りの廊下が続く。大理石の壁のデザインが美しい。左手には当時の温度計や請求書受が飾られているレセプションがあり、レトロな調度品は眺めているだけでも楽しくなる。その向かいにあるゲストラウンジは、もともとは応接室として使われており、現在も当時のソファが残っている。

2階に上がるとデジタルアートがお出迎え。スクリーンの前に立つと、世界中の建造物が次々と映し出されるのだが、これらの映像はすべてAIがデザインした架空のものだ。そのほか、2階にあるのはセルフのバーカウンターとライブラリー。基本的に丸福樓での宿泊は、朝食、夕食だけでなく、軽食やドリンクが自由に楽しめるオールインクルーシブとなっており、こちらのバーカウンターもいつでも利用可能だ。

AIを駆使したデジタルアート
AIを駆使したデジタルアート

ライブラリーは、任天堂を有数の国際企業にまで成長させた創業家・山内家の理念を表現したこだわりの空間で、その名も「dNa」。壁面に広がる棚には、歴代のゲーム機とともに、二代目社長の本棚にあった片目のだるまが置いてあったり、三代目社長の創業理念に基づく「独創」の二文字が描かれた鏡のオブジェが飾られていたり。創業地ならではの歴史のなかに革新的な技術を取り入れた丸福樓らしいスペースとなっている。

片目のみが描かれただるまや、「独創」のオブジェが並ぶ
片目のみが描かれただるまや、「独創」のオブジェが並ぶ

創業家の妻が愛した青が際立つ住居棟

当時の壁紙などを張り合わせて作ったアオサギと天井を泳ぐ魚のオブジェが配置された廊下を抜けて、事務棟をさらに奥に進む。ちなみにこの廊下は近くを並行して流れる鴨川をイメージしているそうだ。新築棟を通り越して先に案内してもらったのが住居棟と倉庫棟だ。

魚のオブジェは鴨川をイメージしている
魚のオブジェは鴨川をイメージしている

住居棟は実際に山内家が住居として使用していた建物で、入口には表札の跡が残っている。入って右にある客室「ジャパニーズスイート」は、当時と変わらない和室の間取りとなっており、創業家が住んでいたころの面影が残っている。この棟で印象的なのは、なんといっても青い壁と青いフローリングだ。本社ビルを建てた二代目社長の妻・貞は洒脱な人物で、当時では珍しかった洋風の壁紙を好んだという。特に青色が好みで、壁紙の下から発見された別の壁紙から抽出した青が、現在の住居棟の壁とフローリングの基調となっている。

ジャパニーズスイートの間取りは当時のまま
ジャパニーズスイートの間取りは当時のまま

2階に行くと客間として使われていた「スーペリアキング」がお目見え。暖炉の足元にある希少な泰山タイルと天井装飾は当時の設えのままだ。青いタイルに合わせてカーテンの色も青で統一されている。

客間として使われていたスーペリアキング
客間として使われていたスーペリアキング

続いてホテルの一番奥に位置する倉庫棟へ。既存3棟のうち、最も早くに完成した建物で、1階中央には商品を運んでいた当時のエレベーター、右側の壁には配電盤が残っている。住居棟と倉庫棟では、ビルが建った当時の内装がより強調されており、実際に客室に泊まれば、当時の空気感がより味わえそうだ。

倉庫棟のエレベーター
倉庫棟のエレベーター

アール・デコと調和する安藤忠雄の現代建築

最後に案内してもらったのは安藤忠雄建築による新築棟。建物の外側は安藤建築の特徴であるむき出しのコンクリートでできており、いかにも現代的だが、色合いや質感は他の3棟と見事に調和している。

1階はダイニングラウンジになっており、壁に掛かる安藤忠雄さんのスケッチを見ていると、まるで小さな美術館にいるような錯覚になる。ちなみに壁に掛かっているのは、中之島公会堂の改造計画として提案された「中之島プロジェクトII(アーバンエッグ)」の設計図だ。実現することのなかったプロジェクトの設計図が間近で見られるのも、安藤忠雄さんが手掛けた新築棟ならでは。こちらではオリジナルクラフトビール「0296ALE(マルフクロウエール)」も味わうことができる。ビールを飲みながら特別な空間に浸るのもおすすめだ。

実現しなかった安藤忠雄さんの建築「中之島プロジェクトII(アーバンエッグ)」の設計図
実現しなかった安藤忠雄さんの建築「中之島プロジェクトII(アーバンエッグ)」の設計図

新築棟で注目したいのは、丸福樓の新旧が一度に味わえる豪華なスイートルーム、その名も「丸福樓スイート」。ゆったりしたベッドルームと、緑色を基調にしたクラシックな雰囲気のリビングテラス、さらに屋上ではバレルサウナが楽しめる。なんとベッドルームの壁面には安藤忠雄さんの直筆サインがしたためられている。

緑と木目を基調にした丸福樓スイートのリビング
緑と木目を基調にした丸福樓スイートのリビング

ホテル内部を案内してもらって感じたのは細部へのこだわりだ。窓枠、タイル、調度品などなど、さまざまな細部に語るべきポイントがあり、飽きることのない深みのあるホテルだという印象を持った。2025年11月には建物の一角に新たに「天ぷら まるふく」がオープンした。歴史的建造物でありながら進化し続ける丸福樓。再訪すればまた新たな発見があるかもしれない。

施設情報

丸福樓

住所:京都市下京区正面通加茂川西入鍵屋町342番地

アクセス:【電車】JR京都駅から徒歩約15分、京阪本線七条駅から徒歩約6分 【車】名神高速道路西宮線「京都南」出入口より約13分

駐車場:なし

営業時間:チェックイン15時以降、チェックアウト12時まで

定休日:なし

料金:ジャパニーズスイート大人2名1室14万8114円~、スーペリアキング大人2名1室 9万3400円~、丸福樓スイート大人2名1室13万7700円~ ※いずれも税・サービス料込。その他の部屋・プランの詳細は公式ホームページ参照

天ぷら まるふく

営業時間:17時30分〜23時 ※2回転制 (17時30分〜、20時〜)

定休日:なし

料金:おまかせ天ぷら会席2万円 (サービス料13%別途)

取材・文=レックス 二宮大輔

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※20歳未満の者の飲酒は法律で禁じられています。

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