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「お客さんのことを信じている」映画『無名の人生』トークイベントに鈴木竜也監督が登壇!独自のアニメーション作品制作の裏側を語る

  • 2025.12.13

愛知県名古屋市にて開催中の「第1回あいち・なごやインターナショナル・アニメーション・フィルム・フェスティバル」。映画『無名の人生』(25)のトークイベントが12月13日にミッドランドスクエア シネマにて行われ、鈴木竜也監督が登壇した。

【写真を見る】社会問題を背景に描かれた映画『無名の人生』の制作を振り返った鈴木監督

『無名の人生』は、国内の自主映画祭で数々の賞を獲得した短編アニメ「MAHOROBA」を手掛けた鈴木竜也監督が、1年半をかけて個人制作した長編アニメーション監督デビュー作。『音楽』(19)や『ひゃくえむ。』(25)の岩井澤健治監督がプロデュースを担当したことでも注目を集めた。生まれてから死ぬまでに、源氏名や蔑称など様々な呼称で呼ばれながらも、誰からも本当の名前を呼ばれることのなかった男の波乱万丈な100年の生涯を、高齢ドライバーや芸能界の闇、戦争といった社会問題を背景に、主人公が呼ばれてきた「別名」を冠した10章で描く。

脚本を用意せずに10章構成ということだけを決め、ワンカットずつアドリブで制作されていったという本作。「飽き性なので、最初に脚本を全部書いてそれをなぞっていく作業が向いてないんです。なので、どうなるかわからないけどやってみよう、という気持ちで作っていきました」と鈴木監督は話す。

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主人公の親友である“キンちゃん”は、「男性アイドル好きの男性を描きたい」という監督の想いから生まれたキャラクターとのこと。監督自身も男性アイドルのファンであり、そのなかで感じてきた疎外感を分かち合える人に届け、という思い込め、男性アイドル好きの設定を“キンちゃん”が背負うこととなった。また、アイドル業界が抱える闇を、実際の事件をモデルに描いたことで観客の心を惹きつけた。「僕自身も男性アイドルファンとして悔しい想いをしてきた部分があるけど、映画のなかではやりたい放題。二次被害にはつながらないようなるべく直接的な描写を排しながら、どう映画のなかで復讐できるかみたいなことを考えながら作りました」と振り返った。

トークイベントには、初めて本作を観た人から今回で3回目だという人まで、幅広い層の観客たちが集まった。質問コーナーでは本作を観終えた直後の観客から積極的に手が挙がり、それぞれの質問に丁寧に回答した鈴木監督。作品に込めたメッセージについて聞かれると、「あんまりないって言うとがっかりされると思うので、いま考えるんですけど…」という前置きで会場をなごませたのち、「RHYMESTERの宇多丸さんにラジオで取り上げていただいたことがあって、その時に宇多丸さんが『観察してる映画だ』と仰っていて。それが腑に落ちて、たしかにそういう気持ちで作ってたなと思いました。『僕はこの世の中、こんな感じで見えてるんですけど、皆さんどうですかね?』くらいの気持ちで作ってた気がします」とコメントした。

海外からの反響については、ラストの解釈が別れるのはどこの国も同じで、最終章について質問されることが多かったという。「海外の方のほうが芸術的なものに開いているという謎の偏見があったんですけど、あまり変わらないんだなと思って逆にうれしかったです。僕はお客さんのことを信じているので、ある程度余白があってもいいと思って作りました」と、クリエイターとしての信念を明かす場面も。

制作中は「楽しくてゲームをやっている感覚だった」と話す
制作中は「楽しくてゲームをやっている感覚だった」と話す

次回作の予定について質問されると、ユーモアを交えながら今後の展望について語った鈴木監督。「実写映画も撮りたいですし、アニメだと原作ものに挑戦してみたいです。あとはヒップホップが好きなので、ラッパーさんのミュージックビデオでアニメを描いたりとか、そういったものを短編映画みたいな感じで溜めていきたいなって思ってます。でも、100年分の人生を描いちゃったので、頭のなかは空っぽです(笑)」と話し、イベントを締めくくった。

第1回あいち・なごやインターナショナル・アニメーション・フィルム・フェスティバルは、12月17日(水)まで開催中。期間中はミッドランドスクエア シネマや109シネマズ名古屋をはじめ、名古屋市内の上映施設を中心とした会場で多くのアニメーション作品が上映されるほか、多彩なゲストを迎えてのトークショーも開催される。

取材・文/編集部

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