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柴咲コウ主演、映画『兄を持ち運べるサイズに』の見どころを紹介。兄の死によって再会した家族が、もう一度「家族」を想い直す姿に涙するハートフルムービー!

  • 2025.12.15

2025年11月28日より全国公開された『兄を持ち運べるサイズに』は、作家の村井理子さんが実際に体験した数日間をまとめたノンフィクションエッセイを映画化した作品。公開前に試写で観た本作の感想を紹介(以下、ネタバレを含みます)。

映画『兄を持ち運べるサイズに』のメイン写真 (C)2025「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会
映画『兄を持ち運べるサイズに』のメイン写真 (C)2025「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会

【ストーリー】

作家の理子(柴咲コウ)は、突如警察から、兄(オダギリジョー)の急死を知らされる。兄が住んでいた東北へと向かいながら、理子は兄との苦い思い出を振り返っていた。

警察署で7年ぶりに兄の元嫁・加奈子(満島ひかり)と娘の満里奈(青山姫乃)、一時的に児童相談所に保護されている良一(味元耀大)と再会し、兄を荼毘に付す。

そして、兄たちが住んでいたゴミ屋敷と化しているアパートを片付けていた3人が目にしたのは、壁に貼られた家族写真の数々。子ども時代の兄と理子が写ったもの、兄・加奈子・満里奈・良一が作った家族のもの…。

兄のあと始末をしながら悪口を言いつづける理子に、同じように迷惑をかけられたはずの加奈子は「もしかしたら、理子ちゃんには、あの人の知らないところがあるのかな…」と、ポツリとこぼす。

兄の知らなかった事実に触れながら、“もう一度家族を想い直す”ことになった理子たち4人のてんてこまいな4日間が始まる。

【写真】亡くなった兄(オダギリジョー)の息子と遠くを眺める理子(柴咲コウ) (C)2025「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会
【写真】亡くなった兄(オダギリジョー)の息子と遠くを眺める理子(柴咲コウ) (C)2025「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会

柴咲コウ&満島ひかりが実話を基に描かれた家族の物語に挑戦!

原作は、作家の村井理子さんが実際に体験した数日間をまとめたノンフィクションエッセイ『兄の終い』。

監督を務めるのは、宮沢りえさんが主演を務めた『湯を沸かすほどの熱い愛』で日本アカデミー賞・報知映画賞など多くの映画賞を席捲し、二宮和也さんが主演を務めた『浅田家!』なども手がけた中野量太さん。

中野監督とタッグを組み、主人公の理子を演じるのは、映画『蛇の道』『でっちあげ〜殺人教師と呼ばれた男』や、ドラマ『スキャンダルイブ』など幅広い作品に挑み続けている柴咲コウさん。本作では、マイペースで自分勝手な兄に幼いころから振り回されてきた主人公を好演している。

子どものころの理子は、自分よりも兄のほうに母親が愛情を注いでいると思い込み、“お兄ちゃんがいなくなりますように”と心の中で思っていた。そして大人になり、母が亡くなったあとに妹に対してお金の無心をしてくる兄を心底軽蔑するようになる。

そんな兄が亡くなったと警察から理子に連絡が入るところから映画が始まるのだが、涙の一粒もこぼさないどころか悲しむ様子も見せない。そんなクールな理子の姿から、“この物語は一体どこに向かっていくのか全く予想がつかないな”と思ったのが鑑賞し始めた時の正直な感想。

ところが、物語が進むうちに、大人になった理子が兄に対してどんな思いを抱えていたのかが少しずつ明かされていくため、時には理子に共感し、時には冷静に見つめながらどんどん引き込まれていった。

マイペースで自分勝手な兄に幼いころから振り回されてきた主人公・理子(柴咲コウ) (C)2025「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会
マイペースで自分勝手な兄に幼いころから振り回されてきた主人公・理子(柴咲コウ) (C)2025「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会

家族を振り回す原因となる、映画史上稀にみるダメな兄ちゃんを演じるのは、映画『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』で脚本・監督・編集・出演を務めるなど、類稀な才能を持つオダギリジョーさん。

