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腸腰筋を鍛えると体はどう変わる?役割・効果・鍛え方を専門家がわかりやすく解説

  • 2025.12.15

座ったままの姿勢が続くと腰が重だるい、階段を上がるときに脚が上がりにくい…。そんな不調の背景に関わっているのが、体の深部にある「腸腰筋」です。

腸腰筋は、姿勢の維持や歩行、下腹まわりの安定に欠かせないインナーマッスル。腸腰筋の役割や鍛えるメリット、効果的なトレーニング・ストレッチを専門家がわかりやすく解説します。

監修は、人体構造に詳しいパーソナルトレーナー・三原 大和さんです。

腸腰筋とは?

腸腰筋は、腰から太ももの付け根にかけて伸びるインナーマッスルで、上半身と下半身をつなぐ「体の要(かなめ)」となる筋肉です。

腸腰筋(ちょうようきん)は、大腰筋・小腰筋・腸骨筋の総称で、背骨や骨盤から太ももの骨(大腿骨)に向かって付着しているインナーマッスルです。股関節を曲げて脚を引き上げる働きに加えて、骨盤や背骨を支え、姿勢や体幹の安定に深く関わっています。

腸腰筋がうまく使えないと、歩幅が狭くなったり、つまずきやすくなったり、腰への負担が増えやすい状態になります。逆に、腸腰筋を適切に鍛えることで、腰痛予防や姿勢改善、下腹まわりの引き締めといったメリットが期待できます。

腸腰筋の基本的な役割

腸腰筋は、脚を引き上げる動きから姿勢の安定まで、日常動作の土台を支える重要なインナーマッスルです。

脚を引き上げる動作をつくる

腸腰筋は、股関節を曲げて脚を持ち上げるときに最も働く筋肉です。歩く・走る・階段を上るといった動きのたびに使われており、脚の運びをスムーズにするうえで欠かせません。腸腰筋が弱いと歩幅が狭くなり、つまずきやすさや足の重さを感じる原因になります。

骨盤と背骨を支えて姿勢を保つ

腸腰筋は背骨(腰椎)と大腿骨をつなぐ位置にあるため、骨盤や腰の安定に深く関わります。ここがうまく働くと、立っている姿勢や座っている姿勢が保ちやすくなり、腰が反ったり丸まったりしにくくなります。逆に腸腰筋が衰えると、反り腰・猫背・腰の張りにつながりやすくなります。

上半身と下半身をつなぐ「体幹の軸」になる

腸腰筋は、体の深部で上半身と下半身をつなぐ数少ない筋肉です。体幹の安定性を高め、ブレの少ない動きをつくる役割を持っています。腸腰筋が働くことで、スポーツ時の踏ん張りや方向転換、立ち座りなどの日常動作もスムーズになります。

腸腰筋を構成する筋肉

腸腰筋は、大腰筋・腸骨筋・小腰筋からなる深層部にあるインナーマッスルです。3つの筋肉が連動することで腸腰筋として機能します。

大腰筋(だいようきん)

背骨(腰椎)と太ももの骨(大腿骨)をつなぐ筋肉で、腸腰筋の中心となる存在です。脚を引き上げる動作で最も働き、歩行・階段の上り下り・走行といった日常動作の土台になります。体幹を安定させる働きもあり、姿勢の維持にも深く関わります。

腸骨筋(ちょうこつきん)

骨盤の内側から大腿骨につく筋肉で、大腰筋と協力して股関節の曲げ伸ばしを支えています。深層にあるインナーマッスルで、脚を軽く持ち上げる動作や、歩くときの脚の運びをスムーズにする役割を持ちます。

小腰筋(しょうようきん)

腰椎から骨盤に付着する比較的小さな筋肉で、大腰筋の動きを補助します。個人差が大きく、もともと小腰筋が存在しない人もいます。機能面では大腰筋のサポート的な役割が中心です。

次:腸腰筋が弱いと起こるデメリット

腸腰筋を鍛える筋トレ2分間。スマホ首改善と腰痛予防に効果的

腸腰筋が弱いと起こるデメリット

腸腰筋がうまく働かないと、姿勢や歩き方、腰まわりの安定性など、日常の動作にさまざまな影響が出やすくなります。

腰痛や腰の張りを感じやすくなる

腸腰筋は腰椎を支える深層の筋肉のため、弱くなると腰まわりの負担が増え、立ち姿勢や歩行で腰が張りやすくなります。特に長時間の座り姿勢では、腰の重だるさにつながることがあります。

姿勢が崩れやすくなる(猫背・反り腰)

