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ティモシー・シャラメがマーケティング担当に無茶ぶり?『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』の斬新なプロモーションがSNSで話題沸騰

  • 2025.12.15

A24の最新作『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』(2026年3月13日公開)のプロモーションで、主演のティモシー・シャラメが参加するリモート会議のパロディ動画を公開し大きな話題を呼んでいる。A24とシャラメによる斬新な宣伝手法は、映画のキャンペーンという枠組みを超え、SNS上で急速に拡散している。

【写真を見る】ティモシー・シャラメによる奇想天外な宣伝アイデアが、次々に現実に!?

【写真を見る】ティモシー・シャラメによる奇想天外な宣伝アイデアが、次々に現実に!? [c] 2025 ITTF Rights LLC. All Rights Reserved.
【写真を見る】ティモシー・シャラメによる奇想天外な宣伝アイデアが、次々に現実に!? [c] 2025 ITTF Rights LLC. All Rights Reserved.

『マーティ・シュプリーム』は、『アンカット・ダイヤモンド』(19)のジョシュ・サフディ監督による初の単独監督作品。1950年代のニューヨークを舞台に、伝説的な卓球選手をモデルにした架空の人物、マーティ・マウザー(シャラメ)の物語を描く。靴のセールスマンでありながら世界一を狙う卓球選手でもあるマウザーは、世界チャンピオンになる夢を追い求め、日本を含む世界各国で勝負に挑む。グウィネス・パルトロウ、オデッサ・アザイオン、タイラー・ザ・クリエイターらが共演し、北米ではアワードシーズン真最中の12月25日に公開される。先日、現地時間の12月8日に発表された第83回ゴールデン・グローブ賞では、見事作品賞(ミュージカル・コメディ部門)、主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)、脚本賞の計3部門でノミネート。今後の賞レースに向けて、幸先のよい滑り出しをきっている。

この動画は、シャラメが『マーティ・シュプリーム』のマーケティング担当者たちとの架空の宣伝会議に参加するという設定。黄色のタンクトップに坊主頭、胸にはネックレスといういかにもな出で立ちでログインしたシャラメは、主演映画のプロモーションに関する奇想天外なアイデアを次々と繰り出していく。シャラメは会議の主導権を握り、マーケティング哲学として「集大成」「統合」「結実化」という3つの原則を掲げる。最後の「fruitionizing(結実化)」は彼による造語だ。豪速球で投げられるボールの対応にチームメンバーは四苦八苦し、その気まずい雰囲気は誰もが経験したことのあるリモート会議の記憶を呼び起こす。動画はA24の公式YouTubeチャンネルで約92万回視聴、シャラメの個人Instagramでは約42万件の「いいね!」が押されている。

シャラメは、「朝食のチャンピオン、シリアルの箱にマーティを」「映画キャンペーンの大成功作『バービー』のようにキーカラーを設定しよう。ハードコアオレンジだ!」「アメリカの象徴・自由の女神をオレンジ色に」「オレンジの飛行船を飛ばそう」と次々と突飛なアイデアを挙げ、「ビジュアルアーティストと6か月間にわたって協議してきた」と、飛行船のスケッチを共有。ミーティング終盤には60秒の瞑想を強要し、全員が目を瞑っているか監視する。最後に「今日の会議内容の流出を防ぐために、これから全員にNDA(機密保持契約)を送るのでサインするように」と言って閉会した。

この動画が秀逸なのは、パンデミック中に多くのリモートワーカーが経験した気まずいオンライン会議の本質を巧みに捉えている点だ。ぎこちない自己紹介に始まり、マーケティング用語の多用、不意打ちに詰められる瞬間、画面共有の際にデスクトップ画像が露呈するなど、苦痛なリモート会議を思い起こさせる。ちなみにシャラメのラップトップの壁紙は、今年のSAG(全米映画俳優組合賞)において、『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』(24)で悲願の主演男優賞を受賞した際の写真という徹底ぶり。

シャラメは「マーケティングに口出しをする傲慢な主演俳優」という役柄を完璧に演じきり、不条理なユーモアと気まずいオンライン会議のバランスを見事に取っている。この動画は、「ザ・リハーサル ネイサンのやりすぎ予行演習」や「THE CURSE/ザ・カース」などで知られるカナダ出身のコメディアン、ネイサン・フィールダーの不条理コメディが着想源だと思われる。彼の出世作「Nathan for You」は、中小企業コンサルタントに扮したフィールダーが馬鹿げたマーケティング戦略を次々と提案し、それに振り回される一般人の困惑を見るもの。最も有名なエピソードの一つが「Dumb Starbucks(愚かなスターバックス)」で、スターバックスの完璧なコピー店を開店し、すべてのメニューに「Dumb(愚か)」という接頭辞を付けた。コーヒーを買いに来た客も、近隣のスターバックスの店員も困惑したが、注目を集めることには成功した。

『マーティ・シュプリーム』とフィールダーが無関係というわけでもない。「THE CURSE/ザ・カース」はA24が製作、ジョシュ・サフディ監督の弟で同じくA24の『The Smashing Machine』(25)の監督を務めたベニー・サフディがフィールダーと共同で製作に名を連ねている。

実際に、A24はシャラメが動画内で提案したアイデアのいくつかを実現させている。「Marty Supreme」と刻まれた明るいオレンジ色の飛行船が、実際にアメリカ全土を飛び回った。

また、フォトグラファーの西島篤司が撮った写真が印刷されたシリアルが、数量限定で販売を開始している。

ティモシー・シャラメが型破りな卓球選手マーティを演じ、型破りな宣伝アイデアを提案している『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』。賞レースの結果にも期待しながら、日本公開を楽しみに待とう。

文/平井伊都子

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