マイペースで自分勝手な理子の兄(劇中で名前は明かされていない)は、“一緒にいたら大変そうだけど、もしかしたら楽しいかも!?”と思わせてくれるような不思議な魅力に溢れていた。そう思ったのは筆者がオダギリジョーという俳優を好きなことが大きく影響しているかもしれないが、物語が進むうちに“ちょっと変わっているけれど根は優しい兄”のことを愛さずにはいられなくなるのだ。こういう役を演じさせたらオダギリさんの右に出る者はいない。

(C)2025「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会
(C)2025「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会

そんな兄と、一時は夫婦でありながらも、ある理由で離婚した元嫁・加奈子を演じるのは、主演を務めた『ラストマイル』で第48回日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞した満島ひかりさん。

ずっと一緒に暮らしてきた娘と一緒に、別れた夫の元に行ってしまっていた息子と6年ぶりに会う母親という難役を見事に演じていた。もしも加奈子を別の俳優が演じていたら、もっと重たくシリアスになっていたのかも?と思う場面がたくさんあり、満島さんが作り上げた“明るくてサバサバした加奈子”のおかげでより楽しく鑑賞できたように思う。

(C)2025「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会
(C)2025「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会

さらに、兄と加奈子の娘で、両親の離婚後は母と暮らす満里奈を、ドラマ『介護スナックベルサイユ』に出演したnicola専属モデルの青山姫乃さん、もう1人の子どもで、最後まで兄と暮らした息子・良一は、『ふつうの子ども』の味元耀大くんが演じている。

6年も離れて暮らしていた弟に優しく寄り添う満里奈の姿に癒やされ、感情をあまり表に出さない良一が、ふとした時に亡き父親への愛情を見せる場面には自然と涙が出てしまった。青山さんと味元くんの繊細なお芝居も本作の大きな見どころと言える。

“自分の家族とちゃんと向き合ってみよう”と思わせてくれる作品

筆者には7歳下の妹がいるが、年が離れているせいかほとんど喧嘩をした記憶がなく、頻繁に会うわけではないが仲良し姉妹だとは思う。だからこそ、本作で描かれる兄と理子の関係性に興味を持ったのだが、冒頭の理子への兄のお金の無心メールを見てびっくり。“こんなのありえないでしょ…”と、ドン引きしてしまった(笑)。

劇中には理子の記憶の中の兄と、理子が頭の中で作り出した兄の両方が登場するのだが、想像上の兄はユーモアがあって奇妙で(バスローブ姿で駅を走ったりする)なぜだかとってもチャーミング。気づけば“もっと想像上のお兄さん出てこないかな”と、登場シーンを待つぐらい好きになっていた。これは先ほども書いたとおり、オダギリさんが兄を演じていたことが大きい。

(C)2025「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会
(C)2025「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会

理子のモノローグに出てくる「一度だけ、母に言われた言葉がある。あなたは冷たい子だけど、お兄ちゃんは優しいから」という言葉は後半になってようやく理解できる。物語が進んでいく中で明かされる兄の優しさも本作の見どころのひとつと言える。

原作者の村井さんの「二人きりの夜が寂しくて、よく泣いていた私を、おどけて笑わせようと必死だったね。悪いところもたくさんあったけれど、やさしいところはそれ以上にある人でした」という亡きお兄様へのコメントにもグッときてしまう。

鑑賞後は兄と理子たち4人が愛おしくてたまらなくなり、温かい毛布に包まれたような感覚に。また、“ちゃんと妹に優しくできているかな?”“妹は私のことをどう思っているんだろう?”と考えたり、“娘として、もっと母にしてあげられることがあるのではないか”“ちゃんと家族と向き合えているだろうか”とあらためて気づかされたり、とにかく鑑賞してよかったと心から思った。

今の寒い季節にぴったりの心温まる本作を、ぜひ劇場で鑑賞してもらいたい。

(C)2025「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会
(C)2025「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会

文=奥村百恵

(C)2025「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会

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