腸腰筋は骨盤の角度をコントロールしているため、弱くなると骨盤が前後に傾きやすくなります。その結果、猫背や反り腰といった姿勢の崩れにつながり、全身のバランスが取りづらくなります。

歩幅が狭くなり、脚が上がりにくくなる

脚を持ち上げる動きに関わる腸腰筋が弱いと、歩行で足が前に出にくくなり、歩幅が狭くなりがちです。つまずきやすさにも影響し、階段の上り下りで脚が重く感じる原因にもなります。

下腹がぽっこりしやすくなる

腸腰筋が弱くなると骨盤が後傾し、下腹部の筋肉が使いにくくなります。その結果、下腹が前へ突き出たような姿勢になりやすく、ぽっこりお腹の原因につながります。

腸腰筋が硬い・弱いと、どんな影響が出るのか

腸腰筋は深層にあるインナーマッスルのため触って硬さを確認することはできませんが、姿勢や生活習慣によって「硬い(短縮)」状態や「弱い(機能低下)」状態になることがあります。

どちらも不調の原因となるため、違いを理解しておくことが大切です。

腸腰筋が「硬い」場合

腸腰筋が縮んだまま固まると、股関節が伸びにくくなり、姿勢や歩き方に影響が出やすくなります。長時間の座り姿勢や反り腰が原因になることもあります。

■起こりやすい症状

・股関節が伸びにくい
・腰が反りやすく疲れやすい
・歩くと脚のつけ根がつまるように感じる
・背中が張りやすい

硬さが原因の場合は、まずストレッチで腸腰筋を十分にゆるめることが大切です。

腸腰筋が「弱い」場合

腸腰筋が弱くなると脚を持ち上げる力が低下し、歩幅が狭くなったり、立ち姿勢で安定しにくくなります。下腹がぽっこりしやすいのも特徴です。

■起こりやすい症状

・歩幅が狭い、つまずきやすい
・階段で脚が重く感じる
・立つ・座る動作が安定しない
・下腹が突き出て見えやすい

弱さを改善するには、まず軽いもも上げや腸腰筋を意識しやすいトレーニングから始めることがおすすめです。

硬い・弱いを同時に抱えている人も多い

腸腰筋は深層筋であるため、使わないまま縮んで硬くなり、その結果さらに弱くなるという「二重の状態」が起こりやすい筋肉です。

硬さ→ストレッチ、弱さ→トレーニングという順番でアプローチすると改善しやすくなります。

次:腸腰筋が使えているかを判断するセルフチェック

【足が速くなる方法】速く走るための筋肉「腸腰筋(深腹筋)」の鍛え方

腸腰筋が使えているかを判断するセルフチェック

腸腰筋が働いているかどうかは、簡単な動作で確認できます。今の状態を知りましょう。

1. 片脚で立ったときにグラつかないか

片脚立ちになったとき、骨盤が左右に揺れたり、すぐにバランスを崩す場合は、腸腰筋がうまく働いていない可能性があります。脚を持ち上げる「軸」が弱いサインです。

2. 膝を胸に引き寄せたとき、スムーズに上がるか

太ももを胸に近づける動作は腸腰筋が強く使われます。脚が重く感じたり、90度以上上がりにくい場合は、腸腰筋の弱さが疑われます。

3. 歩くときに歩幅が狭くないか

自然な歩幅が出ない、いつも足が前に出づらい、階段を上がるときに脚が重いと感じる場合は、腸腰筋が十分に働いていない状態です。

4. 下腹を引き込む姿勢が保てるか

立位や座位で軽く下腹を引き込んだ姿勢(骨盤がニュートラル)を取ったとき、すぐに腰が反ったり丸まったりする場合は、腸腰筋が姿勢の支えとして働きにくくなっています。

腸腰筋を正しく使うには「体幹の安定」がカギ

腸腰筋は深層にあるインナーマッスルのため、脚の動きだけで鍛えようとしても十分に働きません。腹横筋や多裂筋などの体幹深層筋と協力しながら動くことで、脚を持ち上げる力や姿勢の安定が発揮されます。

そのため、腸腰筋トレーニングでは「体幹を安定させたフォーム」が何より重要です。

骨盤をまっすぐに保つ

骨盤が前後に傾いたままだと腸腰筋が働きにくくなります。軽く下腹を引き込み、腰を反らせすぎない「ニュートラル」の姿勢をつくりましょう。

腹圧を保ちながら動く

腸腰筋は腹圧が抜けると力が入りにくくなります。呼吸を止めずに腹部に軽く力を入れ、体の中心を安定させたまま脚を動かすことがポイントです。

脚だけで上げようとしない

太もも前(大腿四頭筋)だけで脚を上げようとすると腸腰筋が働きません。脚を上げる前に「股関節の付け根を折りたたむ」イメージを持つと、腸腰筋に意識が入りやすくなります。

