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“喜劇王”の孫が演じた新たな脅威・ヴァランは、“ヴィラン”ではない?『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』のキーマンをひも解く

  • 2025.12.13

ジェームズ・キャメロンが監督する「アバター」シリーズの第3弾『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』が12月19日(金)より日米同時公開される。本作でパンドラを憎むヴァランを演じるのが“喜劇王”の異名で知られるチャールズ・チャップリンを祖父に持つウーナ・チャップリンだ。プロデューサーのレイ・サンキーニは「私がヴァランのことを“ヴィラン”と言ってしまった時、彼女に『それは違う』と熱く怒られました(笑)」と明かした。

【写真を見る】面影あり?チャールズ・チャップリンの孫、ウーナ・チャップリンの素顔

ウーナ・チャップリンは、ヴァラン役について肉体面、感情面の両面から徹底的にアプローチ [c]2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.
ウーナ・チャップリンは、ヴァラン役について肉体面、感情面の両面から徹底的にアプローチ [c]2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

全世界歴代興行収入ランキングで第1位、人類が生みだした全映画の頂点に立つ『アバター』(09)。そしてキャメロン監督のもう1つの代表作である『タイタニック』(97)を超え、同ランキングで第3位にランクインする偉業を成し遂げた『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(22)。これらの規格外の作品を世に贈りだし、さらに映像技術の進化を追求し続ける巨匠キャメロンが放つ、「アバター」シリーズの最新作が『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』だ。

“アバター”として潜入した元海兵隊員のジェイク・サリー(サム・ワーシントン)はナヴィのネイティリ(ゾーイ・サルダナ)と恋に落ち、家族を築き人類と戦う決意をする。『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』では海へと戦いの場を移し、愛する者のために人類と対峙。退けることに成功するが、家族の命を奪われるという大きな犠牲を伴った。『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』では同じナヴィでありながらパンドラを憎むアッシュ族のヴァランが人類と手を組み襲来し、かつてない“炎の決戦”が始まる。

ジェイクの因縁の敵であるクオリッチも再登場! [c]2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.
ジェイクの因縁の敵であるクオリッチも再登場! [c]2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

物語上のヴァランは主人公と敵対する、いわば“ヴィラン”的な立ち位置。キャメロン監督は「ヴァランはシャーマンとしての闇の道を歩んでいる。彼女は魔術の暗黒面を自ら探し求め、鍛錬を重ねた」とその恐ろしさを解説。

しかし演じた当の本人、ウーナはこのキャラクターの本質に徹底的に迫り「悪役を悪と思わずに」演じたそう。サンキーニはウーナについて、「彼女のキャラクターへのアプローチは興味深いです。彼女は私に、『私の部族は飢えていた。無力感を感じていた。私が彼らに力を与えた。食を与え、目的を与え、崇拝すべき新たな女神(ヴァラン)を与えた』と言いました。つまり、彼女の立場からすれば、彼女はヴィランではなく部族の優れた指導者なのです。例えば歴史的に征服者として酷い仕打ちをした人物でも、その人物についた人々にとってその人は偉大になり得る。ウーナは自分やこの物語における自分の役割を、まったく異なる視点から捉えているんです」と説明する。

徹底的に役にのめりこんだウーナは、肉体面、感情面共に徹底的にのめりこむアプローチについて打ち明けた。「肉体面での準備もたっぷりしました。マーシャルアーツ、アーチェリー、ダンス、ムーブメントなどを教えていただきました。感情面においては、私自身、大自然が好きで、人生そのものが好きです。どうすればよりよい人生を生きられるのか、そんなことをよく考えます。トラウマや苦しみは、ときに人生を楽しむことを妨げ、人生そのものを破壊しようともします。私は、すべてを失うということはどのようなことか、想像しました。そこから生まれた嫌悪の気持ちがなににつながるのかということを。その後は、この迫力あるキャラクターを演じるためのエネルギーを保とうとしました。準備は大変でしたが、楽しかったです」と明かす。

パフォーマンス・キャプチャーを使っての演技についても、「最高でした。これほどまでに自由を感じたことはありませんでした。私たちはスタジオにいますが、そこに木がある、山がある、妖精がいるなど、想像するのです。それは大きな自由、その瞬間の真実を与えてくれます。子どものころ、友達と遊んだ時のような感じでした。舞台劇のような感じでもあります。とても楽しい体験でした」と語っている。

互いに惹かれ合うロアク(ブリテン・ダルトン)とツィレア(ベイリー・バス) [c]2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.
互いに惹かれ合うロアク(ブリテン・ダルトン)とツィレア(ベイリー・バス) [c]2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

ウーナの演技を実際に目にしたツィレア役のベイリー・バスは、「(クオリッチ役の)スティーヴン・ラングとウーナ・チャップリンは、とてもおもしろいことを言っていました。彼らは、自分のキャラクターを悪役だと思わずに演じているとのことです。悪役だと思いつつ演じることはできない、と。それにジム(キャメロン監督)は、とりわけ『アバター』において、非常に興味深い悪役を書きます。この映画でのウーナの演技は、本当にすばらしいです。悪役ではあるのですが、すごくニュアンスがあって、私は見ていて言葉も出ませんでした。思わず泣いてしまいました」と敬意を示した。

【写真を見る】面影あり?チャールズ・チャップリンの孫、ウーナ・チャップリンの素顔 [c]2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.
【写真を見る】面影あり?チャールズ・チャップリンの孫、ウーナ・チャップリンの素顔 [c]2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

映画館での最高の映像体験を常に追求し実現しながら、普遍的テーマの先にある人々を魅了するオリジナリティあふれる物語を描き、全世界に届け続けるキャメロン監督が、ウーナら役者と共に創り上げた本作。キャメロン監督は「何人かの限られた人たちに映画を観てもらったのですが、感想としては、間違いなく3作のなかで最も感情的で、おそらく最高の出来だと言われています。心を打たれる作品になっていると思います」と強い自信を見せる。そんな最新作『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』に、世界中が注目している。

文/山崎伸子

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