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【SFL2025完全解剖】eスポーツの重鎮・岡安学が読み解く「波乱の本節」と「プレイオフの勝算」

  • 2025.12.12
【SFL2025】プレイオフ進出6チーム決定!
【SFL2025】プレイオフ進出6チーム決定!

ウォーカープラスでは、各界の識者や専門家が独自の視点でトレンドを解説する新企画「エキスパート記事」をスタートする。その記念すべき第1弾のテーマは、国内最高峰のeスポーツリーグ「ストリートファイターリーグ: Pro-JP 2025(SFL)」だ。

2025年11月、約3カ月にわたる激闘の末に本節が終了した。絶対的エースの不在に苦しんだZETA、ルーキーたちの躍動、そして「エド」と「舞」が席巻したキャラクター事情――。今年のSFLは、例年以上にドラマと戦略が交錯するシーズンとなった。

本稿では、eスポーツ黎明期から業界を見つめ続けるジャーナリスト・岡安学さんが、本節の全容とプレイオフの展望を寄稿。なぜ今年のSFLはこれほどまでに予測困難だったのか?そして、頂点に立つのはどのチームか?プロの視点が光る、SFL2025の「完全解剖」をお届けする。

eスポーツジャーナリスト・岡安学さんがプレイオフの展望を予想

2025年8月29日から約3カ月間をかけて開催してきたストリートファイターリーグ:Pro-JP(SFL)も、2025年11月21日にDivision S、11月25日にDivision Fの最終戦が行われ、2025シーズンの本節がすべて終了した。結果は以下の通り。

Division S

1位 Good 8 Squad(G8S) 300ポイント

2位 名古屋NTPOJA(NTPOJA) 260ポイント

3位 Crazy Raccoon(CR) 220ポイント

―――――――――――プレイオフ進出ライン―――――――――――

4位 CAG OSAKA(CAG) 170ポイント

5位 Victrix FAV gaming(FAV) 170ポイント

6位 Saishunkan Sol 熊本(SS熊本) 170ポイント

※4~6位は同点ながら獲得バトル数により順位が確定

Division Sのプレイオフ進出チーム
Division Sのプレイオフ進出チーム

Division F

1位 REJECT(RC) 270ポイント

2位 広島 TEAM iXA(iXA) 250ポイント

3位 ZETA DIVISION Geekly(ZETA) 210ポイント

―――――――――――プレイオフ進出ライン―――――――――――

4位 DetonatioN FocusMe(DFM) 160ポイント

5位 VARREL(VR) 110ポイント

6位 FUKUSHIMA IBUSHIGIN(IBSG) 110ポイント

※5・6位は同点ながら獲得バトル数により順位が確定

【画像】Division Fのプレイオフ進出チーム
【画像】Division Fのプレイオフ進出チーム

それぞれのリージョンで上位3チームは、プレイオフに進出。2位チームと3位チームが戦い、勝利したチームが1位チームと対戦し、優勝を争う。それぞれのリージョンで優勝したチームは2026年1月に開催されるグランドファイナルに進出し、日本一を決定する。日本一となったチームはCC12と同時開催されるSFL World Championshipへの出場権が与えられる。

プレイオフとグランドファイナルの試合形式
プレイオフとグランドファイナルの試合形式

プレイオフを前に本節の振り返りと、プレイオフの展望を予想していこうと思う。

新規参入ZETAの苦戦と「延長戦ルール」がもたらした変化

SFL2025の話題の中心となったのは、忍ism Gamingから事業継承をした新規参入のZETAだった。忍ism Gamingから引き続き、ももち選手、ヤマグチ選手が参加し、IBSGの翔選手とSS熊本のひぐち選手、iXAのひかる選手という、それぞれの絶対的エースが集結しており、否が応でも注目が集まる。

ただ、翔選手が、開幕直前に行われたEsports World Cupで体調不良により途中棄権し、SFLでもほぼ参加できない状態が続いた。結局、体調が戻らず、選手活動の引退となった。今年から変更されたレギュレーションにより、延長戦が先鋒、中堅、大将に出場しなかった選手を出さなくてはならず、翔選手が欠場することにより、延長戦が必然的に敗退となる苦しい展開だった。