次:腸腰筋を効果的に鍛えるトレーニング6選

【筋肉部位】筋肉の名前一覧と働き|完全保存版

腸腰筋を効果的に鍛えるトレーニング6選

腸腰筋は深層にある筋肉のため、姿勢を整えながら段階的に鍛えることが大切です。ここでは初心者〜上級者まで、レベル別に取り組める6つの腸腰筋トレーニングを紹介します。

紹介している2種目のうち、どちらか1つを選んで行えば十分です。余裕がある日は2つ続けて行ってもOKです。

初心者向け(レベル1)

まずは、腸腰筋を「使う感覚」を身につける段階です。小さな動きでも股関節の付け根に意識が入るようにして取り組みましょう。

■椅子を使ったニーアップ

椅子に座った姿勢で脚を引き上げる、腸腰筋の基本的なトレーニングです。脚を高く上げる必要はなく、股関節の付け根が動く感覚をつかむことがポイントです。

<やり方>

1. 背筋を伸ばし、椅子に浅く座る

2. 片脚の太ももをゆっくり持ち上げる

3. 股関節の付け根(脚のつけ根)が縮む感覚を意識する

4. ゆっくり下ろし、左右交互に繰り返す

目安:左右20回×2〜3セット

<ポイント>

・脚を上げる角度は小さくてOK
・反り腰にならないよう、お腹に軽く力を入れる

■ニーアップ静止(3秒キープ)

腸腰筋が脚を「支える」働きを感じやすいトレーニングです。動きが小さく、初心者でも取り組みやすいのが特徴です。

<やり方>

1. 壁や椅子につかまり、片脚を持ち上げる

2. 太ももが床と平行になる位置で3秒キープ

3. ゆっくり下ろし、左右交互に行う

目安:左右10回×2セット

<ポイント>

・軸足の骨盤がグラつかないよう意識する
・股関節の前側が使われている感覚を大切にする

中級者向け(レベル2)

体幹を安定させながら、脚を引き上げる動作をコントロールしていく段階です。フォームを丁寧に行うほど腸腰筋に負荷が入りやすくなります。

■サイドプランク・ニードライブ

横向きで体を支えながら、脚を引き寄せる動作で腸腰筋にしっかり刺激を与えるトレーニングです。体幹の深層筋も同時に働くため、姿勢の安定にもつながります。

<やり方>

1. 横向きになり、肘と下側の脚で体を支えて腰を持ち上げる

2. 上側の脚を膝から曲げ、胸の方向へ引き寄せる

3. ゆっくりと元の位置へ戻す

目安:左右10〜15回×2セット

<ポイント>

・骨盤が前後に倒れないようにする
・脚は大きく上げすぎなくてOK。股関節の付け根を意識

\タップして動画を再生/

■ニートゥチェスト

腸腰筋と下腹部を同時に鍛える中級向けの定番メニューです。脚を胸に引き寄せる動作が腸腰筋に強い刺激を与えます。

<やり方>

1. 両脚を伸ばして座り、両手は体の後ろにつく

2. 膝を胸に向かって引き寄せる

3. 脚を伸ばすが、床に触れないようにする

目安:10〜12回×2〜3セット

<ポイント>

・背中が丸まりすぎないよう注意
・脚を伸ばす時に腰が反らないよう腹圧を保つ

\動画で動きをチェック/

上級者向け(レベル3)

全身の安定性を保ちながら、腸腰筋にしっかり刺激を入れる段階です。動きの大きさより、股関節から脚を引き上げる意識が重要です。

■バイシクルクランチ

脚を交互に引き上げる動作で腸腰筋に刺激が入り、体幹全体も同時に鍛えられます。

<やり方>

1. 床に座り、膝を曲げて地面から足を浮かせる

2.反対同士の肘と膝を交互に連続して引きつける

目安:左右各10〜15回×2〜3セット

<ポイント>

・脚を大きく引きすぎなくてOK
・腰が反らないよう腹圧をキープ

\タップして動画を再生/

■フロントランジスクワット

股関節を大きく動かすことで腸腰筋に伸びと刺激が入ります。姿勢維持も求められるため、体幹の強さが必要です。

<やり方>

1. 足を揃えて立ち、片脚を大きく前に踏み出す

2. 膝を曲げながら股関節をしっかり沈める

3. 前膝を90度まで曲げたら、ゆっくりと元の姿勢に戻る

4. 反対側も同様に行います。前膝は、つま先よりも大きく前に出さないようにしましょう。

目安:左右10回×2セット

<ポイント>

・上半身が前に倒れすぎないよう注意
・踏み出す脚はつま先と膝の向きをそろえる

\タップして動画を再生/

内転筋を鍛えると体はどう変わる?役割・効果・鍛え方を専門家がわかりやすく解説

腸腰筋のストレッチ(ほぐし方)

腸腰筋をほぐすには、ストレッチで縮んだ筋肉を伸ばすことが効果的です。深層筋のため直接は触れませんが、周囲の筋をゆるめることでコリや痛みが軽減します。

太もも抱き寄せストレッチ

仰向けで行う、腸腰筋を無理なく伸ばせるストレッチです。腰への負担が少ないため、運動に慣れていない人にもおすすめです。

<やり方>

1. 仰向けになり、片膝を胸に引き寄せる

2. 反対側の脚は伸ばしたままキープ

3. 深く呼吸しながら20〜30秒キープ

4. 反対側も同様に行う

<ポイント>

・腰が反らない範囲で行う
・股関節の付け根が伸びる感覚を意識する

ひざ立ち腸腰筋ストレッチ

腸腰筋と前ももをしっかり伸ばせる代表的なストレッチ。姿勢を崩さずに行うと深部まで伸びます。

<やり方>

1. ひざ立ちになり、片脚を前に大きく踏み出す

2. 前脚に体重を移し、後ろ脚の股関節まわりを伸ばす。

3. 背筋を伸ばしたまま10〜20秒キープ。

4. 脚を入れ替えて同様に行う。

<ポイント>

・腰を反らせず、骨盤を前に押し出すイメージ
・伸ばしている側の太もも前〜下腹が伸びていればOK

ストレッチの注意

・痛みが出るほど無理に伸ばさない
・呼吸を止めず、ゆっくり行う
・日常的に取り入れると硬さが戻りにくい

Q&A|腸腰筋に関するよくある疑問

腸腰筋について寄せられる質問を、わかりやすくまとめました。

Q. 腸腰筋が痛むとどんな症状が出ますか?

腸腰筋は深層筋のため、腰の奥がズキッと痛む、股関節の前側が詰まる、立ち上がりで腰に力が入りにくい、といった「奥の痛み」として現れやすいのが特徴です。

Q. 腸腰筋はほぐすだけで改善できますか?

軽い張りや硬さならストレッチやリリースだけでも改善しますが、弱さがある場合はトレーニングとの併用が必要です。ほぐす=硬さの改善、鍛える=弱さの改善と考えると効果的です。

Q. 腸腰筋は触って確認できますか?

できません。腸腰筋は腹筋群よりさらに奥にある深層筋のため外から触れません。動きや姿勢の変化で働きを確認するのが一般的です。

腸腰筋(深腹筋)の筋トレ&ストレッチ。鍛え方のコツとトレーニングメニュー

監修者プロフィール

パーソナルトレーナー 三原 大和(みはら やまと)

専門学校にてパーソナルトレーニングと人体の構造について体系的に学び、JATI-ATI(日本トレーニング指導者協会 認定トレーナー)や健康運動指導者など複数の資格を取得。卒業後は女性専用パーソナルジムにてトレーナーとしてのキャリアをスタートし、丁寧で寄り添う指導に定評がある。

また、10年以上にわたり自身が競技者として取り組んできたバドミントンの経験を活かし、スポーツパフォーマンス向上やジュニア指導にも精通。現在は大阪・高槻にある「パーソナルジムBREEZE」のトレーナーとして、ダイエットから機能改善、競技力向上まで、幅広いニーズに対応した指導を行っている。

保有資格:
JATI-ATI(日本トレーニング指導者協会認定)
健康運動指導者(健康・体力づくり事業財団)

トレーニング動画指導・監修 鳥光 健仁(とりみつ たけのり)

フィットネスランニングトレーナー。1991年生まれ、千葉県出身。出張パーソナルトレーナー、SUUNTO5 アンバサダー、VX4アドバイザリー、(株)BOOSTマネジメント契約、HOKA ONE ONE サポート。

出演者プロフィール MIHO(みほ)

市民アスリート。トライアスロン、トレイルランニング、マラソン、スパルタンレース、筋トレが大好き。フルマラソン自己ベストは3時間0分18秒。1児の母。
■ Instagramアカウント → @mip0000

<Edit:編集部>

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