また、対戦相手としても、ZETAのメンバーが3人しかいないことを見越して、対策をしやすくなり、オーダーの予想もしやすくなった。その結果、最後まで苦戦を強いられた。それでも3位に入り、プレイオフ出場の権利を獲得したのは、見事と言える。両ディビジョンとも、昨年のグランドファイナル出場チームであるG8SとRCが安定した強さを見せて1位を獲得した。

延長戦で4人目のメンバーが出場するというレギュレーションは、オーダーに大きな影響をもたらした。昨年までは絶対的なエースがいれば、大将戦と延長戦の2試合に出場し、そこで勝てば20-25で勝利することができたが、エースが一度しか試合に出られず、チーム力が問われる。さらに、必ず出場するということは、誰と対戦するかを想定し、担当の相手の対策を取るようになった。そのため、相手のオーダーによってはエースを温存する結果にもなっている。昨年はLeShar選手の八面六臂の活躍によりディビジョンを制したRCだが、今年はふ~ど選手とLeShar選手の2枚看板で対応していた。

翔選手の離脱により、思わぬ苦戦を強いられたZETA
翔選手の離脱により、思わぬ苦戦を強いられたZETA

ストリーマーから格ゲープロに転身したCAGの高木選手

今シーズンの特徴としては、新人選手の活躍が目立った。昨年もiXAのひかる選手、RCのLeShar選手と新加入した選手の活躍があったが、それでも1年目は厳しいシーズンを送る選手が多く、今年はそれを覆すだけの結果となったと言えそうだ。G8Sのさはら選手はチームNo.1のポイントを稼ぎ、ディビジョンごとのランキングでも2位の好成績を残している。NTPOJAのSeiya選手やSS熊本のこばやん選手も十分な成績。iXAのあでりい選手はディビジョンごとのランキングでは堂々の1位となり、IBSGの2BASSA選手も十分な活躍ができたと言えるだろう。

また、CAGの高木選手はストリーマーから選手への転身で、ほかの選手と比べて実績がそれほどあった選手ではなかったので、かなりキツい戦いを強いられるとみられていたが、もっちー選手との初対戦初勝利で勢いを見せ、まちゃぼー選手、カワノ選手というトップランカーを倒す大金星を挙げ、チームに貢献していた。

昨年、SFLの洗礼を受けた、えいた選手、もっちー選手、りゅうきち選手は汚名を返上し、ポイントを稼いでいた。選手としては中堅の選手もいるが、SFLとしては歴の浅い選手が活躍しており、今後も新たな力が出てきそうな気配だ。

G8Sのポイント稼ぎ頭となったさはら選手
G8Sのポイント稼ぎ頭となったさはら選手
昨年のひかる選手を彷彿させる活躍をみせたiXAの新人あでりい選手
昨年のひかる選手を彷彿させる活躍をみせたiXAの新人あでりい選手

「エド」と「舞」が席巻…トップティア対策が勝敗のカギ

今シーズンは、キャラクターバランスがよく、CPTの大会ではさまざまなキャラクターが優勝しており、絶対的な強さを持つキャラクターはいないと見られてきた。しかし、トッププロが集結し、対戦相手があらかじめわかっているSFLにおいては、トーナメントと違う結果となっている。少しでも強さが求められ、現時点でトップティアと目されるエド(ED)と舞に集中し、結果としてもエドと舞がポイントランキングの上位を独占している。

個人別のポイントランキング(両Division混合)。上位は舞とエドが並ぶ
個人別のポイントランキング(両Division混合)。上位は舞とエドが並ぶ

プレイオフに進出したチームでエドを使用しているチームは、G8S、iXA、RC、ZETAの4チーム。舞を使用しているチームはZETA、NTPOJAの2チーム。CRはその2キャラを使用していない。本節通りの実力が発揮できるか、プレイオフまでにこの2キャラの攻略が進むかがプレイオフを勝ち抜くカギとなりそうだ。

プレイオフは総力戦に!「全員出場」縛りが生む新たな駆け引き

また、本節だけでなくプレイオフもレギュレーションが変更されている。プレイオフは先鋒・中堅・大将の3試合を1セットとし、1セット終わるごとにホームとアウェイが入れ替わる。延長戦はない。しかし、2巡目終了までにチームメイトすべてを出場させなくてはならないという新しいレギュレーションが加わったため、さらなる対応が必要となる。

1巡目にアウェイだと、もともと延長戦要員の選手は出せないうえ、2巡目で必ず出さなくてはならないという制約ができてしまう。そのルールをうまく使えば、ホーム側は大きなアドバンテージとなりうるわけだ。これまでプレイオフでは本節1位通過チームがグランドファイナルに進出していたが、今年はよりその可能性があるように感じる。

大本命はG8SとRC、不気味な存在のCRとZETA…各チームの勝算

大本命はG8SとRCになるが、それでも気になるのがCRとZETAだ。勝ち進んでもアウェイスタートとなる不利はあるものの、CRは唯一、エドと舞がいないチームなので、対戦するチームはエドと舞以外にも攻略にリソースを割かねばならない。さらに2週間以上期間が空くことで、Shuto選手のリュウやかずのこ選手のC.ヴァイパーなど、本節の途中から導入したキャラクターの練度を高め、本節とは全く違う強さをみせつける可能性もある。

ZETAは翔選手に代わって出場するヤマグチ選手がキーマンだ。本節では出番がなかったが、これが吉と出るか凶と出るかは始まってみないとわからない。個人戦では活躍しているヤマグチ選手がSFLでもその実力を発揮できるか、本節で一度も対戦していない相手といきなり戦わなくてはならない相手にとっても脅威であることは間違いないだろう。ヤマグチ選手としてもSFLでの戦いは経験済みで、大舞台も慣れているとはいえ、今年最初のSFLがいきなりプレイオフというのは大きな重圧を感じていると思う。

2位通過のNTPOJAとiXAにも勝機あり

2位通過のNTPOJAとiXAも十分優勝に手が届く実力を持っている。NTPOJAは第8節まで連勝を続けたKEI.B選手が光る。ただ、第9節でガチくん選手に完全攻略された印象なので、決勝戦に進出した場合はKEI.B選手がガチくん選手の対策をどれだけ取れるかがカギとなるだろう。ほかのメンバーが稼いだポイントもSeiya選手の50、もっちー選手の40、大谷選手の30となっているので、相手がアウェイのときにKEI.B選手の担当が、先鋒・中堅に登場し、ポイントを稼げない作戦に出たときに、どうやってほかの選手で補填できるかも重要だ。

ポイントランキングトップとなったKEI.B選手。ランキング上位はEDと舞と先述したが、その実、舞は弱くはないが、ここまでポイントを稼げたのはKEI.B選手のおかげと言えなくもない
ポイントランキングトップとなったKEI.B選手。ランキング上位はEDと舞と先述したが、その実、舞は弱くはないが、ここまでポイントを稼げたのはKEI.B選手のおかげと言えなくもない

iXAもあでりい選手頼りになるのが、ストロングポイントでもありウィークポイントでもある。あきら選手のキャミィとひびき選手のリリーは明らかに苦手とするキャラクターがいるので、これもプレイオフまでに対策が練られるかがポイントと言える。決勝戦に進出した際はアウェイスタートで確実に苦手キャラを被されるので、優勝には苦手キャラの克服が絶対条件だ。

なんにせよ、プレイオフまで約1週間。どんな戦いが繰り広げられるか、今から楽しみだ。ちなみに、配信は例年通り有料配信と無料配信で行われる。有料配信はDay1(Division S)が2025年12月13日(土)16時開始、Day2(Division F)が14日(日)16時開始。無料配信はDay1が2026年1月24日(土)15時開始、Day2が25日(日)15時開始となっている。

文=岡安学

ゲーム情報誌編集部を経て、フリーランスに。イベント取材をはじめ、法律問題、マーケットなど、多角的な切り口でeスポーツを取り上げる。さまざまなゲーム誌に寄稿しながら、攻略本の執筆もおこない、関わった書籍数は50冊以上。現在は、Webや雑誌、Mookなどで活動中。近著に『ゲームビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)、『みんなが知りたかった最新eスポーツの教科書』(秀和システム)などがある。

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